第二十六話 不和
そして翌日。風邪が治った二人を引き連れて、誰もいなくなった洞窟の中を進んでいく。
魔物には遭遇しない。いや、遭遇ならしている。この前私に蹴散らされた魔物達の死骸とだが。
「なあ、リスリィ、もう魔物がいないんじゃねえの?」
そう、ディアスが言う。
これは、私の計画成功ね。
「でも……まだいるかも」
そうオルフィが言う。
でも、もういないことは分かり切っている。昨日私が隅々まで確認して、全滅を確認したからね。
「そうだな。おとといのあの魔物達で全部と確定したわけじゃないからな」
二人は互いの顔を見て、頷いた。
そしてあっという間に洞窟を全部見て回り、最後のところ、最奥まで来た。
あれ?
なんだか、変な感じがする。
体に変な緊張が走る。
これは……新たな魔物?
いや、違う。これは、致命的なミスを起こした奴だ。
私は完ぺきにやった。魔物の残党がいないことを確認した。
なのに、なんだ、この震えは。
数秒考えて、その震えの原因が分かった。
嘘がばれるのを恐れたからだ。
そして、嘘がばれようとしている。
これ、死体回収し忘れてない?
そう、ブルービーストの死体だ。オルフィと、ディアスが戦った魔物にこいつはいないはずだし、私が戦ってたら、あの日最奥まで行ってたことになる。
そうなると、ラベルと出会ったことの辻褄が合わなくなる。
となれば、二人にとっては見たこともない魔物が謎に最下層で死んでいるという謎の状況が起きてしまう。
そうなったら、流石のディアスも不思議に思うだろう。
「おい、リスリィ」
やっぱりディアスが私に問いかけてきた。
「まさじゃ、俺たちに内緒で、魔物を先に倒してたんじゃないだろうな」
「……」
「リスリィ、昨日いなくなってたのは、そう言う事だったのかよ、俺たちはそんなにリスリィにとって信用がないのかよ」
そう、ディアスが怒涛の剣幕で言ってきた。
私は別に信用して似訳ではない。
ただ、ディアスやオルフィが万が一にでもやられたら困ると思ったからこの行動をとったというだけだ。
「俺たちはやっぱり戦力外だったってことかよ」
ディアスは淡々とそう言った。
「俺たちは、お前の力になりたいんだよ。お前は超人だが、決して無敵じゃない。それに、お前は常に頑張りすぎるきらいがある。そんなお前をただ、一人で戦わせたくないだけなんだ」
そう言ったディアス。
ああ、なるほどと、彼の言う言葉を胸の中で納得した。
「ねえ、ディアス。私はね信用してない訳じゃないの。ただ、怖いの。私はディアスの知っての通り、ずっと一人だった。だからこそ、仲間は二人が始めてなの。だから、二人を失いたくはなかった。ただ、それだけなの」
「……リスリィ、確かに俺たちは弱い。リスリィが不安視するのもわかる。だから、今の今のリスリィの話を聞いて聞く、俺たちを信用できないなら、今すぐパーティ解散をしてくれ」
「……ディアス?」
「俺たちは守られるだけのガキでいるくらいなら、お前の元を離れるそれだけだ。俺たちがS級になるまで他のメンバーと一緒にやっててくれ」
その場に無音の空間が流れた。静寂だ。
私は守りながら二人の実力を最低限A級レベルまでに仕上げようとした。だけど、それが二人にとって迷惑になるんだったら。
「分かった」
そう言った瞬間、オルフィの顔がゆがむ。そして私の腕をぎゅっと掴んだ。
分かっている。こんな形で解散していいはずがない。
「なんていう訳がないでしょ? 今更あなた達とは違うチームに所属したくはない。私は、あなた達とやりたい」
「なら、俺たちをもっと信用しろ。仲間だと思ってくれ」
「でも、あなたたちは今はブルービーストには勝てない。だからこそ、あなた達を強くさせようと思ってるの。手ごろな相手を渡して、そして、いつか隣に立ってもらおうって」
「なら、猶更だ。俺たちはそんなので強くなりたいとは思わない。汗をかきながら、戦いたいんだ。……お前が俺たちとパーティをくみ続けたいというなら猶更だ」
「……分かったわ」
結局、そこから真っすぐ国に帰ることとなった。
その帰り道会話が無かった。
当然ね、だってディアスの信用を損ねたんだから。
私は別に信用してない訳じゃない。
なのに……。
そして、帰り道にも当然魔物はいる訳で。
決して、私は手を出さなかった。いや、手を出すのが怖かった。これ以上ディスの信用を失ったらどうなるんだろうか。
正直考えただけで怖いのだ。
ディアスとオルフィは二人で駆使して敵を倒していく。その姿はまるでコンテストやらなんやらに出ているような感じだった。
恐らく私に力を見せつけているのだろう。
地獄だ。本当に気まずい。
行きが五時間かかったという事は、帰りも五時間かかるという事。
そうしてようやく、学院に戻ってこれた。
「ねえ、リスリィ」
報告書を作成中にオルフィが話しかけてくる。
「私は……ディアスと違って怒ってないよ」
そう、耳打ちで言ってきた。
「確かに、信用されてないことは悲しい……でも、リスリィの気持ちもわかるから」
私が表情を緩めようとすると、その前にオルフィの次の言葉が話された。
「でも、私は……リスリィくらい強くなる」
「そう。応援するわ」
「だから……」
オルフィは声を大にしていった。「私と戦って」と。
「ちょっと待って? 決闘という事?」
決闘。確かにこの学院には、決闘という制度がある。
だが、まさか今、オルフィがそれを口にするなんて。
「一対一で?」
「いや、ディアスと一緒に」
「はあ、おれ!?」
ディアスの起きい声が響いた。その声で、周りからじろっと見られる。
この部屋は図書館だ。あまり大きな声を出してはいけない。
「すまん」と、ディアスは一言謝り。
「俺も一緒にやるのか?」
「うん。……だってもうリスリィになめられたくないでしょ」
「それはそうだが」
「じゃあ、決まり。一緒に戦おう」
オルフィにはんばゴリ押されて、ディアスも決闘に乗り出したようだ。
その後詳しい詳細を決定した。
日程は今から三週間後。
その日に、私対二人の対決が公的な場で行われる。
その日に、私は二人と戦える。
結局、対話が苦手な私にとっては、バトルが一番楽だ。
それで、二人が強くなってくれるのなら嬉しいし、この決闘私に取って勝っても負けても嬉しいことになる。
負けたら純粋に二人が強くなってるという事が嬉しいし、勝ったら二人にまだまだ独り立ちできないという事を知らしめられる。
その日が楽しみだ。




