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第十一話 敵襲――私が活躍する時だ

 ゴブリン

 やっぱり変わってないなあ。

 このくらいの魔物なら変なことが無かったら倒せるけど……三〇〇年経った今の状況がどうなっているか分からない。


 そもそも、この時代では魔物と一度も戦ったことがない。

 もしかしたら変に強大化している時かもしれない。


「まずは俺が切り込むぜ!!」


 そう言ったディアスが向かってくる。

 その剣がコブリンの腕にぶつかる。だが、ゴブリンはゴブリンで、魔素を集中させ、腕を硬化させる。そして数回攻防が繰り広げられる。

 しかし、コブリンのくせに、魔素を使えるのか、ということは、覚醒前の私よりも強い可能性だってある。

 魔物のレベルは、明らかにあの時代よりも上がっているなと感じる。


(助けに行っていいかな)


 やっぱりこの魔物達は強くない。

 余裕で勝てそうな感じがする。だが、ディアスは苦戦している。

 まあ、一応チーム力が試されるし、とりあえず魔法で援護しておくか。


「はあ! ファイヤ―ボール!!」


 炎の球を作る。大きさはこのくらいで大丈夫かな。後は、よし!


 そしてぶつける。その威力でゴブリンはあっさりと消滅した。それと同時に私たちの端末に後二という文字が出てきた。

 これが、0になったらテスト終了という事だろう。


「おい、てめえ」


 そんな時、ディアスが私に向かってくる。

 どうしたのだろうか。

 感じ的に怒っていそうだ。


「なんで、なんで俺の獲物を取った」


 そう首を掴まれた。ああ、こいつ一人で倒したかったのか。

 これはチーム戦の試験なのにさ。


「なんでって、私達チームでしょ?」

「そうだが、獲物を奪うなよ」


 なんて我儘な。そんなんじゃ、社会生きていけないと思う。


「ふざけるなよ。本当に」

「私のこと雑魚とか言ってたくせに、私がゴブリンを倒せたことにはノーコメントなんだね」

「は!? それとこれは別だ。俺はお前に謝ってほしいわけじゃない。ただ、邪魔しないでほしいだけなんだ」

「喧嘩は……行けないよ……」


 そう、必死になって私たちの喧嘩(ディアスが一方的に突っかかってきてるだけ)を止めようとする。

 その健気さに毒素が抜けたのか、


「悪かったな。とりあえず、手は出すな。せいぜいオルフィだけだ。リスリィお前は生理的に無理だ」


 そう、ディアスは手を離した。

 はあ、これだから短気は困るね。

 ていうかこれ、私告白してないのに振られてるみたいになってるんじゃ。


 そして次のゴブリンが現れた。ディアスの希望によりこちらは見守るだけにした。


 先程の戦闘で分かった。やっぱり私はそこそこ強い。ゴブリンのレベルは上がってはいるものの、それでも雑魚の域を超えていない。本気でやれば三体どころか、この区域にいるゴブリンを全滅させることもできるだろう。


 本当に殲滅したい。オルフィのサポートありでもディアスは苦戦してるみたいだし。

 そもそもこれ自体、苦戦するように作られてはないと思うんだけど。

 だけどそれじゃあまたディアスにどやされてしまう。今はつまらなくても、時間が経つのを待っていたほうがいい。


 それにそれは地味な仕返しだ。ディアスにはこのまま苦戦してもらって、私の受けた悪口の借りを返してやる。

 そしてディアスの戦いを見ること暫し、中々戦闘が終わらない。

 オルフィのヒールは大丈夫なようで、回復しながら戦ってはいるが、中々ゴブリン相手に決定打が出ない。


 あれ、いきってた割にはこの人弱いんじゃ……

 そう思い始めてきた。

 私の方が明らかに強い。

 

 ちなみにこの試験、先生が言っていた通り制限時間は決められており、二時間だ。

 今の携帯端末の時間は残り一時間二〇分となっている。


 流石に制限時間切れまで倒せないなんてことはないと思うが、こんな様子じゃあ、つまらなくて本当欠伸が出る。

 とりあえずやることのない私は床にペタンと座る。

 もう寝ようかしら。そうとまで思ってしまう。


「おい、お前も手伝え」


 そう言われた。


「私の力はいらないんじゃなかったの?」

「いや、必要なことが今わかった。俺を手伝ってくれ」

「分かった」


 ついにプライドも捨てたか。


「足を引っ張るなとか言ってたくせに」

「うるせえ。やるぞ」


 ディアスは私の手をつかみながら、足音を大きくたて、ゴブリンのもとに行く。

 イラついてるじゃん。


「あれ?」


 極太い闇の瘴気を感じる。

 この瘴気はまずい、かなりの強さだ。今は二人とも気付いていないだろうが、この瘴気は吸えば命に係わる。


 それに、たぶん、まだディアスもオルフィも気づいていない。

 これは、ただ、身体をむしばむだけじゃない。

 これは、確実に来る。強大な魔物が、ここに。

 その身に宿す闇の瘴気は魔王クラスとは言わないまでも、魔王場の魔物に等しい。

 しかもこれは、キルキランダレベルの実力者が来る可能性もある。


 たしかあの魔物達はそれぞれが強かった。レッサージャガー、は私も苦戦した。

 今回の魔物はどうなのかは分からないが、それくらいの瘴気はある。


「ディアス、戦いはいいから逃げて!」


 私は叫ぶ。こんな強い魔物が来たら、試験レベルの話じゃない。


「はあ、なに言ってんだ」

「いいから!」

「お前、また変なこと言ってんじゃねえよ!!!」


 全くこの馬鹿は、事態の深刻さに気が付いていないらしい。

 それにディアスだけじゃない、やっぱり他の人も気が付いていない可能性が高い。

 何とか方法を探らねば。

 そんな時、軽い地響きが起こった。


「何だあ!!」


 ディアスは叫ぶ。その瞬間、携帯端末に通知が来た。


『試験は中止、全学生に次ぐ。今すぐ逃げろ。強大な魔物が迫っている』


 そう言った内容のメールが来た。

 よかった。先生はちゃんと気づいていたようだ。

 そうそう、試験なんてしてる場合じゃない。全員退避しなければ。


「おい! 逃げるぞ!!!」


 ディアスが叫ぶ。

 私の時は信じてなかったじゃんか。

 なんで急にリーダーずらしてんの?

 ムカつく。

 まあでも、命は惜しいので、逃げる。

 私でも、勝てると思うが、闇が使えない以上、先生方に任せた方が良いだろう。

 いい結果につながるだろう。

 だが、その瞬間、目の前に一体の獅子が来た。 その魔物が身にまとっている魔素の量。禍々しいくらいの量だ。

 魔王城にいた魔物レベルの実力がある。勝てるとは思うけど……厳しい戦いになりそうだ。

 目の前にだ。


 見た目は一瞬レッサージャガーか? と一瞬思ったが、それにしてはおかしい。これは、金色だ。名前は分からないが、名づけるなら、ゴールドジャガーとでも言おうか。とりあえずこいつはやばい、この二人では戦えない。それどころか、闇魔法が使えない、私もまずいかもしれない。


「っくそ、どうしたらいいんだ」


 ディアスがぼやく。

 だけど、もう逃げるという選択肢なんてない。戦うしかない。



「私がやる!!」

 そう言って、地面を蹴ってゴールドジャガーに向かって行く。


「おい! 危険だ」

「大丈夫! 私強いから」


 早速、体を魔素で覆い、攻撃のタイミングで、剣先に魔素を集中させる。闇が無くても、魔力の使い方で、戦える。

 

 よし、行ける。久しぶりの実戦だけど、体は訛ってはいないようだ。

 その勢いで、剣でゴールドジャガーを斬り裂こうと、剣を振るう。

 だけど、真剣になりすぎてはいけない。

 久しぶりの実戦だ。楽しんでいこう。


 それに、私の今の仕事は単なる時間稼ぎだ。

 倒すのは先生方に任せればいい。別にここで倒す必要なんてないのだ。


 ゴールドジャガーは、体を同じく魔素で覆い、私の攻撃皮膚で防ぐ。やっぱり闇を使わないと、火力不足か。


 私自身で魔素を生み出すには、闇が必要だ。勿論それをすれば、邪悪な魔力を生み出したとして、大魔王の器というのがばれてしまう。


 私の顔写真が残っていないだけ。

 今封印されているはずの大魔王の魔力を感知すれば、即座に捉えられ、再び封印されるだろう。


 ああ、なんていう制約だ。

 思い切り闇の力を使いたい、だけど使えない。

 そして私は火力不足の代償として、首を魔素で覆い、硬化させたゴールドジャガーの反撃により、私は弾き飛ばされた。


「なるほど」

「おい、リスリィ!」

「うるさい!」


 戦闘に全神経を集中させたい。

 周りの声なんて気にしていられない。

 気を抜いたらやられてしまいそうだ。


「はあ!」


 炎の弾丸を複数個ゴールドジャガーに向けて放つ。

 魔王に比べたらこんな魔物ただの塵芥だ。

 本気が出せなくても、敗れる道理などない。

 だが、ゴールドジャガーは、またしても体を硬化させ、その攻撃を防いだ。

 だけど、全て計算済み。


「スモッグ!!」


 周りに煙をまき散らす。

 魔法講義で習った技だ。

 煙でどこから来るかを分からなくさせてから……


「落ちろ、サンダー!!!」


 雷を頭上から落とす。これで、終われ!!


「ぐるうううううう」


 その瞬間、ゴールドジャガーがオルフィの方にとびかかってきた。

 しまった、まさかそっちに行くとは予想外だった。


「え、嘘!?」


 今私は完全に、ゴールドジャガーがやられたかどうかにしか、注視していなかった。


「え……やだ」


 オルフィを守らなきゃ。


「えい!」


 私はオルフィの体を抱きしめた。それと同時に背中に魔素を集中させる。


「オルフィはやらせない!!!」


 だが、魔素が集まるのが少し遅かった。


「っ痛」


 背中に激痛が走る。

 間に合わなかったか。


 だけど、ただでやられる私ではない。即座に後ろに体をひねり、魔素を込めた拳でゴールドジャガーの腹を殴る。


「痛いじゃないの!!!」


 背中からぽとぽとと血が出ている。

 っくそ、段々体力が奪われていく。

 だけど、魔王と戦った時の傷はこんなものじゃなかった。


「このくらいでやられるかああ」


 拳でゴールドジャガーを地面に叩きつけ、その命を奪う。


「回復……します!」


 そうオルフィが言い、私の背中を触りながら、回復魔法をかける。

 するとその効果で傷が少しずつ治っていった。

 全快まではいかないけど、とりあえず血は止まった。

 これでまだ動ける。


「他のところはどうなってるんだろう……」


 そう言って私は森の中に入り込もうとする。


「待て!」


 ディアスがそう叫ぶ。私を引き留めるように。


「お前も逃げろよ」

「だめよ。他のみんながどうなってるか分からないんだから、助けに行かないと」

「お前が戦う必要はねえじゃねえか」


 確かにそうだ。他のみんなももう試験官の先生方に助けられているかもしれないし、もし私が助ける過程で死んだら元も子もない。

 それにこの世界は、私が生きてた世界とは違う。何の思い出もない。

 それに今は人減を完全には信用できない。助けた結果また封印される可能性だってある。

 そして、助ける際に闇の魔力が漏れ出して、私が大魔王の器だって、ばれてしまうかもしれない。

 ただ、


 このタイミングでの襲撃、私が関係している可能性もある。

 だって、私が試験を受けているタイミングでたまたまこんなに魔物が来ることがある?

 そう、偶然にしては出来過ぎている。

 誰かが仕組んだように

 なら、みすみす放っておくわけには行かない。


「私が助ける」


 そう言って地面を蹴り、森の中に入っていく。

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