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第61話 目覚め

わふわふわふ、はっはっはっ


はじまったわ。と、タリアは思った。

また、である。


毎朝アルボが顔を、特に口元を舐めに来るのだ。


この白犬は、朝ご飯の時間に非常にうるさい。

タリアが起きて、ご飯を与えるまで決して舐めるのをやめない。


非常に賢く愛らしい犬であったが、この点にだけは困っているのだ。

前に、村の狩人の叔父さんに相談したところ、「甘く育っちまったな、もう無理だべ」と言われたので、あきらめて受け入れているのだが。


それにしても、この子は布団をかぶっても鼻から突っ込んでくるし、顔を舐めることが出来ないときは髪でも耳でもなんでも容赦しない。

アルボは朝ご飯を与えるまでは絶対にやめない。

これはタリアの心に刻まれた不文律である。


思えば、カリナがいた時はよかった。

二人に分散されていたから。

くすぐったがりのカリナはすぐに降参して起き出し、アルボにご飯をあげていた。


ルチが家にいた時もよかった。

ルチは時間通りきっちりとご飯をあげてくれたからとてもよかったのだ。

その場合、アルボは時間通りに食事を出したルチに感謝し舐める。

結局舐めるのだ。

彼は妹と同じくくすぐったがりで、舐められるたびに大騒ぎしていたので毎朝うるさかったが、ルチが居た時間は、アルボにとってもタリアにとっても実に良い時間であった。


カリナが去り、ルチが去った後、特にアルボと二人で旅をするようになってから、朝ご飯出すまでの顔舐めは、完全にタリアだけを標的にするようになった。


それはハイランドで過ごすようになってからも変わらなかった。

アルボ、おねがい、かんべんしてえええええええ


彼はタリアが起きるまで舐めて舐めて舐める。

舐めるのをやめてまた舐める。


(わがった、おぎるう、おぎるから……)


タリアは仕方なく、体を起こそうとするとなんと体が起きない。

身体が重く、起こすことが出来なかったのだ。


そして胸に痛みが走る。


(痛ったい……なんなのこれ)


「あ…う…い……」


声を出そうとしたが声も出ない、どうしてしまったのわたしは……


「わん!わん!わん!」


アルボが尋常ではない様子で吠える。


まるで猪を見つけた時のように激しく吠える。


(だめよ、アルボ近所迷惑になっちゃうから)

え、餌はどこ……干し肉……かばんに入ってたはず、ああ、ベッドの横の棚かも……餌あげないと……


そんなに吠えなくても……声が大きいよ、アルボ……

動けない……痛い……

起きなきゃ、起きなきゃ……


「わん!わん!わん!」

すると、人がやって来る。


「なになにどうしたのアルボ~どうしたの~」


誰か女の人の声だ。


「あ……う……」

声をかけようにも声が出ない。

起きなきゃ……ごめんなさい、騒いじゃって、アルボ……おとなしくして……


「あっ!タリア様!タリア様!」


「ううう……」


「タリア様がお目覚めになりました!ソフィア様!だれか!タリア様がお目覚めです!」

バタバタと走る音がうっすら聞こえる。


「タリア様がお目覚めになりました!すぐに先生を呼んでください!皆に知らせてください!」


騒がしいわ……ああ、眠れない……


「わん!わん!わん!」


アルボ……容赦ないわね……

わたし、だめ、身体が痛くて動かないの……


「タリア!タリア!」

ソフィア先生だ。

ああ、ソフィア先生……先生は顔を舐めませんよね……先生……アルボに餌を、干し肉あげてください……

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