第二十二話 食糧調達
リスリィが寝た十分後。
「なあ、オルフィ」
ディアスがオルフィに話しかける。
「今日、今から近くの村に行こうぜ」
「で、でもオルフィは?」
「あいつなら一人でも大丈夫だろ。それに、もう魔物達は、リスリィが倒してくれたんだ。流石にもう出ないだろう」
「……うん」
オルフィは迷いながらもうなずく。
リスリィのことがどうでもよかったわけでは無いのだが、少し出かけたい気分だ。
それに訳はもう一つある。食料だ。
残り少なくなってきてしまっているのだ。
だから急遽補給しなければならない。
当初は三日は大丈夫という話だったが、実のところ、食料がかなりこぼれてしまったのだ。そのせいで、今は食料が足りない。三人分となると、明らかに足りないのだ。
それに、ここから三十分も歩けば近くの村に行ける。往復一時間。それくらいならリスリィのもとに誰もいなくとも大丈夫だろう。
勿論本音を言えば、リスリィを担ぎながら行くのが良かった。
無論、医者に見せるために。
だが、それは流石に無理だ。
魔物相手にリスリィをかばいながら戦うのは、ほぼ不可能に近いのだから。
とはいえ、今の二人の実力ならもはや、この辺りに生息する魔物程度なら倒せる。
それは勿論、ミノタウロスの様な魔物に出会わなかったらの話だが。
そして村から出る。一応リスリィの周りに香水だけはまいといて。
進むこと暫く、思った以上に魔物と遭遇しない。やはり昨日リスリィが大暴れしたおかげで、魔物の数が比較的に少なくなっているのだろう。
そうして進む事またしばらく。
そこに、ようやく魔物が現れた。
「これは、マジかよ」
ディアスが思わずたじろぐ。この魔物は確か、レッドバード。この近くでは生息しないはずの魔物だ。恐らくはこのあたりの生態系が大きく崩れたのであろう。
少なくとも、今のディアスとオルフィの実力で倒せる相手ではない。
逃げる。いや、それは不可能だ。あの魔物はディアス達を視界にとらえている。
リスリィの話だと、昨日ラベルという魔族と戦い、それを退かせたらしい。
という事は、今もなおそこにいるというのは不可解な事である。
ラベルが引いたふりをしたのか、リスリィが風邪になったのをかき付けたのか。
どちらにしろ、ラベルが関わっているんじゃなく、ただ、ラベルが連れてきた魔物の残党という可能性に賭けたい所だ。
「とりあえずこいつを倒さなくてはならないのか」
「……うん」
リスリィはいない。ここは二人で倒さなくてはならない。
「俺が前衛をやる。オルフィは後衛を頼むぞ」
「うん」
敵うかどうかは二の次、ここでこいつを倒さなくてはなならない。
「行くぞ」
ディアスは地面をけり駆け出す。
足に魔素を込める方法は昨日軽く学んだ。
ディアスはとにかく走り、走る。
そして地面を強く蹴り、レッドバードの方へと向かって行く。
「行くよ!!」
オルフィもそう叫び、ディアスをサポートするように、魔法を飛ばす。
その魔法によってレッドバードは逃げ道を封鎖され、ディアスの攻撃が当た――
その前に空高くに飛び上がった。
「これ、さっさと次の村に行くとかできるのか?」
「無理だと思う。だって、こいつら私たちをマーキングしてる……」
その目は赤く染まっている。試しにディアスは軽く移動する。すると、怪鳥もまた空中で移動する。
なるほどとディアスは思った。
飛べないディアスにはこの怪鳥の相手が不可能に近いとも。
だが、まだ可能性はある。
どちらにしろ、この怪鳥は倒さなくてはならない。
そしてレッドバードは一気に下降し、ディアスの方へと体当たりしてくる。
「そっちから来てくれるたあ、ありがたいことだぜ」
ディアスは剣をしっかりと持ち、レッドバードの素早い動きをじっくりと見る。
ぶつかる直前まで。
そして、タイミングを見計らい、体当たりを避けながら剣を下す。
だが――
「だめだ」
ディアスはそうぼやいた。直撃はした。だが、そこまでのダメージは与えられていない。素早過ぎて、かすっただけになってしまったのだ。
狙いを研ぎ澄ましたとしても、あの猛スピードの前では攻撃を芯で当てることなど不可能だ。
となれば、当てる方策は一つ。
動きを鈍らせるしかない。
「オルフィ、奴のスピードを削る方法はあるか?」
「分かんない。リスリィならできるのかも……」
「ああ、そうだな。でも、ここにリスリィはいない」
「うん、だから私が方法を見つけるしかない」
「分かってるじゃねえか! オルフィ……じゃあ、これはできるか?」
そう言ってディアスはレッドバードを指さす。
「あれを、凍らせるってのは」
レッドバードの行動の元は主に翼となる。今、ディアスが思っていることは、そこ翼を凍らせてしまうという事だ。
そうすることで、自慢の速度を落とそうという狙いだ。
「初めてだけど、やってみる」
オルフィはそう呟き、手元に氷を集める。
初めての試みだからか、氷が集まる速度が遅い。
だが、もうこれはオルフィを信じるしかない。
それ以外にレッドバードを断ち切る方法などないのだから。
レッドバードは警戒のそぶりを見せている。オルフィの氷魔法を警戒しているのだろう。
本来なら警戒中に逃げ切れればいいのだが、奴の目を見ればそれは不可能であることは重々わかる。
どちらにしろ、こちらがやられるだけなのだから。
ディアスは挑発とばかりに、自分の背中に背負ってあるカバンから小型銃を取りだす。そしてそれを一気に、発射した。
その銃はレッドバートに向かって飛んでいき、ぶつかる。
レッドバードは攻撃を喰らってもなお、平気そうだった。
そりゃそうだ。こんなもの小道具。物に魔力を載せるなんて技術は確立されていない。
だからこそ、そこまでの火力は出ないのだ。
だが、レッドバードはそれを受け、ディアスの方へと向かって行く。
注意を引き寄せられたら成功だ。
向かってくるレッドバード。それに向かい、オルフィが氷を放つ、
「ぎゃりゅうううううううう」
その攻撃を受け、翼が凍る。
そして空へと逃げ出そうとするが、明らかにスピードが遅くなっている。
そんなレッドバードの翼をディアスは一気に斬り切った。
「はあはあ、リスリィがいなくても俺はやれるんだ」
そう、ディアスは空へと向け、叫んだ。
だが、そこにオルフィが一言叫ぶ。
「危ない!!!」
「は?」
ディアスは振り向く。するとそこにはレッドバードがいた。
翼は完全にもぎ取ったはずなのに。
ディアスは振り向き攻撃を受けようとするが間に合わなかった。
爪の一撃を食らってしまった。
「ぐああ」
そして倒れ込むディアスに対して次々と激しい攻撃が加えられていく。
ディアスはその攻撃に対して受け身を取ることしか出来ない。
(くそ、これじゃあ)
その鳴りやまない攻撃の嵐にディアスは完全に抵抗する術を失ってしまった。
「ディアス……助ける!!」
そう呟いたオルフィは、火の魔法を操り、「食らって!!」
そう言って放った。その攻撃で、レッドバードが一瞬たじろぐ。その隙にディアスは勢い脱出した。
「はあはあ、オルフィ助かった」
ディアスはそう言ってレッドバードに振り返る。
「回復する!」
そう言ってオルフィはディアスの体力をどんどん回復させていく。
そして、体力が中くらいに回復しきった時にディアスは「もう大丈夫だ」と言ってオルフィの肩をぽんっと叩いた。
そのまま剣を抜き、レッドバードの肉体を切り破った。
「はあはあ、今度こそ大丈夫だよな……?」
「……たぶん。……でも、」
オルフィはレッドバードに対してゼロ距離で炎魔法を放ち、その炎を受けレッドバードの肉体は燃え盛る。
「これで、大丈夫」
「容赦ないな」
「だって、魔物だもん」
そのオルフィの目は冷たい感じがした。
そのまま二人は隣村まで行く。およそ片道一時間半の距離だ。
「着いたぞー!!!!」
ディアスは叫んだ。
「うるさい……」
そのバカでかい声に、オルフィは耳を塞いだ。
「悪かったな。でも、これでリスリィがいなくてもやれるってことが証明できたからな」
「ディアスはリスリィに固執するんだね……」
「そりゃそうだろ。あいつに助けられっぱなしだからな」
とはいえ、あの程度の魔物。リスリィなら簡単に倒すんだろうなと、ディアスは思った。
実際にあのレベルの魔物をリスリィは300年前に倒してる。しかも旅の2日目に。
だが、二人にはそれを知る術は無い、




