1/5
前語り
短いです。見切り発車ですがよろしくお願いします。
フェリシエスタ魔導王国。剣術と魔術によって栄えてきた国であり、これまでの歴史の中で、多数の優秀な魔術師や剣聖を世界に送り出してきた場所でもある。
そのフェリシエスタでも強い力を持つミルスフェノン侯爵家には、色々な噂があった。
例えば、現当主の賢者が悪魔付きだったとか、その妻の聖女は腹黒だとか、メイドが凄腕の暗殺者だとか。もちろん殆どは根も葉もない噂に過ぎないのだが。
そんな侯爵家の噂にも、真実だとわかっていることがある。侯爵家には特異な色彩を持つ娘が居る、ということだ。
本人のその色合いを見て、憐れんだり蔑んだりする者は多い。だが、家族に愛されている彼女は前を向いている。
例え、途方もない絶望が押し寄せようとも。心に愛を持つ限り、彼女が折れることは無いのだろう。
『色無し』と呼ばれた少女は、されど無数の『色』を用いて世界を救う、のかもしれない。
そんな彼女と、それを取り巻く人々の物語。