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死神、はじめました!  作者: Tale
season1 ”種”の出現
12/20

#10 先輩と後輩

また性癖キャラ出します。

ドキドキおうちデートを終え、無事家に帰宅する。


昨日帰らなかったという事もあり、母には叱られるかと思ったが。


「遊んでくるのも良いけど、連絡はしてね。葉月の事もあるし、心配だから」


基本感情を露わにしない母が、珍しくそんな事を言った。


「......あぁ、悪かったよ」


葉月の話を出されては、言い返す言葉も無い。


一言謝り、そこでこの話は終わった。


自分の部屋に着いても、自分が死神になったという実感は湧かない。


学ランを脱ぎ、壁に掛けたところで、僕はベッドへとダイブした。


スマホを弄りつつ、幸介には適当に休んだ理由を伝え、そこで瞼が重くなる。


明日からに向けても、今日は早く寝る事にした。




そして翌日。


朝食を適当に済ませ、僕は学校へと向かう。


いつも通りの通学路だが、今日からの僕はもう、いつも通りではない。


何故なら、死神になったのだから。


とは言っても、それで日常生活に大して支障が出るわけでもなく。


普通に学校に着き、普通に幸介と話し、普通に授業を受けた。


「透、流石に銃持って走り回ってたから休んだってのは嘘だろ」


真顔で言う幸介。


普通に嘘はバレた。


「まぁ、男にはグレネード投げまくりたい日もあるだろ」


「断罪担当さん、この人ですよ」


大して面白くもないツッコミ。


けれど、僕が今後実際に断罪担当になる可能性を鑑みると、案外悪くない皮肉なのかもしれない。


断罪担当さんは、この人ですよ。


日本語も面白いもので、これもそういう話。


『は』はナシにしようって、幸介以上に下らない話のオチだ。




気がつけば授業も終わり、残すはHRのみ。


担任が教室へと入ってきて、連絡事項を伝える。


「何かと最近は物騒です。皆さんも気をつけてください。先程も、学校の近くで黒装束の不審者が見かけられたそうです。いいですか皆さん、不審者と遭った時はまず逃げて下さいね」


へぇ、黒装束の不審者ねぇ。


「......絶対秋宮(あいつ)だ」


「なに、お前不審者と知り合いなの?」


「いや、そんな訳ないだろ。あんな性格のひん曲がった、片腕しかない死神なんて、マジ見たこともない」


「......やたらと詳しいな」


半ばバレてるだろとは思いつつ、白々しく切り抜ける。


HRを終え、下駄箱で靴を履き替える。


そうして校門まで歩いていくと。


「えぇ~、お兄さん背高~い」


「外人さんですか~?」


数名の女子に囲まれる、黒装束を発見した。


「......」


マジあいつ、何しに来てんだ。


「悪いな幸介。鬼退治行ってくるわ」


「おう、おみやげはきびだんごで頼む」


脊髄会話をする幸介はさておき、僕はやけに注目を集める黒装束へと直行する。


「おい秋宮!何してんだ!」


「あ、トオルくん。いやー、俺はここで普通に待ってただけなんだけどね?なんか、この娘たちが」


「うるさいうるさい!ほら、行くぞ!」


周りの女子を引き離すように、左腕を掴み、校外へと連れ出した。


「全く、お前が死神ってバレたらどうするんだ」


「別に、今の人間にとって死神は悪い存在でもないでしょ。バレたって問題なくない?」


「そうかもだけど。騒ぎになったら色々面倒だろ。僕が死神ってバレるリスクもあるし」


「トオルくんはつれないなぁ。あ、自分が女子に見向きもされないからって嫉妬してるんだ?」


普通にイラっときたので、秋宮を本気で怨む。


すると、秋宮の身体が一瞬、硬直した。


「はははっ。死念力(テレキネシス)、昨日よりは上手になったね」


「怨む対象が違うだけで、こうも上手くいくとはな。特訓してくれるんだろ、行くぞ」


そうして、先程のギャラリーに手を振る秋宮を傍らに、僕たちはこの場を離れた。




着いたのは、局の敷地内の研究所だった。


「なぁ秋宮。僕たちは死術の特訓をするんじゃないのか?」


辺りを見渡しても、よく分からないコンピュータや棚ばかりで、到底死術の特訓に向いているとは思えない。


「死術の特訓と言っても、まずは死術を知らないとね」


そう言って、片腕でカチャカチャとキーボードを叩き始めた。


すると。


「秋宮先輩、勝手に機械触らないで下さい。これ、前にも言いましたよね?」


棚の奥から、白衣を着た死神の姿。


緑色の髪を後ろで結んでいるので、てっきり女性かと思ったが、声音から察するに男性の死神のようだ。


「まぁまぁ、そんな固い事言わないでよ、円間(えんま)くん」


「はぁ。先輩の遊びに付き合ってたら、機械が何個あっても足りないですって」


「あ、トオルくん、紹介するね。ここの研究長の、円間(えんま)具奇(ともき)くん。俺の一個下の後輩だよ」


「あ、どうも。円間でも具奇でもいいです」


いつもこの人、秋宮に振り回されてるんだろうな。


その苦悩が少しばかり分かるような気がして、この人には優しくしようと心から思った。


「よろしくお願いします。僕は藪坂、藪坂透です」


「藪坂......。あぁ、昨日死神になったあの藪坂くん?」


「はい。どうしてご存知なんですか?」


「なんかサーバーに極秘.txtって名前でファイル作られてたから、覗いてみました」


あ、この人も結構ヤバい人なのか?


「それでね、円間くん。前に言ってた機械を借りたいんだけど」


「あぁ、あれですか。用意しますから、ちょっと待っててください」


数分後、血圧測定器のようなものを抱え、円間さんは戻ってきた。


「なんか、血圧測定器みたいですね、これ」


「だって、血圧測定器を改造したものですから」


淡白に答える円間さん。


「はい、ではまず、ここに腕を通してみて下さい」


言われるがままに、僕は右腕を通そうとする。


「あ、左腕の方がいいかもね。右腕だと、まだ俺のデータが反映されちゃうかもだから」


「右腕......って、先輩、腕どうしたんですか」


「まぁまぁ、追々話すさ」


秋宮の言葉を受け、右腕ではなく、左腕を通してみる。


すると円間さんがケーブルをパソコンに繋ぎ、画面を覗き込む。


「これって何の機械なんですか?まさか本当に血圧を測る訳じゃないですよね?」


「まさか。これで分かるのは、その人の死術の適性や傾向、まぁいわゆる死神ステータスです」


そういって円間さんがエンターキーを叩くと、血圧測定器が腕を締めるように反応する。


「......うーん、出ましたね。出力レベルは平均45%、体力、霊感知、反応速度はいずれも標準。成長係数は……少し極端ですね」


「極端?」


「はい。レベルテーブルで言うと“遅咲き型”です。序盤は成長しにくいですが、その代わりピーク時の伸びしろは異常値が出てます」


「要するに、しばらくポンコツって事ですか」


「言い方が雑だけど、間違いではないですね。でも、爆発力は期待できます」


「はははっ。トオルくんらしいね」


「それから……属性に“炎”と“闇”が出ています」


「まぁ炎に関しては、多少なりと俺の腕が影響しちゃってるだろうね。てことは、本命は……」


「......闇って事ですか?」


「そうなります。ちなみに、統計上“闇”属性を持つ死神は1%未満。非常にレアです。特に“潜在属性”として出てるってことは、まだ本格的に発現していない未定義状態ということですね」


「根本的な事で悪いんですけど、属性って、そんなに差があるんですか?」


「基本は炎、水、風、光、闇の五種類。それぞれが死術の性質を決める要因になります。死神ステータスっていうのは、単なる才能の可視化じゃない。“個性の輪郭”を示すものなんです」


「ちなみに、円間さんは何属性なんですか?」


「あ」


ふとした、ありきたりな質問だと思ったのだが。


秋宮はその言葉を聞いて、少し焦ったような顔をする。


「いいですよ、秋宮先輩。藪坂くん、僕にはね、死術の適性はありません」


少し、どこか諦めたかのような顔で話す、円間さん。


「適性が無いって事は」


「死術が使えないって事です。何度も試したんですけどね、僕には無理でした。あ、そんなに気にしないで下さい。そのお陰で、こうやって研究出来てるんですから」


年齢的には秋宮より下のハズだが、対応は秋宮よりも紳士的、いや、大人だ。


僕も円間さんみたいに優しい大人になりたいと思った。


「円間さんのためにも、僕、頑張ります」


「......そうですね。藪坂くんに、僕の思いも託そうかな」


先程までのどこか疲れた顔色は消え、とても明るい笑顔だった。




「じゃあ、突然だったけど、ありがとね。やっぱ円間くんは頼りになるよ」


死術の適性も知れた所で、僕たちは次の目的地へと向かおうとする。


「まったく、次来るときは言って下さいね」


「言えば来ていいの?」


「......まぁ、たまにならです」


案外、この人も秋宮の事、嫌いじゃないんだろうな。


僕も秋宮に続き、感謝の言葉を告げる。


そして、研究所を後にした。

読んで頂き、ありがとうございました。

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