第二十三話 リスリィの力
村はかなり暗く寂しい雰囲気だった。
人々から笑顔が消えている、むしろ恐怖がみんなを支配している。そう、ディアスは感じた。
ディアスは妙だなと思いながら近くの飲食店に入る。とりあえずお腹が空いたのだ。
オルフィもおどおどとそれについていった。
「ご注文どうしますか?」
そう店員さんが言った。
「オルフィどうする?」
「じゃあ、じゃあ、私はこの肉セット」
「俺はこの天ぷらで」
そうして二人は注文した。
そして、ディアスは一言。
「あのリスリィの力はどう思う?」
ディアスがオルフィに訊く。
ディアスとオルフィ二人を守りながら、魔物達を全滅させる。いくらなんでも人間技ではない。
普通の特訓方法であそこま行くとは到底思えない。
何か特別な力でも持っているのか。
「あいつの力は条里を超えていると思うんだ。俺たちをかばいながらラベルを退けた。……俺は気絶する前にあいつに会ったんだ。その時、ラベルの力で一瞬でやられちまった。あれと渡り合うなんて人間技じゃねえと思う」
「……ディアスは、リスリィの力が何か関係があると思うの?」
「ああ、一瞬リスリィからおぞましい魔力を感じたんだ」
「……気のせいでしょ。……それに私は……リスリィが何者でも、何も関係ないと思ってるし」
「それは俺も同じだ。もしあいつが悪魔とかでも、俺はあいつのことを嫌うつもりはねえ……オルフィはさっき俺になんでリスリィに固執するかって言っただろ? あれの答えは簡単だ、昨日俺たちは結局足で惑いになった。それが許せねえんだよ。……オルフィもわかるだろ」
「……何が?」
「あいつは常に一人なんだよ。自身の力に胡坐をかいてるわけじゃなく。ただあいつは孤独で戦おうとするんだよ。あいつの隣には誰かが立ってねえと行けねえ。それに俺が成りたいんだよ」
「……それは私も一緒。私もリスリィの力になりたい」
「そうだろ。俺達もっと強くなろうぜ」
「……うん!」
そうこうしているうちに料理が運ばれてきた。
その料理を二人はじっくりと味わいながら食べていく。全て中々の味だ。
食後、このまま食料を買って、戻ってもいいが、オルフィが不意に、
「話を聞こう」
そう言った。
そう言えばディアス達は村に着いた途端すぐさま洞窟へと駆け出していった。その時の三人の頭には近くの村へと行くという頭がなかったのだ。
この村が暗い理由。それに先ほどのご飯、一般的な価格よりもはるかに高かった。
何かしら理由もあるのだろう。
「行こう」
そのオルフィの言葉に従い、ディアスは近くの役所へと向かう。
そこでは、村の様々な事項を話し合っている、所謂村の運営所みたいな所だ。
「すみません、俺たちは隣村の洞窟の魔物を掃討するという依頼で来たんですけど」
「ほう、その依頼を出したのは私達だ。だが、依頼を受けたのはリスリィという女性だったと聞いているが」
「彼女は今寝込んでいるので代わりに俺達が、あ、近くにいるからそこは安心してください」
「そうですか、それであの村が襲われたのはほんの二週間前となります。その日に沢山の魔物が村へと向かってくるのを見た村人が私の元へと来ました。それはまるで戦争が始まる予兆みたいな雰囲気を感じました。その時一番前に一人の男がいたのを覚えています。私たちは魔物の襲撃に備え、準備をしていたのですが、不思議な事にこの村へは誰も来ませんでした。しかし、私たちはその状況に段々と霹靂していきました。いつ向かってくるのか分からない状態でずっと過ごしているのが疲れてきたのです。だからこそ、依頼をしました。もしもこれでダメだったら、みんなで危険ながら移住を考えていた所でした」
「……その先頭に立ってた男は?」
ディアスは真剣な顔をして聞く。もしもそれがラベルだったら。
「若い美青年のような見た目でした。肌の色から魔族であるという事は一瞬にして分かりましたが、その裏の顔は恐ろしさを感じました、纏っている邪気、それが半端じゃないものだと思いました」
その内容を聞き、ディアスはそれがラベルの仕業だという事がすぐに分かった。
しかし、そこで新たに疑問が生じた。
「ならなぜ、この村じゃなく、あの村を重点的に狙っていたんだ?」
普通に考えて、両方の村を滅ぼしてしまった方が、絶対に良いという事は分かる。
何しろこの村を無事に残している必要なんてない。
恐怖を蔓延させるから。
いや、そんなわけがない、もしかして、村を無事に残していたのは、魔物の襲撃を即座に知らせるため、つまり、助けを呼ばせるためだという訳か。
「となればやはり黒幕はラベル。そして、壮大な計画だ。しかもリスリィが初めてラベルに会う前の敵事だ。となれば全部が計画のうちである可能性もあるっていう事か」
ラベルはリスリィが寝込んでいる問う事を知らないはずだ。だから大丈夫なはずだが。
ここに来てディアスは身の震えを感じた。
ラベルという男は、危険だ。
安易な判断でリスリィをおいて言った判断自体が間違いだったのかもしれない。
「オルフィ食料を確保してすぐに戻るぞ」
「……うん」
そうして二人で食料を確保し、村へと急ピッチで戻ることにした。
★★★★★
痛みで目が覚めた。激痛だ。
気が付けば。魔物が目の前にいた。
ディアスと、オルフィはどうなったの?
いや、今はそんなことを考える時ではない。
魔物が沢山いる。こいつら全員私の命を狙っているのだろう。
「はは」
ラベルのやつは、引いたと見せかけ、ディアスとオルフィの油断を誘い、買い出しに向かった隙に再び制圧か。
よく考えている。
頭がボーとしてうまく魔素を操れない。このままでは非常にまずい。
とりあえず敬撃よりも逃走を図る方が良い。
ラベル本人は来ているか?
来ていないと思う。
あいつはリスクを冒さない。
それにそこそこの傷を負っていたはず。そんな中死のリスクを冒さない。それもこんな短期間で二度も。
魔素をコントロールするよりも、魔力を練る方がやりやすい。
「えい!」
私は迫りくる魔物達に炎弾を放つ。
その団が当たり怯む。だが、威力が明らかに足りない。だが、一瞬の隙を作れば十分だ。
地面を蹴って、村の外へ向かって駆け出す。
しかし魔物が多い。
レッサージャガーをはじめとした沢山の魔物がはこびっている、
頭が痛い。おなかもいたい。
根性で走っているが、死ぬほどの激痛で、少しでも精神が痛みに負けたら、その瞬間に私は倒れ込み、捕食されてしまう。
もはや闇の力も使えない。
使ったら、次こそ私の闇の力が露見してしまう結末になってしまう。
とりあえず二人が買い出しに行ってるであろう、村へと向かって行く。
「はあはあはあはあはあ」
炎で牽制しながら走っているが、今度はスタミナが切れてきた。
そもそも隣の村まで三十分の距離がある。無事につくことなど本当に可能なのだろうか。
いや、そんなことを考えてはいけない。
この修羅のような魔物達から無事に逃げおおせなければならない。
私は痛む体の中、必死に足を出し、出していく。体が壊れたとしてもここで死ぬのはさらさらごめんだ。
私はこんなところで終わるわけには行かない。
村をこんな目に合わせたラベルを打たなければならない。
魔王メドリアをこの手で打たなければならない。
とて
「うぅ」
私は盛大にこけた。領の足を同時に前に出してしまった。
これではだめだ。私は倒れる。
私は魔物達に蹂躙される。
魔物の牙が私に襲い掛かる。
だが、その直前で魔物、レッサージャガーは炎の弾丸に吹き飛ばされた。
そこにいたのはオルフィだった。




