初めての試練
平野が入社して三か月経つ頃のある日。
課長から簡易裁判所の原告に立つ様、言われた。
それは、入社して初めての試練だった。
民事訴訟法に基ずき回収する方法だ。
それまで、平野は主に電話、内容証明(文書での督促)、夜討ち朝駆けで回収率100パーセント近い実績を上げていた。
それが認めらた結果の抜擢だった。
「平野君。会社は君に期待している。頑張りたまえ」と課長は檄を飛ばした。
その夜、課長に誘われ、平野は焼き鳥屋に連れられた。
課長は「今までの回収よりも責任は重いぞ。民事訴訟の勉強も必要だ。君にとって試練になるだろう。やれるか?」と言った。
平野は「はい。頑張ります」と答えた。
「よし」と課長は言い、民事訴訟に付いて、自らの体験を踏まえ、平野にレクチャーした。
平野は課長の話を熱心にメモ書きし、家に帰るとメモを読み民事訴訟の本を開き、徹夜で勉強した。
訴訟は民事訴訟(判決、不在判決、和解)、債務名義(判決、仮執行宣言付支払命令)、公正証書、和解調書、強制執行(有体動産差し押さえ)、給与差し押さえ、取り立て命令、代物弁済、商品引き上げ、再分割、転売。
平野は頭が痛くなってきた。
(これは大変な仕事だ。果たして自分に出来るか)」平野は不安になってきた。