目が覚めた。→なにこれ!?
久しぶりにふかふかのベッドで寝た気がする。
まず思ったのは、そんな感想。
「、、、え?ここどこ?」
「あ!目が覚めたのね!」
そこにいたのは、つややかな黒い髪が特徴的な少女だった。とても綺麗で、にっこりと笑った顔から瞳の色はうかがえない。でもきっと綺麗な色なんだろう。ふわふわな髪の毛に手をうずめてみたいと思ったが、それよりも状況確認だ。
「、、、誰ですか?ここは?」
「そんなに緊張しないで。ここは南区の孤児院。私はダリアよ」
「ダリア?」
「ええ。あなたは?」
「私は、、、メグです」
迷ったが、得体のしれない場所で本名を名乗ろうとは思えない。昔から呼ばれていた愛称で行こうと思う。
「メグちゃんね。かわいい名前」
「ありがとう、ございます」
「ちょっと待っててね。人を呼んでくるわ。それからご飯にしましょう」
「はい」
もう少し自分のことを聞きたかったが仕方ない。それにしても、私は檻の中でギロチンが降ってくる日を待っていたはずなのだが。
「孤児院?もしかして、その名を借りた実験場とか?」
私の容姿は特異だ。白い髪に琥珀の瞳。何より右に片方ある角が存在感を放っている。鏡を見るまでは知らなかったが、私の目は左右で違うようで、左は普通の丸みを帯びた愛らしい目なのだが右は本来白い部分が黒く、瞳孔も縦に細長い。
この容姿を見て、処刑からモルモットへとジョブチェンジしたのかと思ったが、、、。
「なに、、この手」
そこには丸くて小さいモミジの手があった。
私の手ってもっとこうすべすべ滑らかな乙女の手だったよね?
何で急に、、、まさか!
私は急いで壁に立てかけてある姿見の前に行った。
「やっぱり、、、」
そこには、大分と小さくなった自分がいた。
「どういうこと?実験で小さくなったとか、、、でも、ダリアって」
ダリアという名前は、朧げな記憶の中の一つにあった。とてもやさしい黒髪のお姉さんで、保護されるまで私の面倒をかいがいしく見てくれていたのだ。
「何でダリアまで小さくなってるの?もしかして、神様がやり直すきっかけを与えてくれたとか」
信じるつもりはないが、この国で信仰されてる神様くらいではないだろうか、こんなことができるのは。確か神様の一人に時間を操る人がいた気がするし。
「とにかく、こうなったら選択肢は一つだよね」
私はこの世界で、上手くやって幸せになるんだ!!
そうとなったらやるべきことは一つ。
「メグちゃん?どうかしたの?」
「何でもないよ、ダリアお姉ちゃん!」
とにかく媚を売ることだ!!!
______
「初めまして、メグ。私は涼。この孤児院の管理人よ」
「初めまして、涼さん」
ダリアが呼んできたのは二十代くらいの若い女の人だ。人間族だろう。長い髪を後ろで一つにくくり、前髪をきれいにそろえている。猫目のその瞳はとても冷静で、でもどこか温かみがあった。
「不安なこともあると思うけれど、まずご飯を食べましょうか」
涼さんがそう言ったちょうどその時。
ぐううううううう、とお腹の虫が鳴いた。
「あ、」
「ふふ、お腹すいてるわよね。重湯を作ってきたのだけど、いかんせん食糧難だから、お口に合うかどうか」
「そんな!おいしそうです!」
「ありがとう」
涼さんが微笑んで、私はつい目を奪われた。
ほんっとうに、綺麗な人だな、、、。
「ところで、あなたはこの国の状況を知ってるのかしら?」
ああ、そっか。私みたいな子供だったら把握してないかもしれないもんね。そのことを見越して聞いてくれるって、、、優しい、、!!!
「メグちゃん?」
「あ、たしか、人外族と人間族が争ってたんですよね?」
「ええ、そうよ。今は形だけの冷戦状態でね、、」
「それで住み分けを行うことになったんでしたっけ?」
「人間族は西、人外族は東というようにね。けれど、やはりそれらにちゃんと従えない子もいるわ」
「従えない、、?」
「ハーフだったり、忌み嫌われている種族だったり、事情が有ったり、、、そういう人は、地下街に住むの。無法地帯だけど、そっちの方が住みやすいから」
「そこでね、メグちゃん!提案なんだけど、、」
「?」
「一緒に住まない?!」
「、、、えっ?」