表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
98/135

ノエルとポリー 6

 魔の森から聞こえてきた叫び声。

 わたしには誰の声なのかは分からなかったけれど、レンヴィーゴ様を置いていく形で先行して森に入っていった男の人たちの誰かなんだと思う。


 すぐに反応したのはレンヴィーゴ様。そして、さっきまで不機嫌そうな顔をしていたスタンリー様だった。


「レンッ!」

「分かってます! 父上は武器が無いのですから皆を連れて安全な場所へ避難してください!」


 叫ぶように答えながら、森の方へと走っていくレンヴィーゴ様。

 スタンリー様の方も、すぐに動き出して残っているメンバーに声を掛ける。


「よしっ、俺たちは安全な場所まで避難しておくぞ! ポリーは走れるか!?」


 スタンリー様に言われてわたしも反射的にポリーちゃんの様子を確認してみるけど、まだポーションの副反応から回復しきっていない様に見える。

 意識はあるけど、一人で立っているのがやっとって感じだ。


「父様! 今、ポリーを走らせるのは無理よ!」


 エルミーユ様が言うと、スタンリー様もポリーちゃんの様子を確認して難しい顔。

 スタンリー様の判断も同じっぽい。


 もちろんポリーちゃんを置いていく訳にはいかない。だからと言って、無理やり走らせるのも無理そうだ。


「父様! あっち! リドルがいるわ!」


 エルミーユ様が指さす方には木の枝に繋がれた栗毛の馬が見える。あの馬の名前がリドルなのかな?

 リドルと呼ばれた馬は、緊迫した状態の人間たちを気にする様子もなく、のんきに足元の草を食んでいた。


「エルミーユ、リドルをこっちまで連れてきてくれ」


 わかったと元気に返事をして、栗毛の馬の所まで走っていくエルミーユ様。


 枝から解放された馬は、大人しくエルミーユ様に従って歩いてくる。

 スタンリー様がポリーちゃんを抱きかかえるようにしてリドルの背中に乗せてから、自分もヒラリと背に跨った。

 

 スタンリー様は馬上で手綱を操りながら、もう一度、周りを見回す。

 釣られてわたし達も同じように周囲に視線を配る。他に残っている人が居ないかの確認だ。


 訓練に参加していた子供達は、すでに最初から訓練の監督役だった大人たちに連れられて村の中心地の方に向かっているはず。

 見える範囲に残っているのはわたし、マール、エルミーユ様、スタンリー様と馬上でスタンリー様に抱えられたポリーちゃんだけだ。


「よし、とりあえず神殿に向かう。エルミーユは木剣でもあるだけマシだ。持って行け」

「分かってる! 神殿には何か武器があるのよね!?」

「ああ、保存食と一緒に非常用の武器が幾つか用意してある。エルミーユの判断で使えそうな奴を選んで渡して構わん」

「父様は!?」

「俺は、一度神殿から屋敷に戻って装備を整えてから、屋敷にシャルロットやレジーナが残ってたら連れていく。……魔の森で何が起こっているのか分からん以上、無駄に騒ぐのは危険だ。ここからは大声を出さずに静かに移動するように。……何か質問は?」


 慌てた様子の無い落ち着いた口調だ。

 大人の余裕なのか、傭兵としていくつもの修羅場を経験したからこその豪胆さなのか。

 それとも、わたし達がパニックにならない様に、あえて落ち着いた口調で喋ってくれたのかもしれない。


 こちらも恐慌に陥りそうな心を必死に押さえつけながら、大きく首を左右に振る。


 何が起こっているか分からないけど、大人の男の人が叫び声をあげてしまうような状況で、その後も、何かがぶつかる様な音や、雷のような音、爆裂音のような音が聞こえてくる。


 音や声が聞こえるって事は、それほど森の深い場所じゃないって事だ。もしかしたら、すぐにでも魔物が出てくるかもしれない。


 ……正直、怖い。

 早く、この場から逃げ出したい。

 マールも不安そうにわたしの脚に抱き着いてて、しっぽを股の間に挟んでいる。

 日本に居るころには完全室内飼いだったマール。こうなってみると、少しは外に連れ出してあげた方が良かったのかな、なんて考えてしまう。


 スタンリー様はもう一度レンヴィーゴ様たちが向かった森の方を厳しい目で見つめる。

 その顔は、さっきまでの自分が森に行きたかったという感情から来るものでは無く、純粋にレンヴィーゴ様や領民たちを心配する領主の表情だ。


「よし、俺は一番後ろを走るから、エルミーユが先頭を走ってくれ。後ろの事は気にしなくて良いが、何か不審な事があったらすぐに俺の方に戻ってこい。良いな?」


 エルミーユ様はコクリと頷き、小さく「行くわよ」と声掛けをしてから走り始めた。その後をあたしとマールが続き、最後をリドルに跨ったスタンリー様とポリーちゃん。

 軽いジョギングにも満たないくらいのゆっくりしたスピードで、周囲に気を配りながらの移動だ。


 森に向かったレンヴィーゴ様の事も心配だけど、訓練場から神殿に向かうわたし達だって安全が保障されてるわけじゃ無い。

 むしろ本当に何かあった場合、全員が戦う技能を持っている探索組の人たちより、足手まといが3人もいる避難組の方が危険な可能性だってある。

 警戒しすぎなくらいに警戒しておいても損はないはずだ。


 わたし達が移動を始めてすぐ。

 先に避難を始めていた組の人たちが連絡をしたのか、大きな鐘の音が村中に響き渡っていた。


 時刻を告げる鳴らし方ではなく早朝に聞いた訓練を知らせるものでもない。

 短い音三回と長い音三回を繰り返す、初めて聞く、だけど事前に聞いていたままの避難指示の鳴らし方だった。



馬の名前とか毛色って以前に書いたような気がするような、しないような・・・?

もしかしたら、以前に書いてて、その時と違う名前や毛色になってるかもしれませんが

記憶に残ってないから書いてないのかなぁ?

まぁ、もともと複数いるという設定ではあるので・・・


言い訳してないで、ちゃんとメモしておかないとダメだね! (*>ω<)=3

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ