#0.5 栞を挟む
初めまして、Taleです。
書きたかったものを書いてみます。
もしかしたら一話一話が長いかもしれませんが、ご容赦下さい。
物語を始めるには、自己紹介からという定石がある。
まぁ本当にあるのかどうか、僕には知った事ではないが、始めるとしようか。
僕が"死神"になるまでの物語を。
僕の名前は藪坂透。先日17回目の誕生日を迎えた所だ。
中肉中背、まぁ痩せてると言われた事もあるが、便宜上この方が説明が楽である。
部活は帰宅部、友人は居て一人か二人。
量と質、どちらを選ぶか迷う所ではある。
しかし僕には初めから選択肢が無かったようなので、義務的に友人の質を向上させた。
現状がその結果だ。
他に特筆するなら、まぁ昔から運が悪いといったところか。
席替えではいつも前の席を引いていた記憶がある。
これで視力が悪いならまだしも、生憎夜目が利くほどには目に自信があった。
最近では数少ない友人にロイヤルストレートフラッシュを13回連続で引かれた事もあったな。
……いやそれはもう相手が凄いだろ。
他人の長所を、自分の短所だと言って蔑むのは人間として器が小さいとしか言いようがない。
話が反れた。
まぁそんな感じで、僕という人間の紹介は終わってしまった。
僕の長所に、説明欄のコスパが良いとでも記述しておこう。
代わって、僕の住む日本と言う都市は、恐らく皆さんが想像する日本とは少しばかり、変わっていることだと思う。
端的に言えば。
僕ら人間は今、死神と共存している。
さりとて、死神とは言っても忌々しい存在という訳でもなく。
どちらかと言えば僕らを守る、市民の味方なのである。
では、一体何から守ってくれているのか。
それは、罪を犯した人間の成れの果て、罪人である。
いつからか、皆さんの知る、いわゆる犯罪者は、特殊な力を持つようになった。
その力は、最初は風変りの精神病という扱いを受けていた。
当初の研究データでは、人の心を読む事が出来る程度のものだったからだ。
しかしその力は、犯した罪が凶悪であるほど、残忍で。
残酷で。
そして残虐なものだった。
人々はその力を罪から生まれたと書いて罪生と呼んだ。
そして、その力を使う彼らを、罪人と呼び始めた。
......え、死神の話はまだかって?
そう焦るなよ。
死神の僕が話してやるからさ。
とも言うと、秋宮には、君はまだ見習いだろうと笑われそうなものだが。
死神は、突如現れた。
僕ら人間が、成す術無く罪人に嬲り殺される姿を見て、半ば嘲笑うかのように。
ヒーローは遅れてやってくると言うが、その逆が必ずしも正しいとは限らない。
遅れてやってきた彼ら死神は、特段、僕らからしてヒーローでは無かったからだ。
そう、ヒーローではない。
英雄などでは、断じて無かった。
何故なら、それはれっきとした死を司る神であり。
人では無かったから。
「その説明だと、俺ら悪者に見えるんだけど、トオルくん」
「うるさいな秋宮。実際流れで説明するならそうなるだろ」
話が反れた。
まぁ初回打診こそ最悪だったが、結果的に死神は人類の脅威となる事は無かった。
契約を結んだのである。
俺らが人間界に蔓延る罪人を屠るから、お前らの寿命をよこせ、と。
かなり噛み砕いてはいるが、こういった死神の契約を交わしたのだ。
そして現在の、人間と死神が共存する形の、日本が存在する。
話も軌道に乗った所で、一旦は藪坂透という人間に任せるとしよう。
何、別に語るのを辞めた訳じゃない。
一旦、栞を挟むだけだ。
読んで頂き、ありがとうございました。