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ノエルとポリー 7

 避難指示の鐘が鳴り響く中、わたしたちは神殿へと向かう。

 わたし達の他にも領民たちが続々と神殿の方に向かっているのが見える。


 質素でシンプルではあるけど、それでも、スペンサー領では最も背の高い建物なのが神殿だ。建築面積そのものはスペンサー家のお屋敷の方が大きいんだけど、建物そのものの高さだけを比べれば特徴的なとんがり屋根の分だけ神殿の方が高いんだよね。


 ゼーハーゼーハーと周囲の酸素を独り占めする勢いで呼吸を繰り返しながら、ようやく神殿に辿り着いた。

 もちろん肩で息をしているのはわたしだけだ。


 神殿にはすでに何十人もの人が集まってて、こちらに注目していた。正確にはスタンリー様をだけど。


 スタンリー様が先に下馬して、いまだグッタリしているポリーちゃんを抱え下ろしていると男性が一人駆け寄ってきた。何となく見覚えがあるので、最初の頃にレンヴィーゴ様に連れられて村の中を回った時に紹介された内の一人かもしれない。……記憶が定かじゃないけど。


「スタン! 何が起きてる!?」

「分からん! 森で異変が起きてる事だけは確かだ! 今はレンと何人か残して対処させてる! 俺達もすぐに応援にでるぞ! 自警団の三隊は領内の安全確保、残りの一隊で森に向かう! 俺は一度屋敷に戻って準備を整えてくるからその間に人選を頼む!」


 スタンリー様は周りの人たちにも聞こえるように大きな声で叫ぶように言った。

 その間に、わたしとエルミーユ様で馬から降ろされたポリーちゃんの身体を預かる。まだ一人だと立ってるのも辛そうだ。


 とりあえず、横になれる場所に連れて行ってあげたい。


「エルミーユ様、ポリーちゃんが横になれる場所はありますか?」

「神殿の中に寝泊まりできる場所があるから、そこを使わせてもらうわよ。ルミはそっち側からお願い!」


 エルミーユ様の指示にしたがって二人でポリーちゃんを両脇から支え、神殿の扉へ向かおうとすると、扉の向こうから中年女性が出てきた。


「ポリーは大丈夫かい? どこか怪我しちゃってるのかい?」

「もうポーション飲ませてあるから大丈夫、安心して。ただポリーはポーションがダメで具合が悪くなっちゃったみたいなの。少し横にしてあげたいから部屋を借りるわね」


 中年女性に問いかけられて、丁寧に答えを返すエルミーユ様。


 この人も見た事ある人だ。たしか村内巡回ツアーの時に、お屋敷を出てすぐに出会ってその場で紹介してもらったアリシアさんだ。


「あらまぁ。ポリーは私のポーションは合わなかったんだねぇ。それじゃ、すぐにベッドに寝かせてあげないと」

 

 ん? |私のポーション≪・・・・・・・≫?

 その言い方だと、他の人が作ったポーションならこれほど具合が悪くならないかもしれないって事なのかな?


 わたしが飲んだ時には、こんなに具合が悪くなったりしなかったから、アリシアさんの作ったポーションは相性が良いって事なのかな。

 ものすごく不味かったけど。


 気にはなるけど、今はポリーちゃん優先だ。アリシアさんに神殿の中へ案内してもらう。


 神殿内部も、外と同じようにやっぱり質素でシンプルな感じだった。

 扉を抜けると装飾などほとんど無い聖堂になっていて、正面には祭壇の様なものが在る。祭壇の中央には、神様を象った小さな像が綺麗に並べられているけど、他に目につくものと言えば壁に等間隔で並んだ燭台くらいしかない。


 通路の両脇には木製の長椅子が備え付けられていて、子供やお年寄りが不安そうな顔で腰を下ろしている。


 ザワザワとした聖堂の中、ポリーちゃんを支えながら祭壇を通り過ぎて、目立たない位置にある小さな扉をくぐる。


 扉の先は、神殿関係者の居住区になっているらしい。

 アリシアさんに先導されて廊下を進み、二つ目の扉へ通された。


「さぁ、こちらへ。ここは巡礼者の為に用意された部屋ですが、誰も使っていないので、ここで休ませてあげてください」


 誰も使っていないといっても、普段から掃除はしていたらしく埃一つ落ちていない綺麗な部屋だ。


 エルミーユ様と協力してポリーちゃんをベッドに寝かせると、改めて部屋の中を見回してみる。

 改めて見ても綺麗に掃除されているのは分かったけど、ゴミや埃だけじゃなく、家具もほとんど無い部屋だった。

 ポリーちゃんを寝かせた小さなベッドと、その脇に置かれたベッドサイドテーブル、燭台が一つに木箱が一つあるだけで、窓一つない。


 以前、テレビで見た日本の刑務所の方が快適そうだ。


 まぁ、この世界にテレビとかエアコンとかは無いから殺風景な部屋になるのはしょうがないと言えばしょうがないんだけど。


 でも、今はポリーちゃんが安静にしていられれば良いので問題ないのかな。


「あの、ポリーちゃんは大丈夫なんでしょうか?」

「安静にしてれば大丈夫よ。病気じゃないんだから、そのうち治るはずよ」

「ポーションのせい、なんですよね?」

「ええ。ポーションって怪我が治るのは良いんだけど、たまに具合が悪くなる人がいるのよね」


 向こうの世界のゲームとかに登場するポーションは、副反応みたいなものは無いのが一般的だから今まで考えた事が無かったけど、ポーションなんてやっぱり薬だ。しかも、向こうの世界では考えられないほどの効果がある薬。

 多少なりとも副反応が出ても当たり前なのかもしれない。


 つい先日、森で正体不明の魔物に襲われて運ばれた猟師さんなんて、日本だったら緊急手術間違いなしだし、無事に手術が終わった後も何日も入院しなきゃダメだったはず。

 それなのに、ポーションを飲むだけで、その日のうちに自分の足で家に帰れたんだから多少の副反応には目を瞑らなきゃいけないのかも。


「エルミーユ様、ルミ様……。もうしわけありません」


 ポリーちゃんが弱弱しい声をあげる。


「ポーション飲んで具合が悪くなっちゃったのはポリーちゃんのせいじゃないんだから、謝る必要なんて無いよ」

「そうそう。たまたまアリシアのポーションが合わなかっただけなんだから、気にする必要ないわ」

「でも……」

「”でも”は無し! ポリーはいつも一生懸命働いてるんだから、それだけで十分よ。こんな時くらいゆっくり休みなさい」


 そう言いながら、ポリーちゃんの頭をやさしく撫でるエルミーユ様。

 

 ポリーちゃんはいつも一生懸命働いているのだ。わたしの専属メイドとしてはもちろん、手が空いたらレジーナさんのお手伝いもしている。

 まだ10歳くらいなのに。


 わたしなんて、この世界の事や魔法についての勉強とかはしているけど、仕事らしい仕事は全くしてない。ポリーちゃんと自身を比べると、なんだか居たたまれなくなってきたよ……。


週末に一度書き上げて・・・、でも、やっぱり気に入らなくて全消しして書き直しました。

こういう事やってるから、「あれ?これってどこかに書いたっけ?何となく書いた記憶がある様な?」っていう困った現象が起こってしまいます _(:3 」∠)_

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