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大魔王の器の少女。三〇〇年後の世界で無双する  作者: 有原優


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第三十二話 ミハイム

そして、その二日後、私たち三人は校長室に呼ばれた。


「さて、今回は任務ではない。ただ、君たちにお願いしたいことがあって来たんだ」

「はあ、なんでしょう」

「対抗戦に出てくれないか?」


 それは、どういう?


「それはどういうことですか? この国には一個しかないはずですよ」


 ディアスがそう、鋭い声で言う。

 対抗戦など不可能だ。何しろ、対戦相手がいないのだから。


「実はな、ハルファダ国の王立学院がそのような申し出をしてきたんだ。君たちのパーティはすでにこの国有数のパーティだ。何しろ、すでに学院最強とも呼ばれているリスリィがいるし、ディアスもすでにこの国有数の剣士だ。そしてオルフィは、最強のヒーラーとも言っても過言じゃない、強大な威力の魔法を放射する。君たちなら勝てると思うんだ。それに、他の国の勇者の力を見ておくことも悪い事じゃない」

「……お言葉ですけど、それを受けて、私たちに意味はあるのですか? その周りん冒険者の力を知る以外に。それに、レアネスさん、あなたが出たらいいんじゃないの?」

「それは確かにだ。だが、俺は出るなと言われた。何しろ、教師の仕事も掛け持ちだからな。だからこそ、君たちに行ってもらいたいのだ。それに、勝てば。補助金がさらに出る」

「結局……お金の……はなし」


 オルフィはそう静かにつぶやいた。


「まあでも、これは受けようぜ。俺たちの連携が試せる」

「ディアスは乗り気なの?」

「おうよ、オルフィは?」

「私も……やりたいです」

「多数決で決まりだな。じゃあ、受けます」

「ありがたい。これで決まりだな」


 ねえ、私の意志は?


 だが、そこで問題が生じた。向こうが希望した人数は四人なのだ。私たちだけじゃ、一人足りない。


「どうしようか」


 私たちは食堂で考える。


「俺たちが買った奴隷はどうだ? いるはと、お前のレイラで」

「それはだめね、流石に問題が多すぎる」


 実力不足と、人間を信用していないところ。最悪殺すかもしれない。

 まだ、レイラを御しきれてはいないのだから。


「となれば、あれしかないわよね」


 ミハイムしかいない。

 彼は今も魔術師として活躍している。

 その魔力はオルフィには劣るものの、十分な強さだ。

 前衛2。後衛2というのはしっかりとしたチームの形である。


「ミハイムは俺が好まない」

「なんでよ」

「あいつ常に自陣満々だろ。俺あの態度が気に入らない」

「そ、それは私も認めるわ。でも、他に良い人がいる?」

「……いないかもな」


 そう、ディアスが言う。


「私も……ミハイムさんの加入には……賛成です」


 オルフィが同意した。


「多数決の原則だと、ミハイムになるわよね」


 さっきの仕返しだ。

 私の許可なしで出ることを決めたディアスに対しての。


「たくっ、仕方ない」


 そう言ったディアス。悔しそうだ。

 ミハイム。今のミハイムは正直言えば孤独のソロプレイヤーだ。誰とも組まずに一人で依頼を受け、こなしていく。たまに以来の難易度によって人と組んだりもする。だが、そのくらいだ。

 つまり、ある意味で言えば最強の一角という事になる。

 何しろ、一人で魔物の巣窟に行って無事に帰ってきたこともあるのだから。


 そんなことを言ったらあの時のラベルとの戦い。あれは私一人で向かった。

 でも、二人がある程度の強さになったら、難しくない依頼にも皆で行くようなっていた。

 つまり、私たちは、チームとしての強さ。そして、ミハイムは個としての強さを持つという事になる。


「でも、どうやって誘うかね」


 レアネスさんあたりが教師権限で呼んでくれたらいいのだけれども。


「でもそれも、望めないし」


 もう、とにかくやるしかない。ミハイムの部屋に向かわないと。


「何の用ですか? ようがないなら帰ってください」


 部屋に入って早々、そんなことを言われた。


 相変わらず口調がきつい。ここから本題を切り出さないといけないのか。

 まあ、やるって言ったのは私だから、引く訳には行かないけど。


「今日は、お願いがあってきたの。私たちはこれから学院対抗――」

「断る」

「断る……え?」

「そんなもの受けるわけがないだろう。僕は忙しい。そんなお願いを聞くわけには行かない。僕は一人でも多くの魔物を掃討しなければならないのだから」


 ああ、この人、こういうところがあったな。これはどうしても受け入れてくれないパターンだ。

 

「勿論、依頼に際し、お金は払われるみたいよ」

「お金のためにやっていると思われるのは心外だな」

「それに、新たな知見が得られるかも」

「そんな事よりも魔物を討伐したい」


 訊き訳がなさすぎる。

 確かに私もこの催しには反対派だけど、まさかここまであからさまに断ってくるとは予想外だった。


 むむ、どうしたらこいつを仲間に引き入れることが出来るんだろう。


「とりあえず出てってくれないか? 読書の邪魔だ」


 彼の手には、難しそうな魔導書があった。


 これはもうどうしたらいいんだろうか。

 ディアスに相談するしかない。

 私は、「急に押しかけてきてごめんね」とだけ言って、部屋から出た。


「ねえ、ディアス。かくかくじかじかで、断られちゃった」

「だろうな。あいつは自己中なんだから、こんなの乗ってくれるわけがないさ。さて、これで万策尽きたんだったら別の策を考えようぜ」

「いや、あいつ意外に考えられない。だって、あんな才能が一人で討伐に行くって、効率無駄じゃん」


 だって、確実に、みんなで行った方が、得だもの。

 その方が危険なかけもできるい、何より、短時間で魔物の掃討ができる。そしたら強大な魔物に挑むこともできるし、逆に雑魚魔物を倒し続けていくという事も可能。

 何その方がラベルに近づきやすい。


「それはそうだ。本来四人の方が動きやすいはずだからな。昇格試験で一緒だった三人だけで動いている俺たちが異質なだけで、他のパーティは大体四人だしな」


 だからこの機会に、ミハイムを私たちのパーティに入れたい。


「だが、正直な事を言う。あいつはそれを望んでいない、群れることで弱くなるのを恐れているんだ。だから、俺は反対だ。あいつと仲良くしていくビジョンが見えない」


 ディアスの言っていることも正しい。

 あいつはただの自己中で嫌いだ。

 でも、実力は認めている。


「やっぱり捨てがたい。ディアスお願い」


 そう言って私は頭を下げる。すると、ディアスはため息をつき、


「仕方ねえな」と言った。



 そして私たちは二人でミハイムの部屋に行く。


「一人で無理なら二人でですか。単細胞ですね」


 うぅ、うるさい。


「僕は何度言われても入る気はありませんよ」


 そう強く拒絶するミハイム。でも、私は。


「私はあなたにパーティに入ってほしいと思っている。この対抗戦だけじゃなく、私たちのパーティの一員として加わってほしいの」

「はっ、くだらない。誰があなたたちのパーティに入るとでも? もしかして脳みそでも腐ってるんじゃないですか?」


 強烈な嫌味だ。

 

「僕は、あなた達とは違う。信念を持って魔物を倒しているのです。そしていつかは魔王を倒し、世界を平和にしたいのです。だから、あなた達みたいなお気楽パーティと組むわけがないでしょう」

「私はね、魔王もラベルも許せない。あいつらは悪だよ。人の領域に入り込んでそして、人を殺す。そんな奴らには対抗するしかない。殺すしかない。……私は、過去に魔王に相対したことがあるの。勿論、ここに入る前ね。それは邪悪そのものだった」


 人間の事なんて考えていないような悪。それが魔王ラベンヌだった。

 まあ、レイラの話を聞いてる限り、一概にはそうは言えないかもしれないが。


「だから私は誓ったんだ。絶対に魔王を駆逐するって。だから力を貸してくれない?」

「やはり、馬鹿みたいですね。僕とあなた達ではやっぱり覚悟が違う。価値観の違いは分裂を呼ぶ。だから僕はあなた達と一緒には行けません」

「なるほどね。でも、そうはさせない。あなたはしょせん人と群れることを恐れてるだけでしょ? だって、貴方は人と群れるという選択肢を敢えて除外してしまっている。そんな無駄なことは無いわ。だったら、私たちと一緒に魔王討伐に向かった方が良いわ」

「はあ、絶対にあなたは諦めてくれなさそうですね。分かりましたよ。物は試しで、出ましょう」

「分かってくれたのね。じゃあ、そこでパーティを組んだ方が良いってところを見せてあげる」

「ならさっさと消えてください。僕は本が読みたいので」


 感じ的に仕方なくパーティを組むと言ったところか。

 それは仕方がない。

 だが、きっと、パーティをっ君で戦うという楽しさを教えてあげたらきっと、彼も仲間に入ってくれるだろう。

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