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大魔王の器の少女。三〇〇年後の世界で無双する  作者: 有原優


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第三十五話 乗っ取られたリスリィ


「何を言ってるんだ?」


 ディアスがリスリィに訊く。とはいえそこにはもうリスリィはいない。そこにいるのは、ハルステウラだ。

 そこにはもはやリスリィの人格など残されてはいない。


「俺はなあ、滅ぶ寸前にリスリィに取りついたのさ。今は俺がリスリィであり、ハルステウラさ。この体はいい。魔力が良く通っている。この体ならみんな蹂躙できそうだ」


 ハルステウラは手から闇の魔弾を数発繰り出す。それ全体がものすごい威力でディアスに向かってくる。


「ぐぅ」


 ディアスはその弾丸をかろうじて受けきる。が、その威力ガ凄まじく、はじけ飛ばされしまう。


「これは、あいつの魔力がさらに洗練されている」

「当たり前だろ。俺が取りついたことでこいつの魔力が覚醒したんだからよ」


 それも、闇の魔力にだ。


 元々化け物レベルに強かったリスリィに闇の魔力が加わった、これはディアスにとぅて絶望的だった。それは、ミハイムや、オルフィにも。


「闇の魔力を持っているのか?」

「ああ、そうだな。闇の力を俺が与えているからなあ」


 実際にはリスリィの中の闇の魔力を引き出しているからだが。

 それはハルステウラにも分かっていない。

 実際に彼には調子がいいとしか思ってない。

 闇の魔力がリスリィの力に謎にフィットするなくらいにしか。


★★★★★


「ざまあねえな、リスリィよ」


ハルステウラはそう叫んだ。


「まさか、私の体に取りついたってこと?」

「それ以外あるかよ」



私の周りには真っ暗な空間が広がっている。

おぞましいほどの闇だ。

更に私の手首には鎖が巻かれている。


ハルステウラに立ち向かおうにも、鎖が邪魔で思うようには動けない。


「ずるいわね。私に敵わないのなら私の体を奪っちゃおうって」

「なんとでも言えよ。それよりもいいのかよ。こうしている間にもお前の肉体がお前の仲間たちを殺していくぜ」


そう言って高笑いするハルステウラ。正直ムカつく。


でも、



「あまり私の仲間たちを馬鹿にしないでくれる」


私は信じている。私の仲間たちは、こんな奴に負けるような腑抜けた人たちではない。

私は信じている。オルフィとディアスを。

勿論ムカつくけどミハイムも。


「だから、きっとあなたの闇は払われる」

「そして、お前が解放されると? は、くだらない。くだらない友情ごっこはいらねえんだよ!!」


そう言って怒鳴るハルステウラ。


「そうだね。仲間を信じるだけではいられない。私もあなたに抵抗しなければ」


そう言って手に力を込める。すると、鎖がバキバキと音を立てて崩れていく。


「はは、そう来なくちゃなあ」


★★★★★


そして再び外。


「ちくしょう。必ず元に戻してやる」


 ディアスは勢い走り出す。魔弾をぎりぎりで避け、リスリィに斬りかかろうとする。

「いいのか? これは君の仲間の体だ。それを傷つけて」

「ああ? リスリィがこの程度の攻撃で死ぬわけがないだろうが」


 ディアスはリスリィの体に剣を斬り入れる。が、ハルステウラは直撃するぎりぎりで避けた。


「やっぱり避けるんだな」

「当たり前だろ。この体が傷つけられたくないのは俺も一緒だからなあ。それに、この体は俺にマッチしている。この体だったら下克上も狙えるね」

「お前は魔王に忠誠を使っていないのか?」

「誓ってるよ。ただ、俺が強いなら俺が上に立った方が良いってだけさ。それよりいいのか?」

「は?」


 その瞬間リスリィの剣がディアスに向かってものすごいスピードで振り下ろされる。ディアスは間一髪でそれを剣で受け止めるが、勢いで遠くに弾き飛ばされ、壁に当たる。


「っ」


 リスリィの力が凄い。

 ディアスも幾度かリスリィと立ち会ったことはあるが、その時はここ魔dネオ力では無かったと思っている。


 やはり、あの時に一瞬感じた魔力に近い感じがする。

 これはハルステウラじゃない。所謂リスリィの本気と戦っているようなものだ。


「きついな」


 ディアスはそう呟く。

 リスリィに対しては、オルフィと二人ががりでも勝てたことが無いのに、今回はそのリスリィの本気。

 正直に言って、冗談と言って欲しいものだ。

 そしたら、笑い話に出来たというのに。


「俺は……」


 リスリィを前に怯むディアス。


「シャインバースト」


 その時光の魔法がリスリィの体の闇を攻撃する。


「ディアス……諦めないで!!」


 オルフィがそう叫び、魔法を次々に放っていく。しかし、二発目以降はあまり届かない。


「しゃらくさいな。なら先に魔導士を倒した方が良いか」


 そしてリスリィは一気にオルフィに向かって飛んでいく。


 ディアスは立ち上がり、一気にリス林の方へと行くが、あっさりと返り討ちにされた。


「お前たちは、弱い」


 そう言って、オルフィの方へと向かうリスリィ。

 ディアスにはそれを止めるすべはない。

 彼は今立ち上がれる体力などなかった。それほどに、ハルステウラの一撃は重かった。


「畜生」


 動けと念じるも、体は一向に動く気配を見せない。

 確かに、ディアスは弱い。すでに国の実力者の中では上位に入るほどの実力だが、今のリスリィにはかなわない。

 この戦場にはそこまで戦力がいない。


 もう駄目だと全員が絶望した。


 だが、その時。


 リスリィの体が止まった。



「なんだと!? くっ、あの女め、無駄な抵抗を」


 その瞬間ディアスは理解した。今、リスリィが戦っているんだと。その瞬間、多くの剣士がリスリィの方へと向かって行く。

「ハルステウラ。最強の体を持ったとしても、お前の精神はどうかな」


 そう、ミハイムは叫ぶ。


「魔を滅する力はずっと鍛えてきた。今、ようやく役に立ちそうだ。……僕の全力を受けてみろ!!」


 そのミハイムの叫びで、光の剣が頭上に現れる。


「これを耐えれるかな。シャイニングソードレイン」


 剣が雨のように降り注いでいく。しかもそのすべての剣が光り輝いている。


「これは文字通り、剣の雨だ。流石のお前も耐えきれはしないだろう」

「ふはは、光が弱点なのはそうだが、安易に決めつけるんじゃない」


 そう言ったハルステウラは上に向け魔弾を放つ。


「体に届けば致命傷というだけだ。こんなもの、先程のシャインバーストに比べれば痛くもかゆくもないわあ」


「なら、それを受けてください」


 オルフィの手に閃光が集まる。


 そして、「シャイニングビーム」光線が放たれる。


「第二の矢だと」

「弱点属性があるお前はさっさと撤退を選ぶべきでした。もう遅いんですよ」


 その攻撃を受け、ハルステウラは消滅する。


「今度こそ……終わった……?」

「いや、まだです」


 ミハイムは幻影の影を指さした。


「やられる寸前に体から出たみたいですね」

「なるほど……」


 ミハイムの手から光の矢が飛び出て、それが幻影にとどめを刺した。


「流石に体力が尽きていたみたいです」


 こうなってはもはやゴブリン程度の脅威度だ。もう恐れることは無い。


「さて、」


 ミハイムはディアスの方を見る。


「ああ、終わったな」

「そうじゃありません。さっさとあいつを起こしに行ってください」


 そう言ってミハイムはリスリィを指さす。


「おい、今回の作戦の功労者に向かってそれはないだろ」

「元々あの人が取りつかれなかったらもっと早く終わってたんです。僕たちにはこれくらいする権利はあると思います」

「ったく、相変わらずだな」


 そう言ってディアスはリスリィを起こしに行く。


「おい、終わったぞ」


 ディアスはリスリィの背中をさする。

 目が覚める様子が見えない。

 ディアスはリスリィの背中をもっと強めに叩く。

 するとようやくリスリィの目が覚めた。


「終わったぞ」


 ディアスは再びそう言う。


「ええ、そうみたいね」


 リスリィはディアスの手をどかして自分で立ち上がる。


「ごめんね。私が上手く立ち回っていたらもっと楽に倒せたのに」


 申し訳なさそうに言った。

 あと少し体を取り戻すのが遅かったら、オルフィを傷つけていた。


「……それ、ミハイムも言ってたぞ」

「そうなんだ……まあ、何はともあれ、今回ハルステウラは倒せたみたいね」

「ああ、しかも死傷者はゼロだ。よかったな、リスリィ。もし死傷者が出てたら大変なことになってたぞ」

「だね。もう牢の中はごめんだよ」

「もう? 今まで牢に入ったことがあるのか?」

「少しね」


 そう言ってリスリィはそっぽを向いた。それは触れられたくない事があるというのを示しているようだった。


「とりあえず。帰りますか」


 リスリィはそう言って立ち上がった。だが、すぐにリスリィはその場に倒れそうになる。


「無理すんな」


 ディアスがリスリィの手を肩に乗せた。

 よく見るとリスリィの体はボロボロだ。

 服もかなりぼろぼろになり、下着が見えている。その地肌からは血がだらだらと出ている。

 更にあざが沢山出ていた。

 ディアスにとってリスリィは最強だ。リスリィが苦戦している所はあまり見ない。

 だからこそ、忘れかけていた。リスリィも一人の少女なのだと。

 それを見てディアスは「お前はよく頑張った」といったのだった。

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