第二十八話 決闘
二人との戦闘。
緊張は……しない。
でも、わくわくはする。
二人はどれだけレアネスさんの手で強化されてきたのだろうか。
「リスリィ、手加減しないでね」
「わかってる。本気で行くよ。そっちこそ、私は魔王メドリアだと思ってかかってきて」
「勿論」
そう言ってオルフィは杖から煙を放ってきた。
死角を潰したか。次の瞬間、煙の中から人の影が見える。
「ふん!!」
私はその剣を防ぐ。
ディアスの剣、中々強くなっている。
私でも受け止めるのに骨が折れる。
普通にA級レベルはある。
ああ、キルキランダと戦った時を思い出す。
確かあの時はあの多数の手に苦戦したわね。
「ディアス、やるわね」
でも、私はこんなものでやられはしない。
「えい!」
私は剣を力技で跳ねのけ、地面を蹴る。
ディアスと戦うのは危険。まず狩るのはオルフィ。
彼女を残しておけば、後々厄介な存在になる。
だからこそ先に気絶させる。
「リスリィなら、そうすると思っていた」
そう言った、ディアス。
これはまずいか。
その瞬間私の足元が爆発した。
その衝撃に手で無意識に身を守る。
「その隙で十分だ」
ディアスが上に見えた。今にも剣を振り下ろそうとしている。
「ぐぅ!」
剣で受け止めるも、上からの攻撃。体重もかけられて、受け止めるのがしんどい、勢い、地面を蹴って後ろに下がる。
だが、これで、オルフィとの距離が広がった。
オルフィ、彼女は単なる巨大な派手な魔法ではなく、地道な嫌らしい魔法を会得している。所謂デバフとも言おうか。
「だけどね、魔法が使えるのは私も一緒よ」
私は勢い、右手に魔法を生成する。
火の魔法だ。
「小細工なんて、圧倒的な火力で消しちゃえばいい」
私は火の玉を一気にディアスに向けて振り下ろす。
流石に直撃してもディアスの命までは奪いはしない。
周りの観客が熱狂している。
「フレイムボール!!」
「ふん、そんな攻撃!!」
ディアスは剣を手に、一歩も動かない。
ディアスは状況が分かってるの?
避けなかったら死ぬかもしれないんだよ。
「俺にはこれで十分だ」
ディアスの剣がものすごいスピードで振られる、
その剣で火の玉が真っ二つになった。
ふと目を凝らして見ると、オルフィの杖からディアスに対して白いオーラが伸びている。
あの日に浸かってたあのバフ魔法か。
「ふふ、やるねえ」
この勝負はまだまだ終わりを迎えないらしい。
でも、それでいい。あっさり終わってしまったら面白くないもの。
「やるねえ、二人とも」
「当たり前だ、認めさせてやるからな」
「元から認めてるって」
才能は。
「でも、今は私には勝てない」
いくらオルフィの強化魔法の効果で、ディアスの力が上がってたとして、私に勝てる理由はない。
大魔王の力は使えない。ただ、それでもやりようはある。
「行くよ」
「なめやがって!!」
ディアスが勢い突っ込んでくる。
速い。
だけど、
「早いだけじゃ、無理」
私は剣を空に投げる。
そしてじっと、ディアスの動きに注視する。
これはもはや判断速度の問題になる。
だけど、見切れる。
「ここ!」
私はそう叫んで、ディアスの腹を狙って拳を突きつける。
私には剣よりも、拳の方が使いやすい。だって、全部が私の体だから、コントロールしやすい。
その瞬拳が私に襲い掛かるディアスの腹にぶち込まれた。
その衝撃でディアスは口から唾を吐き出しながら、その場に悶える。
「くそ」
「私は目が良いの」
「とどめはささないのか?」
「それは卑怯じゃない? ちゃんと立ち上がるまで待つわよ」
こんな形で終わらせたくはない。
「なめてんじゃねえか!!」
「なめてないよ。もしディアスがここまでやってなかったらあっさり勝負をつけてたつもりだったよ」
「分かった」
そう言ってディアスは後ろに下がる。
今度はどう来るのかな?
そう思った瞬間、地面が揺れた。
なるほど。
オルフィの魔力総量がはるかにあがっている。
だけど、こんなので私の体勢を崩せると思ったら大間違いだ。
そう思ったら、次の瞬間ディアスが襲い掛かってきている。
なるほどね。そうやって私の動きを封じた後に、畳みかけるつもりか。でも、それにはまる私ではない。
少しだけ体勢を崩したとしても、受け止められる。
剣でその剣を受け止める。
ガシンっと思い音が鳴って、その衝撃を受け、手が軽く痙攣する。
「痛いな」
そう言って私は目くらましとばかりに、剣を持っていない方の手から、蒸気を出す。
しかも、ディアスの目に向かって。
それにディアスが悶えてる隙に脱出。
そして、ディアスが怯んでいる今がチャンスだと、一気にオルフィの元へと駆けていく。
地面の爆発に警戒しながら今度は一気に地面をけり、空へと跳躍した。
「近づけさせない」
そう言って、オルフィは魔法弾を数発私に向けて放ってきた。
ディアスが回復して、こちに来てしまったらまた、面倒なことになる。ここで決まる。
私も同じ質量の魔法弾を放つ。
「大丈夫。ディアスの帰還を待たずに私が勝ち切るから!!」
そして私は地面に向けて魔法弾を放ち、推進力で私はさらに上に上がる。
これで疑似的な飛行を可能にする。長時間は持たないのだけれども。
「さあ、受け止められる?」
水の水流を一気に下に流し込む。
魔法の使い方なら、だいぶ慣れてきた。
水魔法は、個体じゃない。だから、受け止めるのが簡単じゃない。しかも、視界を潰すことが出来る。
オルフィは咄嗟にそれを理解したのか避ける。受けてもダメージ量はそこまでないというのにだ。
オルフィは素早く私から逃げる。ディアスが来るまでの時間稼ぎだろうか。
だが、もはや遅い。
ディアスが来る前に決着はつけられる。
水を前じゃなく後ろから発射し、その推進力でオルフィの元まで飛んでいく。
オルフィも私のそれに対抗してか、水の推進力で私から遠ざかろうとしている。
そうはさせるか。
そもそも私とオルフィでは身体能力が違う。
かなり魔力は使うが仕方がない。地面を隆起させる。そして土の壁を作り出し、オルフィの逃げ場を防ぐと同時に、壁を蹴って加速。
「オルフィ捕まえた」
そしてついに、オルフィを捕まえることに成功した。
「くっ」
「ごめん、眠っててね」
そう言って、私はオルフィを催眠魔法で強引に眠らせた。
「リスリィ!!!!」
上からディアスが剣を振り下ろしに来てる。だけど、オルフィはもう来ない。
本当は魔法を使ってあっさりと決着を決めたいところだが、もう魔力残量があまり残っていない。それに、ここで魔法を使ってディアスを倒すのもつまらない。
ここは、魔力を使わずに、勝ち切ってやる。
私は剣に魔素を込める。
私は剣が拳に比べて相対的に得意ではない。
だが、今の状態のディアスを蹴散らすのには十分だ。
「ディアス。ここであなたを倒す」
「やってみろよ」
剣がぶつかっていく。
剣がぶつかることにより、大きな音が響く。その音で会場がわっとなった。
純粋な剣術ではこちらの負けだ。
でも、魔素の扱いならこちらの方が上だ。
魔素を足に一瞬移し、地面を蹴って後ろに下がる。
「なんだと!?」
そして咄嗟に横に移動する。
ディアスはそれに対し、ギリギリで持ちこたえたようだ。
これで、体勢が一気に崩れてくれれば良かったのだが。
だけど、まだやりようはある。
ディアスはこちらに向かってくるが、もうここまで来たら私の完封勝ちだ。
ディアスの攻撃を避ける避ける避ける避ける。
ディアスの方が魔素量は多いが、魔素のコントロールが下手だ。
だからこそ、魔素を体中の部位にちりばめれば、負ける道理などない。
ディアスの攻撃を避ける避ける避ける避ける。
反撃のターンは中々来ない。だが、いつかは来るはずだ。
そして、五分程度避けていると、だんだんと、ディアスにも疲れの色が見えてくるようになった。
対して私はまだまだ、舞える。
そしてついに、彼は私の前で、「降参だ」そう告げた。




