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ノエルとポリー 5

 ノエル君捜索隊。

 最初は、領主様自らが森に行くはずだった。

 だけど、次期領主であるレンヴィーゴ様との論争に敗れた領主スタンリー様は敢え無くお留守番をする事となり不満そうな顔をしている。


 正直、ちょっと気まずい。


 スタンリー様としては、森への探索をする気マンマンだったからね。ノエル君を心配してっていうのも勿論あっただろうけど、それと同じくらいに、領主としての書類仕事から逃げ出したいからっていう理由があったような気がしてしまう。


 そんな、ちょっとご機嫌斜めなスタンリー様とは関わりたくないので、視線を合わせないようレンヴィーゴ様の方を見ると、あとから合流した捜索に参加する男の人たちと作戦会議中だった。

 少し離れているから、どんな内容なのかは断片的にしか聞き取れないけど、先ほどわたし達を相手にしたようにお酒を使って誘き寄せる作戦を確認しあってる感じだ。


 聞いている人たちも驚いてる様子が無いから、きっと角ウサギがお酒好きなのは、大人たちには常識レベルの事なのかもしれない。


 しばらくその様子を見ていると、レンヴィーゴ様が声を掛け、他の男の人たちが返事をした。

 そしてそのまま、男の人たちが森の方へ向かい始める。みんな気張った様子も無く慣れた様子で頼もしくも見える、様な気もする。


 レンヴィーゴ様だけは、その男の人たちに混ざる事無く、わたし達の方へ歩み寄ってきた。


「さて、それではちょっとノエルを探しに行ってきます。正直、無事に探し出してくるとは言えませんが……」

「レン! なにそんな弱気なこと言ってるのよっ、今日中にノエルを無事に探し出して、怪我無く連れ帰ってきなさい!」


 エルミーユ様からのキツイお言葉にレンヴィーゴ様は困り顔を浮かべる。

 

「精一杯の事はするつもりですが、流石に今日中というのは……」

「レンなら出来るでしょ!? こんな小っちゃい頃から森で遊び回ってたんだから! 角ウサギ一匹探し出すのなんて、スープの中のお肉を探すのよりは簡単なはずよ!」


 エルミーユ様はそう言いながら自分の腰のあたりで手をヒラヒラさせる。

 わたしと違ってそこそこ身長が高いエルミーユ様の腰のあたりだけど、それでもその手が示している高さってポリーちゃんの身長に比べてもかなり小さい。5、6歳の子供くらいの身長だよ。


 しかも、スープの中のお肉って……。

 確かにスープにたっぷりのお肉が入ってるって訳じゃないけど、それでも一口サイズのお肉が二、三個くらいは入ってる。

 微妙すぎて、難しいのか簡単なのかよく分からないよ……。


「絶対っ! 無事にっ! 元気なノエルを連れ帰ってくるって約束しなさいっ! それでポリーが安心できるんだからっ! 約束できないなら私もついて行くわよ!?」


 エルミーユ様が激しい口調で捲し立てる。


 エルミーユ様って、なんとなくだけどポリーちゃんの事をすごく大事にしてる感じがするね。

 なんというか、実の弟のレンヴィーゴ様よりも、ポリーちゃんを優先しているというか何というか。


 以前に聞いたところによると、ノエル君に限らずジャッカロープの様な小さくて可愛い魔物や動物というのは貴族令嬢たちの交流に一役かっているのだそうな。

 お茶会などでお互いのペットを見せ合ったりするらしい。

 スペンサー家では、そういう時にノエル君を連れ出す事になるので、ノエル君を無事に保護する事は、エルミーユ様の為でもあるし、スペンサー家の為にもなる。


 もともと、最初にノエル君を捕まえてきたのも、そういう目的があったという。

 その時に、まだ幼すぎて何も分からなかったポリーちゃんがワガママを言って、エルミーユ様がポリーちゃんに飼い主としての立場を譲ったという話を聞いた覚えもある。


 エルミーユ様自身も、多少なりとも懐いているノエル君が居なくなっちゃうのはイヤなんだろうけど、それよりもポリーちゃんに辛い思いをさせたくないって気持ちの方が強いんじゃないかな。


 エルミーユ様とポリーちゃんは、雇い主である領主様の長女と使用人という関係だ。


 だけど、それは表向きだけで、少なくともエルミーユ様はポリーちゃんの事を妹の様に考えているような気がするんだよね。

 もちろん立場的には、それが許されるはずがないんだけど。


「姉上……。姉上がポリーの事を妹の様に大事に思っているのは知っていますが、それは僕だって同じです。なので、精一杯の事はするつもりです。なんといっても、可愛い妹が泣いている所なんて見たくありませんからね。……でも、それでも安易に約束出来る事じゃ無いんです。魔の森とはそういう所ですから」


 レンヴィーゴ様は、これまでにも魔の森には何度も入っている。定期的に魔物の間引きをしたり、訓練の為だったりで魔の森に入る事もあるという。

 わたしと初めて会ったのも魔の森の中だった。


 そんなレンヴィーゴ様だからこそ、魔の森の危険性も分かってて、分かっているからこそ軽々しく約束なんて出来ないんだと思う。


「そんなの分かってるわよ! それでも、レンなら何とかできるでしょ!」


 凄い信頼具合だ。

 わたしは直接見た事は無いけど、エルミーユ様やポリーちゃんから聞いた限りだと、レンヴィーゴ様はかなりの実力者だという話だった。

 レンヴィーゴ様の事を剣でも魔法でも知識でも平均以上の水準で、同世代でレンヴィーゴ様より優れた人は居ないらしい。


 ちょっとは身内贔屓が入ってるのかもしれないけど、少なくともスペンサー領の領内では上位の実力者っていうのは間違いないんだと思う。

 小さいながらも、もともと傭兵上がりの領民ばかりのスペンサー領内で強いと評されているんだから、まったくの期待外れって事は無いんじゃないかな。


「出来るだけの事はやってみます。ですが……あまり期待は……」


 レンヴィーゴ様が困ったように苦笑しながらそこまで言いかけた時──


「うわぁぁああぁ!」


 ──森から、悲鳴にも似た叫び声が響いてきた。

あけましておめでとうございます <(_ _)>

短いようで短いお正月休みが終わってしまいました。

今年ものんびり更新のんびり展開で頑張っていきたいと思いますので

またーりとお付き合いしてくださいますよう、宜しくお願いいたします <(_ _)>

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