今日の声は聞いてないから
「あやじん/怪異ウェブメディア」が「怪異専門ウェブメディアあやじん・公開編集会議スペース」をホストしました。
このスペースではトランスクリプション(文字起こし)が有効です。ホストがこれを設定できます。
あやじん/怪異ウェブメディア
はい。こんばんは。
桐谷きょう
こんばんはー。聞こえてますか。
あやじん/怪異ウェブメディア
聞こえてるよ。
桐谷きょう
ここちょっと電波悪いかもしれなくて。聞こえてる?
あやじん/怪異ウェブメディア
早速の現地感。
桐谷きょう
ちょっと遅れてます? 私の声クリアに聞こえますか。私の声は?
あやじん/怪異ウェブメディア
大丈夫だよ。
桐谷きょう
やっぱちょっと時間差ありそうですかね。ここ窓際っていうか、ほぼ窓の外いかないと電波ないんですよ。いま窓枠に座ってます。あはは。
あやじん/怪異ウェブメディア
無意味に高いところに登りたがる女。
桐谷きょう
二階ですよ。
あやじん/怪異ウェブメディア
二階は高いよ。配信中に落ちたりしないでね。あ、ダブルミーニングだ。
桐谷きょう
物理では落ちないように頑張ります。風は良い感じで気持ちいいんですが。お尻は痛い。あはははは。
あやじん/怪異ウェブメディア
物理ならあなたは丈夫だから、むしろ物理でない方に注意をして欲しい。まあいいや、ええ、では、怪異専門ウェブメディア綾じんの公開編集会議スペースをはじめます。今日は編集長をしています、私、夢洲桜と、階段収集家でライターの桐谷京さんの二人でお送りします。
桐谷きょう
お願いしまーす。
あやじん/怪異ウェブメディア
もう三十人くらい聞いてくれてますね。ありがとうございます。今日は桐谷さんが、現地に行っていて、その速報を聞いていきます。昨日の夜から現地入りですね。
桐谷きょう
はい。■■県の■■■というところで、東京から飛行機乗ってバス乗って、またバス乗って、十時間。ついたら夜でした。
あやじん/怪異ウェブメディア
朝、早かったよね。起きたらもういなかった。
桐谷きょう
移動中爆燃でした。
あやじん/怪異ウェブメディア
なんて?
桐谷きょう
めちゃめちゃ寝てました。バスとかで。
あやじん/怪異ウェブメディア
ああ。というか。ごめんそういえば思い出した、いきなり配信とは関係のない話なんだけど。今日勝手に頼んだでしょう。アマゾン。
桐谷きょう
ああ。届きました? アレクサの。
あやじん/怪異ウェブメディア
さっき。私宛になってたから開けちゃったよ。
桐谷きょう
桜さんのですからね。私がいない間それで買い物とかしてください。使えました?
あやじん/怪異ウェブメディア
まだ試してはいない。
桐谷きょう
ちゃんと使ってくださいよ。
あやじん/怪異ウェブメディア
よく分からないんだけれど。これで買い物できるの。はい。え。購入したい商品を教えてください。あ、この子喋っているよ。
桐谷きょう
食べ物とか。買ってもすぐ桜さん全部食べちゃうじゃないですか。それに言っといたら届きますよ。アレクサ、鶏肉。鶏モモ。2キロ。って言ってください。
あやじん/怪異ウェブメディア
アレクサ、鶏モモ。2キロ。国産鶏もも肉2キログラム業務用、二五〇〇円、が見つかりました。購入しますか。え勝手に買わないで。キロで買うの?
桐谷きょう
キロで買っても一瞬で食べちゃうじゃないですか。
あやじん/怪異ウェブメディア
そんな私食べてるかな。
桐谷きょう
食べてますよ。いやだって、あやじん入るとき、桜さんの食事の用意もするんですって言われてて、それは知ってたけど物理もかよって、はるちゃん言ってましたよ。私が桜さんのご飯作ってるって言ったら。
あやじん/怪異ウェブメディア
口直しがしたくなるんだよ。さっぱりしたののあとはがっつり。がっつりのあとはさっぱり。ありがとうございます。お届け予定は明日の予定です。あれ、買っちゃってる。
桐谷きょう
まあ鶏はどっちにしろ、私が帰ったら料理して小分けするんで。桜さんはお菓子とかそのまま食べられるやつ適当に注文してください。多分、今回はさっぱり系が欲しくなるんじゃないかな。それでそろそろ本題ですけど。
あやじん/怪異ウェブメディア
はいはい、お願いします。そんなことを言ってる間にまた人増えてますね。ありがとうございます。
桐谷きょう
■■■。■■県ですね。ここに来たのは依頼人のAさんからお話を聞くためで。
あやじん/怪異ウェブメディア
公式アカウントに相談があったので、桐谷さんに行ってもらうことにしました。
桐谷きょう
それでまあ、今日は話を色々聞かせてもらいまして。じゃあその話をしますね。
あやじん/怪異ウェブメディア
お願いします。しばらく私は黙ります。
桐谷きょう
ううん、やっぱりなんか回線のせいなのか、ちょっと私音声に時間差があるみたいなので、もし途切れたりしたら教えてください。
あやじん/怪異ウェブメディア
はい。
桐谷きょう
はい。Aさんは■■■の出身なんですが今は大阪で暮らしている方です。で。ご両親はこちらで二人暮らし。先月そのお母さんから電話がありまして。言うには、お父さんがおかしい。自分の部屋で誰かと話してるみたいだ。って言うんですね。
桐谷きょう
お父さんの部屋から話し声が聞こえる。けど、見に行っても誰もいないし、お父さん本人は誰とも話なんてしていないって言うんです。お母さんは、その声が本当に怖いみたいで。知らない人の声です。しかもその怖さがお父さんには伝わらないんですね。だって、本人には聞こえてないから。お父さんからすると意味がわからなくて。怖がるお母さんに、お前何言ってるんだっていらいらして、喧嘩になっていると。
桐谷きょう
Aさんは話の内容よりも、お母さんの混乱している感じが気がかりだったそうです。お父さんもお母さんも、まあ年相応に衰えてはいる、それぞれ病気もしているし、けどまだまだ気はしっかりしてるって思っていたそうなんですが。これは急に認知症かなにかが進んで、妄想、ですよね。変な妄想を持ってしまっているのかもしれないなと。たとえばテレビの人の声とかですね、お父さんが部屋で見ているテレビの音とかそういうのを、お母さんが聞き間違えて思い込んだのか、あるいはまるっきり、幻聴か。いやそれとも問題があるのはお父さんの方で、独り言というか、いない相手に話しかけているのか。そういうことを考えてしまう。
桐谷きょう
Aさん、確かめようと思ったそうで。タイミングを見計らって、お母さんではなくてお父さんの方に電話してみたんです。
桐谷きょう
電話に出たお父さんは、また物置にハチがこんな巣作ってたから落としたったとか、隣の犬がうるさいとか、世間話をする限りいたって普通で。そこでAさんも大丈夫かもしれないと、思い切ってお父さんに話を切り出しました。
桐谷きょう
お母さんが、お父さん誰かと話してるいうてたけど。
桐谷きょう
ああ、ちょっとお母さんおかしなってきてるかもしれん。俺も年取って耳よう聞こえんようにはなるわ。けど声聞こえるいうんはおかしやろ。反対や。
桐谷きょう
Aさんはいつものお父さんらしい軽口を聞いてふっと身体の力が抜けてしまう。お父さんの苦笑いが目に浮かびます。ああ、お父さんは別に変になってなんかいない、いつも通りだな、って。お母さんの方がちょっとおかしいんだとすると、お父さんもあまり冷静でいてはいけないはずですけれど、でもAさんにとって頼れるお父さんが普通だったのは、やっぱり安心したそうです。そのときは。
桐谷きょう
そのあともお父さんは普段通りで、言うことも筋が通っていて。でも、それはいいんだけど、その電話口。
桐谷きょう
聞こえるんです。
桐谷きょう
こんな風に。
桐谷きょう
あのね、知らない女が、口を挟んでくるんです。お父さんの方から。隣にいるんですよ。隣にいるみたいに声がする。電話口すぐ横です。そこに誰かいるのってAさんが聞くと、お父さんは、いや一人や、あいつは部屋で寝てる。て言うんですね。
桐谷きょう
でもそこへ被せて、女の声が、ここにいるよ、って囁くんです。
桐谷きょう
ここにいるよ。受話器のすぐ近くにいる。耳に息がかかりそうな近さ。耳元に湿った息を吹きかけられる距離。ぞわぞわっ、と鳥肌が立つ。思わずスマホを顔から離して何度も見て、耳と首筋を手で確かめて、お父さんいまのなに、てAさんが聞くと、なんや。聞こえたやん。何が。お父さんもイライラしてくる。お前もそんな変なこと言うんか、って。ここにいるよ。
桐谷きょう
Aさんはもう怖くなって、電話は切って。すぐに実家に帰ることに決めたそうです。次の日の朝に向かおうと。けれどその日の夜、お父さんは突然亡くなりました。
桐谷きょう
いわゆる心筋梗塞で、年齢と持病を考えると、そういうことがあってもおかしくはない、そうです。けれど、朝の四時にお母さんからの電話で起こされて、お父さんが危篤だって知らされたとき、Aさんには聞こえたんだそうです。
桐谷きょう
あははははははははははははは、って。
桐谷きょう
焦ってるお母さんの声の後ろで、狂ったように高笑いする女の声が。あはははははははははははははは。ここにいるよ。あはははははははははははははは。
あやじん/怪異ウェブメディア
うわあ。
桐谷きょう
ともかく、Aさんは実家に戻って、お母さんと二人で葬儀を済ませて、家の片付けをするんですね。不思議なことにお母さんにはもう声は聞こえないそうです。でもお母さんが以前言っていたことと、同じことが起きる。
桐谷きょう
お母さんの部屋から女の声がする。けれど、Aさんが見に行くとお母さん一人しかいない。あるいは片付けをしていて、廊下からお父さんの部屋にいるお母さんを呼ぶ。するとお母さんだけじゃなくて、もう一人から返事が返ってくる。これ捨てて良い、って聞くと、全部捨ててしまえ、とか。そういう茶化す内容です。全部捨ててしまえ。それでその声はお母さんには聞こえていないから、話が噛み合わない。捨ててしまえ。
桐谷きょう
それで、案の定。お母さんも事故に遭います。Aさんが休んでいる間でした。ほんの少しの間、疲れて居間でうつらうつらしてしまったそうなんですが、その間にお母さん、一人で屋根裏の荷物を片付けようとしたんでしょうね。梯子を登って、多分降りるとき。落ちてしまって、頭を打ちました。一命は取り留めたんですが、いまも病院で目覚めないと。
桐谷きょう
お母さんが床に落ちて大きな音を立てたときに、どしんって大きな音がして、それでAさんはハッと目が覚めた。そのときにも、どしん、のあとに、上の階からやっぱり聞こえたそうなんです。あははははははははは、って。あははははははははははははははははははははははは。
あやじん/怪異ウェブメディア
それさあ、Aさんは、大丈夫なの?
桐谷きょう
かなり動揺されてましたね。ただ、お母さんが入院して以来、声は聞こえないそうです。
あやじん/怪異ウェブメディア
いや、それは、でも。
桐谷きょう
でもねえ。あははははは。
あやじん/怪異ウェブメディア
うむ。なるほど。これは音声の怪異というわけだね。声の怪異。
桐谷きょう
類型があるんですか?
あやじん/怪異ウェブメディア
もともと人間というのは、資格が一番重要な情報源。怪異も、だから、視覚、目に見えるものが、まず多いよ。でもその重要な資格が効かないという状況は、つまり見えないという状況は、裏を返せば恐怖に繋がる。危険だからね。敵の姿が見えない。すぐ側に危機が迫っているかもしれない。そういう状況では人間は足りない情報を恐怖で保管する。暗闇に恐れを見いだす。だからそこに怪異は生まれる。
あやじん/怪異ウェブメディア
たとえば、天狗倒し、という怪異があるね。夜中に木を切り倒す音がする。でも翌朝調べるとどこにもそんな痕跡がない。これは音声の怪異と言えるだろうね。
あやじん/怪異ウェブメディア
同じように、姿が見えない音声だけの怪異は数多いよ。
あやじん/怪異ウェブメディア
小豆洗い。小豆を洗う音がするけど姿が見えない。
あやじん/怪異ウェブメディア
洗濯狐。洗濯する音がするけど姿が見えない。
あやじん/怪異ウェブメディア
狸囃子。おはやしの音がするけど姿が見えない。
あやじん/怪異ウェブメディア
川赤子。赤ん坊が溺れているような声がするけど姿が見えない。
桐谷きょう
それじゃあ、はるちゃんが書いてた記事もですかね。
あやじん/怪異ウェブメディア
ああ。そうだね。フォートナイト階段シリーズ。
桐谷きょう
まず私はそういうボイチャ前提のゲームやらないですし、動画も見ないので全然知らない世界でした。
あやじん/怪異ウェブメディア
私も全然わからないよ。それがはるを呼んだ理由だけれども。聞いてくださってる方で記事を読まれてない方のために、ぜひ記事も読んでくださいね。一応説明します。
あやじん/怪異ウェブメディア
どういう話かというと、元はショート動画で紹介されているお話だけれど、フォートナイトっていうゲームにはボイスチャットがあって、仲間とお話が出来る。それで味方と連携しながら戦うゲームです。私もやったことはないけれど。そのボイスチャットで、知らない声がする、という都市伝説。その声が、ゲームのプレイにダメ出しをしてくる。下手くそとか。やめちまえとか。まあ、設定ミスってて荒らしが紛れ込んでるか、友達の悪戯だろうけど。
桐谷きょう
なんで現代都市伝説には急にあたりが強くなるんですか。桜さんいつもそうですよね。
あやじん/怪異ウェブメディア
いや現代だからとかじゃなくて。食欲をそそられないというか。
桐谷きょう
食うことしか考えてない。
あやじん/怪異ウェブメディア
ただ、その場にいないはずの人間が増えている、というのはまさしく怪異の類型だ。泉鏡花のちょいと怪しという掌編小説があって、その名の通りちょっとした不思議な怪談がいくつか集められているけれど、そのなかの膝さすりという話では、暗闇の座敷で四人が集まる。お互い名前を呼んで膝に手をやる。そうするといつのまにかそこに五人目がいる。それから本叩きという話だと、同じく暗闇の座敷で二人で本で畳を叩く。そうすると二人とは思えないほど大人数で叩く音が聞こえてくる。
桐谷きょう
ほら、古典だとテンションが違う。桜さんの目がキラキラしてるのが見えますよ。
あやじん/怪異ウェブメディア
だからボイスチャットの怪異にしても、電話であっても、同じだよね。
桐谷きょう
同じなんですかね。
あやじん/怪異ウェブメディア
つまり、資格優位の人間がその資格を奪われたとき。たとえば夜。夜になると見えないから、聴覚に頼る。けれどそれはとても心細い。その恐れのあまり聴覚が起こした錯覚が、怪異をつくり出す。恐怖が想像力を暴走させ、怪異を生み出す。電話は資格には直接作用してないけれど、聴覚だけを遠隔地に飛ばしてるとも言える。聴覚に頼らないといけない。だからここにも音声の怪異が出る。
桐谷きょう
だから、のつなぎが大胆だよなぁ。
あやじん/怪異ウェブメディア
さてさて、さっきの依頼人。Aさんとは電話で話した?
桐谷きょう
いえ、最初の連絡はディーエムでした。電話番号は、もちろん聞いてみたんですけどね、断られました。怖くて使えなくなったと。かかってきても絶対に出ないそうですよ。そりゃそうでしょう?
あやじん/怪異ウェブメディア
じゃあ電話じゃなくても。今日は聞いた?
桐谷きょう
いいえ。聞いてないと思います。あはは。
あやじん/怪異ウェブメディア
でも、その怪異ははじめ父親についていた。そのとき母親とAさんには聞こえたけれど、父親には聞こえなかった。そしてその父親に触った。祟った。そのあと、母親には声が聞こえなくなり、次に祟られたのは母親だった。いま、Aさんには女の声はもう聞こえないんだよね。
あやじん/怪異ウェブメディア
だったら、いまはその怪異はAさんについている。そう考えるのが自然でしょう。だからAさんと話す他の人には声が聞こえるかもしれない。今日だって。
桐谷きょう
まあ、そうです。だから、それを調べるのに一日かかったわけで。
あやじん/怪異ウェブメディア
さすが。調べたんだね。
桐谷きょう
近所の人に聞き込みです。Aさんと違って地元の人ですし、みなさんかなり警戒されてしまいましたが。普通には話してくれなくてですね。最後はすこし、良くない方法ではありますが、Aさんの家ですね、あそこから、わーって、叫び声がさっき聞こえたんですが、あのおうちは大丈夫でしょうか、って聞いてみまして。
あやじん/怪異ウェブメディア
なるほどね。
桐谷きょう
まあ、帰れって言われちゃいましたけど。でもそのときの反応は、あたりだったと思います。つまり、そのご近所さんも、あの家から変な声がするのを聞いているんですよ。Aさんについている怪異の声を。
あやじん/怪異ウェブメディア
でもそれ、その反応ってだけじゃ、いつのことかわからないでしょう。両親二人で住んでいたときに聞いたのかもしれない。
桐谷きょう
ああ。まあ。たしかに。あはははは。
あやじん/怪異ウェブメディア
詰めが甘いなあ。
桐谷きょう
明日、ドア越しにAさんに話しかけてみたりしようかと思いますが、うまくいくかどうかはわかりませんね。Aさんかなり怯えていたので、あまり強引にはしたくないんですが。
あやじん/怪異ウェブメディア
しかしいずれにせよ、Aさんが危ないことになる。大丈夫かな。
桐谷きょう
心配なんですが、お父さんは元々持病ではあったそうですし、お母さんも客観的には完全に事故なので。防ごうにも。というところがあります。もうさっき殺したよ。
あやじん/怪異ウェブメディア
お母さんは亡くなってはいないのだから、必ず殺せるような強い怪異ではないのだと思うよ。ただAさんが怖がっているというのは心配だね。声を恐れているとそれだけ強力に触られることになる。
桐谷きょう
ただお父さんのお母さんの流れから言うと、それぞれ時間があいていましたし、次に怪異が行動を起こすのがいつなのかわからないなとも思っていて。もう殺したし移動したよ。
あやじん/怪異ウェブメディア
長期戦は困るね。今日早く帰ってきてね。私の口直しが。
桐谷きょう
いや冷蔵庫に作り置きまだありますよね。殺した。いつまで無視するつもり。
あやじん/怪異ウェブメディア
え。多分もうないけど。
桐谷きょう
いやあれ余裕持って三日分作った計算なんですけど。あははははははは。それでも無視するっていうのなら。
あやじん/怪異ウェブメディア
一人だとお腹が空くのかもね。今日がいないと暇だし。
桐谷きょう
嬉しいのかよくわからない発言だなあ。なら、こいつも殺してやろうか。
あやじん/怪異ウェブメディア
それは、させない。
桐谷きょう
はい? あはは。あはははははははははははははは。やっと怖がった。これでそっちへいけるぞ。
あやじん/怪異ウェブメディア
ああ。なるほどね。無視し続けたらだめだったの。でもそれだとどうやって今日に。
桐谷きょう
えええ。え、そういうことですか。え。いつのまに。こいつにも聞こえたはずだ。桜さん、私だけおいてかないで欲しいんですけど。ていうかずっと聞こえてたのに無視してたんですか。最初から? でも聞かなかったことにしたんだろう。待って、私、桜さんがずっと変な反応しないから大丈夫なんだって思って安心してたのに。怖かったから聞かなかったことにしたんだ。あははははははははは。
あやじん/怪異ウェブメディア
混ざってて読みにくいな。ああ、つまり今日も一度は聞いたんだけれど、一瞬だったとかで聞き間違いかもしれないと思ったってことね。思ったというか、思おうとしたのか、だから私と話して、私が変な声を聞くかどうか、様子を見ようとしてたのか。今日、その自信ないときに何かを聞かなかったことにして様子見るのほんと悪い癖だよ。それで泣いた女が私を含めて一体何人いるの。私が一緒に住もうって言ったときだって。
桐谷きょう
待って桜さん待って、なんか全然違う話してませんか。うわ風、ちょっと。何これ。あははは。
あやじん/怪異ウェブメディア
せいぜいちょっと頭打つくらいにして、さっさと帰ってきなさいね。
桐谷きょう
いや頭も打ちたくない、あ、これここから落ちるってこと? それは。あ。あははははははははは。あははははははははははははははははは。
あやじん/怪異ウェブメディア
あ、ほんとに物理で落ちたかな。
あやじん/怪異ウェブメディア
おーい、聞こえる?
あやじん/怪異ウェブメディア
気絶とかしてないといいけど。
あやじん/怪異ウェブメディア
さて。というわけでアクシデントもありましたが、怪異専門ウェブメディアあやじんの公開編集会議スペース、聞いていただいた皆さんありがとうございました。今日の桐谷さんの取材結果は後日記事になりますので、お楽しみに。ではでは。
あやじん/怪異ウェブメディア
あー。まだ来てない?
あやじん/怪異ウェブメディア
移動には時間差があるのかな。まあここから六〇〇キロくらいは離れてるし。あは。
あやじん/怪異ウェブメディア
来たか。お望み通り。
あやじん/怪異ウェブメディア
これで私たち二人だけになったね。あはははははははは。二人きり。
あやじん/怪異ウェブメディア
いや、厳密に言えば三人かな。人ではないか。あはははははは。誰がいる。
あやじん/怪異ウェブメディア
文字起こしだよ。今日は文字起こしの力を借りてたんだ。誰だそいつは。
あやじん/怪異ウェブメディア
視覚の怪異も音声の怪異も結局、恐怖がそれを存在せしめる。今日から事前にあなたのことは情報をもらっていたから、だから対策をしていた。
あやじん/怪異ウェブメディア
私、今日の声は聞いてないから。
あやじん/怪異ウェブメディア
スピーカーをミュートしていたんだ。最近の文字起こしの精度は優秀だね。漢字だけ時々変になるのはご愛嬌。今日はさすがに時間差があるように感じたみたいだけど、怪しまれずに普通に会話も出来た。今日の声を聞いていないんだから、あなたの声も聞こえない。聞こえないなら、怖くない。文字起こし。そんなやつ見えないぞ。あははははははは。
あやじん/怪異ウェブメディア
ああ、だから文字起こしって、人間じゃないよ。文字起こしはあなたの声を認識して、文字にしてくれるけれど、恐れることはない。想像しないから。
あやじん/怪異ウェブメディア
ちなみにリスナーはさっき全員キックして退出させたからもういない。きっと普通に聞いている皆は怖かっただろうから、あなたも私を待つんじゃなくて適当なリスナーに移れば良かったのにね。でも私についてしまったなら、行き止まり。もう移る先がない。あははは、あは、おい、はなせ。はなせ。はなせはなせはなせはなせはなせはなせ。
あやじん/怪異ウェブメディア
今日が帰ってくるより先に食事だけ送ってくれるとは思わなかったな。やめろはなせやめろはなせはなせはなせはなせは
あやじん/怪異ウェブメディア
それじゃ、いただきます。
あやじん/怪異ウェブメディア
うーん。
あやじん/怪異ウェブメディア
あー。
あやじん/怪異ウェブメディア
なるほど。
あやじん/怪異ウェブメディア
さっぱりの口直しがほしい。
あやじん/怪異ウェブメディア
あ。冷蔵庫が空っぽだ。
あやじん/怪異ウェブメディア
今日……。
あやじん/怪異ウェブメディア
アレクサ。さっぱり系。
「怪異専門ウェブメディアあやじん・公開編集会議スペース」は終了しました。
初出:ストレンジ・フィクションズ『声百合アンソロジー まだ火のつかぬ言葉のように』
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