第二十一話 大魔王の力
その魔弾が当たり、魔物達は皆消滅した。やはりなかなかの超火力だ。これで当面私達は死ぬことなんて無いだろう。
今の私に勝てる存在なんて魔王くらいなものだろうと思うのだから。
しかし、この力をいつまでも使っていられるわけではない。
使えば使うほどせっかく抑えた闇の、邪悪な魔力が濃くなる。そしてそれが薄くなるまで時間がかかる。
私の読みでは五分が限度だろう。それ以上やると、短時間では魔力から邪悪さが消えて無くならない。
「久しぶりの全力……楽しいわ!! えい!」
先ほどまで苦戦してたモブ魔物達が短時間で吹き飛んでいく。
なんて快感なんだろう。
だけど、うかうかもしてられない。さっさと脱出しないと。
魔物達を次々に魔法で消滅させ、物理で捻り潰す。
もう、私の障害になる魔物など、一匹たりとも存在しない。
そうしてようやく洞窟から脱出出来た。
「はあはあ」
しかし、息切れが激しい。
久しぶりの闇の魔力の行使で、体力が無くなっていく。体が久しぶりの力の行使に慣れきっていないのだろう。
しかし前よりも、ラベンヌ戦よりも強くなってる。
戦闘能力、魔素のコントロール全てが向上したからだろうか。
そして、上を見る。
ラベルが飛んでいた。
「まさか、あそこから脱出できるとは。しかも仲間を守りながら。……見事だリスリィよ」
そう言って拍手してくるラベル。
「御託は良い。私には時間がないの」
岩壁を作り出し、それを蹴り、ラベルの元へと飛ぶ。
「ははは、なんていうスピードだ。だけど、それが甘い」
眼下に沢山の魔物が見える。
守っている隙に逃走しようという事だろう。
「なめないで」
私は下に向け、沢山の魔弾を放つ。
その魔弾が弾け、眼下の魔物達は皆消滅していく。
「はは、これはすごいな」
「あくまでも追い詰めてるのは私なんだけど」
「知っているさ」
その直後、私の体の中からたくさんの邪気があふれ出す。まずい、これ以上使ったら……
「そろそろ、タイムリミットだろ?」
確かにこれ以上魔力を使っては戻れなくなる。
大魔王の器であることがばれてしまう。
私はお尋ね者になってしまう。
「分かったわ。今日は大人しくあなたが逃げるのを見ているわ。でも、次はこうはいかないから」
「そうだなあ、だが、私は今日お前を滅ぼしたかった。それを滅ぼせなかったという時点でお前の勝ちだ」
そう言ってラベルは飛び立っていった。負け惜しみとばかりに、魔弾を飛ばすが、軽く跳ねのけられてしまった。
別に褒められても嬉しくないんだけど、
ラベルをしとめきれなかった時点で、私の負けなのだから。
「それで、ここからどうしよう」
任務を続行するか否か。とはいえ、もう洞窟中にはもう魔物はいないだろう。
私をしとめるために、全員使ったはずだ。
さて、とりあえず、今二人に起きられたら困る。
二人に睡眠魔法をかけ、私も眠ろう。
そして明日念のために洞窟のおくに行って全滅を確認したら依頼完了だろう。
私は、背中にあるキャンプ用具を使い、テントを立てて、そこで、ご飯を食べる。
そこらへんで私の中の闇の魔力がようやく、無くなってきて、ラベルの魔力の残り香と言っても信用されるだろう程になって来た。
だが、ここから完全に邪悪な魔力が消滅するまでにはまだ時間がかかっていくのだろう。どちらにしろ、今二人が起きたらまずいことは変わらない。
さて、本当に今日は疲れた。
魔物を警戒して、香水を撒いてっと。
「お休み」
『リスリィ、リスリィよ』
この声は、大魔王か?
『久々に我の力を使ったか。上出来だ』
なんだかムカつくなあ。
『ムカつくか、貴様こそ我の力を借りているだけのくせして』
それは関係ないわよ。
『まあ、それはさておき、本題を話そうか。貴様は今の二人と一緒にいるのは望ましくない。提言する。リスリィ、お前は早く人間を捨て、ラベルというやつと一緒に魔族の国を作るのだ。勿論アスティス王国にいる魔王ラメンダメルクを宿している青年ラヌアスや、魔王ウラハヌスを宿す少女、レイアと一緒に作ってもいい』
何を言ってるの?
て言うか、魔王の魂を宿しているのは私だけじゃないの?
『それが貴様のためだからだ。人間はすぐに裏切るクズだ。お前はそこにいてはすぐに裏切られ、絶望することになる。これは絶対だ』
何よ、そんな決めつけて。私の仲間たちを信じてよ。
『確かに今は上手く行っているように見える。だが、それはあくまで表面だけ、火柄は瓦解する。人間とは多数派に行きたがるものだ。お前が危機に陥ったときには助けてくれないだろう。忠告したからな。ゆめゆめ忘れるな、お前の命は我の命でもあるという事を』
そう呟くと、大魔王リスタルは姿を消した。
「おい、リスリィ、おい! リスリィ!」
そう私をおびただしく呼ぶ声によって、私の目は覚めた。一体何直だろうか、
おぼろげに映る私の視界にはディアスがいた。
「どういうことだよ、これは」
「ん、とね」
ああ、まだ意識が上手く回復してない。
「ちょっと待っててね」
なんだか頭が痛い。
「そもそもリスリィ、お前大丈夫なのか? 顔が赤いぞ」
「え?」
確かになんとなくだるい。
このだるさ。これは、即座にわかる。私は風邪だ。
「しかし、お前本当にさ」
そうディアスがため息をついた。
「なんで、こんなところで風邪になるんだよ。俺たち動けねえじゃねえか」
「それは本当にごめんって思ってるんだけど……」
「思ってるんだけど?」
「私がいなかったら皆洞窟の中で倒れてたかもしれないんだよ」
「そう言われたら困るが、風邪ひくのも困るな」
「まあ、どっちもどっちってことで」
「たくっ」
ああでも、結構来てる。
やっぱりしんどいな。絶対に、闇の魔力を使ったからじゃん。
大魔王リスタルの力、使えないなあ。なんか、意味深なこと言ってたし。
とりあえず、私は急いで体調を直さないと、いつまでもここから出れないし、この情報をラベルが訊きつけて、こちらに来たら今度こそ勝てない。
それに、食料も持たないかもしれない。
「リスリィ……大丈夫?」
そう、オルフィが来た。
「大丈夫じゃないかも。ごめんね」
「大丈夫。私が変に突っ込んだから……無理してくれたんだよね。ありがと」
「う、うん」
オルフィはディアスに比べていい子だ。
「ねえ、オルフィ。オルフィはやっぱり許せなかったの?」
村の斬撃の事だ。私よりも早くに動き出し、そして怒りを感じていた。軽く魔物に恨みがある敵な事は言っていたが、ここまで怒りを持っているとは思っていなかった。
「私の過去が訊きたいの?」
「……無理にとは言わないけど」
そりゃ、しんどい過去だ。話したくないようなこともあるだろう。
「ごめん、言いたくない。辛いから」
「そう、ごめんね。変な事訊いちゃって」
「別にいいよ。あ、これ」
そう言ってオルフィは私の隣に、水と簡単な食料を置いた。
「食べたいときに食べて」
「うん、ありがと」
そして、オルフィは裏へと戻っていった。
オルフィは本当に優しい。そう私は思った。
その後、私はご飯を食べ、寝転がる。
本当にどういう事なんだろう。普通に考えたら、人間が許せない云々から出てきているんだろうけど。確かに私も裏切られたけど、あそこまで言うほどかなあ。
分かんないあ。
大魔王リスタルは勇者ラスカルによって討伐された。
だからこそ、怒りに満ち溢れているのだろうか。
でも、私も同様に裏切られたみたいに言っていた。という事は、人間と一緒に魔王達を討伐していき、その過程でラスカルに裏切られたというのが通説か。
英雄剣についても気になる。あれはラベンヌは実際は大魔王の剣だとは知らなそうだった。そしてそれはレオニスも。
やっぱりわからない事ばかりだ。
「っ!」
考えことしてたら熱がぶり返した。
これはもう駄目だ。とりあえず寝よう。寝てから次のことは考えなきゃ。




