第54話 勇者
その日、魔王リスタルはぐっすりと寝ていた。
最近の勤務の疲れが影響をし、リスタルの体調は悪化していた。
そう、要するに風邪だ。そこまで重い物ではないが、体に負荷がかかっている。
「はぁはぁ、ぁあはぁあ」
リスタルはそんな事を口にする。
身体が熱く、そしてしんどい。お腹が痛み、さらに咳が止まらない。
なぜこんなにしんどいのかが全く分からない。
しかし、その原因は自分自身なのだろうと、思う。
ここ最近睡眠時間を切り詰めながら必死に公務に勤しんでいた。
そのせいで疲労がたまり、体の免疫機能が低下し、こんなことになっているのだ。
これなら頑張らなかったほうがよかったのだろうか。
そんな問いをしても、答えてくれる人なんてここにはいない。
今はおとなしく、周りのみんなからの看病を受け続けなければならないのだ。
その頃、勇者パーティはかなり近いところまで到達してきていた。
荒ぶる魔物を討伐していき、魔族領へと近づいている。
その勇者、レオンは次々に魔物を討伐していっていた。
ジャガーやゴブリン、ミノタウロスなど様々な魔物を。
その討伐スピードはかなりの速さだった。
そしてあっという間に魔王領を突っ切っていく。
幸運だったのは魔王リスタルが不調だったことだ。
魔王リスタルは国を守るために微量な魔力を使い、国の領土に結界を張っていた。それは、人間が入ってくるときに警告をリスタルにするというものだった。
しかし今は、リスタルはすっかりと体調を崩している。
そんなリスタルには、結界を維持する力など残されてはいなかった。
そのため、勇者の襲撃に気づかなかったのだ。
★
「何だこれは」
その時、一人の魔族が大量の魔物の死骸が転がっているこかなかったのだ。
彼は魔物を狩ることを職としている。
魔物の血肉を奪い、生きながらえているのだ。
だが、今日魔物の討伐に向かおうとした際に、魔物が一体も転がっていないことに気が付いた。
そのため森を一時離脱し街道に出たら、死骸が転がっている。
そのことに違和感を感じた彼――ギィスは国に戻ろうとする。が、
「報告なんてさせねえよ」
その背後の声に一気に襲撃をかけられる。
咄嗟に回避をし、その攻撃を間一髪でよけきる。
「へえ、今の避けるんだ。流石だわ」
そう言って目の前に敵の男は着地する。
「何者だ」
「勇者レオン」
「勇者? 何だそれは」
「お前ら悪の魔族を狩る者。それが俺たちだよ」
そして、剣に雷を宿していく。
そして、一気にそれが解き放たれていく。
雷がギィスの元へと向かってくる。
ギィスはそれをよけ、よけ、避け続ける。
「防戦一方じゃねえか、だらしねえ」
「っ」
ギィスにはもうわかっていた。自分にはかなわない相手だと。
しかし、このままただで死ぬわけにはいかない。
そしたらこの襲撃者にどうやって対抗する。
否、誰も抵抗できないまま全滅してしまうだろう。
それだけは避けなければならない題目だ。
「炎よ!!」
ギィスは叫び、火の矢を飛ばす。
その火は森を一気に焼き尽くさんと広がっていく。
「こうすれば、誰かが気づいてくれる」
「貴様ああ」
レオンは一気にギィスのくびをかりとる。そしてその首がその場にぽとんと落ちる。
その首には笑みが浮かんでいた。
それを見てレオンは
「カスが」
と言ってその首を蹴飛ばした。
★
その異変はすぐに本土に伝わった。
リスタルは窓の外を見て、すぐに気づいた。
襲撃者がいるという事に。
外から煙が噴き出している。これは、確実に何かのしらせ。
リスタルが結界を復活させると、そこには人間の姿が。
「許せない」
リスタルは叫ぶ。
だが、体が重い。
だけど、行かなければ。既にもう前方の村へとたどり着いてしまっている。
彼を倒さなければもう終わりが近いのだ。
リスタルは重い体を無理して動かし、一気に玄関口へと向かっていく。
結界で完治した感じ、もう既に前方の村が既に焼かれている。
このままでは、犠牲者はどんどんと増えていく。
「リスタル様、どこへ」
王宮を出る時に、従者がやってきた。
「敵を倒しに行くわ」
「でも体が」
「大丈夫、このままみんなを死なせてなんていられないわ」
そう、強がりを見せた。
決して、体は大丈夫じゃないし、寝たいけれど。
でも、体に鞭を打たねばならない状況なのだ。
頑張るしかない。
リスタルはそのまま飛んでいく。
レオンを倒し、国の安全を守るために、




