第二十話 洞窟の中へ
そのまま、ラベルを警戒しながら、洞窟の中に入る。
もはや先に走って行ってしまったディアスとははぐれてしまった。合流する術などない。
オルフィもそうだけど、ディアスも回収しなければいけない。
入口がやや狭く、恐ろしい感じがする。中に入ったら戻ってこれなさそうな嫌な感じだ。しかも中には瘴気があふれている。これはオルフィやディアスにとっては毒になるくらいの量だ。警戒も必要だけど、スピードも必要だ。
洞窟の中を進んでいくと、ある一つの空洞がある空間に出た。
とりあえず狭い道から広い道に進み安心した。だが、経験上、ここから先へと進んだら、出入り口が防がれたりして変なことになるかもしれない。
……ラベルを警戒しすぎか?
いや、これくらい警戒しないと、また奴のいいようにされてしまう。
そこをひたすらに進むと、また狭い道に出る。感覚がバグってくる。
だって、広い道から狭い道に戻ってくるんだもん。それにまだ魔物も一体も出ていない。こうなっては確実に恐怖が襲ってくる。
何しろ、いつ魔物が襲い掛かってくるのか分からないし、いつ罠が出てくるのかも分からない。
ただ、村を襲った魔物がこの洞窟の中にいるというのは、状況や依頼書から考えて確定事項なんだけど。
さて、魔物は出てこないが、一応、念のために魔力の渦は作り、上からの投石や、洞窟の崩壊に備えている。
もし、岩が落ちてきたときには、私の魔力で支えるという物だ。
ただ、勿論闇が関係してないから、そこまでは強くはない。
しかし、洞窟の中も中々の距離を歩くなあ。
しかも、まだディアスにもオルフィにも出会えていない。
もうすでに二人ともやられてたり……
ううん、そんな事は考えたらだめだ。まだ生きている。そうに決まっている。
暗く、狭い空間を長く進みすぎて、マイナス思考に入ってしまっている。
段々道が枝分かれしていっている。このままじゃ、どこを歩けば出口にたどり着くのかも分からなくなってくる。
どこが正しき道か、そんなの分かりっこない。だが、奥へと続いてそうな道をとにかく探っていく。
そうして。三十分後、倒れ込んでいるオルフィを発見した。ぐったりと倒れている。
「オルフィ大丈夫?」
目の前に魔物の死体がある。という事は、オルフィは魔物の襲撃を受け、一人で相手したが、最終的には魔力切れを起こして倒れ込んでいるという訳か。
私は警戒しながらオルフィに近づいていく。
もしあのラベルが関わっていたら、倒れ込んでいるオルフィをこのまま放置するわけがない。近づいたら爆発する仕組みとかあっても不思議じゃないだろう。
「触れる」
私の手がオルフィに触れても何ともない。しかも彼女も生きているし、ちゃんと人間の魔力、魔素ををしている。偽物でもなさそうだ。
となれば、奴は今回の件に何も関係がしていないという事か。
私がオルフィの体を触っても何ともないし、そもそもオルフィを人質に何か脅すことなんてあいつなら普通にやるだろう。
という事は、今回の件に、ラベルは関係がないという感じか。
「オルフィ、大丈夫?」
そう言って私はオルフィに回復魔法をかけていく。
「ん、リスリィ?」
「うん、私だよ。体に異常はない?」
「うん……大丈夫」
そう言った瞬間に、オルフィは思い切り血を吐いた。
「はあ、なにこれ」
オルフィは呟く。本当に意味が分からない。
もう一度オルフィの体を探る。すると、そこには呪い紋がついていた。
「なるほど、そう言う事ね」
その瞬間、上から岩が降ってくる。あの時と一緒だ。
一瞬油断しかけた隙をついて攻撃してくる。ラベルならやりそうだ。
だけど、甘い。警戒は解いていない。
魔力で岩を支える。
「さてと、ここからすべきことは」
私ではこの呪い紋は解けない。
となればディアスを回収して急いで王都に戻る?
ラベル(仮)め、余計な事をしてくれた。
「うぅ」
その時、私の口が血の味に染まる。
まさかこれは、周りにも影響を及ぼすのか。
呪いは周りへと移り行き、私の体もむしばみ始めたというのか。
これは厄介だ。非常にまずい。
だが、そう思ったその瞬間、私の体の異変は治まった。理由なんてすぐに分かる。
大魔王リスタル、奴が関与しているのだろう。
一瞬闇の魔力がぶわっと放出されたが、幸いここは洞窟。オルフィも気絶をしているし、ディアスにさえ気づかれなかったら大丈夫だ。
そして、私の胸あたりから、ラベルが飛び出してきた。
「まさか、お前は大魔王の」
そうラベルが呟いた。
「生きていたのですか。リスタルの魂よ。……そうなれば私は今ここで貴様をやれないという事か。……リスリィ、お前は大魔王の魂を有しながら、人間の味方をするというのですか?」
「ええ、勿論よ」
「ふん、そうか。……くだらない。人間などという下種の味方をして。奴らは醜悪だ、貴様がそうと分かればすぐに殺されるますよ」
「私は殺される気なんてありません」
「それは奢りか? いいだろう、冥途の土産として聞かせてあげましょう。わたしは、私の妹は人間にさらわれ行方知らずだ。それが許せないのだ。最後の忠告です、貴方は人間ごときを裏切り、私の元へと来る気はありませんか?」
「まったくないです」
「そうですか。ならこれならどうですか?」
そこにはディアスがいた。
「彼はあなたの大事な人間でしょう。助けてあげることがでぉますか?」
ラベルがそう言うと同時に魔物がディアスの元へと向かう。
くそ、周りにこんなにもの魔物がいるなんて。
しかも、私は見逃さなかった。ラベルが逃走する前に沢山の魔物を召喚して行ったことを。元からいた魔物と、ディアスが召喚した魔物か。中々厳しい戦いになりそうだ。
私は倒れ込むオルフィとディアスを守りながら、周りの魔物と戦う。
皆雑魚の様な物だが、中々削れない。
オルフィの傷は何とか塞がっているが、それでも二人を抱え、個々の魔物達を倒さなければならないとなれば、中々の重労働だ。
これは、依頼どころの話じゃない、生き残れるか、生き残らないかの話だ。
私には二人を置いていくなんて選択肢はない。二人が殺されてしまったら、私の負けだ。
ラベルめ、私の動向を把握してるんじゃないだろうか。
本当に行く先々で邪魔をしてくるし。
もはやこうなったら依頼を遂行などできない。依頼を放棄してとりあえずは逃げる一択だ。
あくまでも私一人ならここの魔物達をたやすく全滅させ、洞窟から脱出することが出来るが、その場合二人を犠牲にしなければならない。
それは先ほど言った通り負けだ。
この村占領自体が恐らくは、私たちをおびき寄せる罠だ。
ここに誘い込まれた時点で、私達は不利な状況に陥ってしまっている。
だあ、ここからでも逆転の言っては存在する。
運良くラベルが逃走成功する前に捕まえることができれば大勝利だ。
「私がこの程度でやられるか」
ここで、私は一つの可能性に気づいた。
今は魔物を大量に撃退するすべはない。
だが、今はオルフィもディアスも気絶している。となれば、私は闇の、大魔王の力を使えるのでは?
使ったあと暫く闇の魔力が出る。邪悪なオーラが出る。
でも、それはすぐに抑えられる。長時間使わなければ、大丈夫だろう。
周りに誰もいない今がチャンス。
今こそ大魔王リスタルの力を借りよう。
「行くよ」
私の体からおぞましい魔力が出た。
だが、この力懐かしい。これさえあれば私は二人を守りながら戦える。
「そこをどいて!!」
私は魔物達に向け、魔弾を発射した。




