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異世界人との遭遇 4

ちょっと短いです。


「それじゃ、まずは自己紹介からはじめましょうか? 僕はレン。レンヴィーゴ・スペンサー。スペンサー領領主、スタンリー・スペンサーの嫡子にして、ラトヴィッジ陛下より准爵位を受け賜っています」


 わたしの正面に座っている少年がそう言って、手のひらを見せるように右手をあげる。

 これって挨拶なのかな。


 っていうか、領主様の嫡子ってことは、それってお貴族様ってことじゃないの!? なんか、話し方も丁寧だし、身なりも整ってる。ある程度の身分ある人なのかなとは思ってたけど!

 なんか、緊張してきたよ!


 それにしても……。整った顔立ちをしてて、身分も高くて、おまけに魔法まで使えるって、レンヴィーゴ様って普通にスペック高くない?

 もしかして、この世界だとレンヴィーゴ様くらいのスペックな人がゴロゴロ居たりするのかな?


「えっと、わたしは澤乃樹瑠美(さわのぎ るみ)といいます。それで、こっちの子がマールです」


 わたしの膝の上でジャーキーと格闘しているマールも紹介する。相手がお貴族様って事で緊張しているわたしとは違い、マールはジャーキーに夢中で、少年の方に興味が向くことは無いようだ。


「サワノギ・ルミに、マールですか。サワノギ・ルミというのは、この辺では聞かない不思議な響きの名前ですね。失礼ですが、ルミというのがファミリーネームですか?」

「あ、えっとサワノギが姓で、ルミが名前です。この辺りでの習慣だとルミ・サワノギになると思います」


 まぁ、澤乃樹って名字は日本でも珍しいからね……。TVとかでも見た事ないもん。異世界だったら名字だって分からなくてもしょうがないよね。クスン。


「では、ルミさんとお呼びしても?」

「あ、はい。呼びやすい名前で呼んでください」


 改まって、呼ばれ方を聞かれるってあんま無いから、ちょっと照れくさい。


「はい、それじゃ僕のことはレンヴィーゴでも、レンでもお好きなように。……それで、お二人は何処からいらっしゃったんですか?」


 やっぱり来たよ、この質問っ!


 なんて答えれば良いのか、ムチャクチャ悩む。

 テキトーに「遠い国から」とか言ってゴリ押しするべきか、それとも、全てを正直に喋ってしまうべきか。

 テキトーに誤魔化すとして誤魔化しきれるかは謎だけど、かと言って、正直に話すというのもハードルが高そうだ。そもそも、わたし自身が、良く分かってない。


「まさか、家出した貴族家の令嬢などという訳ではないですよね?」


 なんと答えるべきか悩んでいるわたしを見て、少し呆れるような表情を浮かべたレンヴィーゴ様。


 わたしは「ほへ?」とマヌケな声を出しながら首を傾げてしまう。

 わたしは貴族なんてものになった覚えはないんだけども。少なくとも、父さんも母さんも庶民で、庶民の子供であるわたしも、やっぱり庶民だ。


「いえっ! ちがいます! わたしはただの庶民で、お貴族様とかじゃないです!」

「えぇ、少なくとも、この国の貴族ではない事は分かります。ルミさんのような女性(ひと)がいれば、多少なりとも噂になっているはずですから。ですが……」


 レンヴィーゴ様は、そこで一度言葉を切って、改めてわたしの格好に視線を落とす。

 その視線に釣られるように、つい、わたしも自分の着ているものを見下ろしてしまう。


 わたしが着ているのは、ぬいぐるみ作りの時に付けている作業用のエプロンと、スウェット・シャツにパンツ。厚手の靴下とふわもこ羊型ルームシューズ。

 スウェットのセットは5千円しなかったくらいだし、靴下はデザイン無視の三足セット

の特売品だ。

 ふわモコ羊型ルームシューズは、実は自作なので、ちょっと手が込んでるけど、似たようなやつが千円くらいで買えるんじゃないかな?


 ジャーキーに牙を立てているマールはといえば、たしかにお貴族様っぽいかも。服をデザインする時に参考にしたのは”三銃士”だからね! 確か三銃士の主人公は田舎貴族だったはずだ。

 だから、マールの服だけを見るなら貴族に間違われてもおかしくないかもしれない。だけど、レンヴィーゴ様は、どうも私の着ている服まで含めて貴族っぽいと思ってるみたいなんだよね。

 普通、貴族の令嬢っていえば、ヒラヒラ・キラキラのドレスとか着てるんじゃないの? わたしが知らないだけで、国とか地域によっては、こんな油断した格好で出歩くお貴族様が居るわけじゃないよね?


「この辺りでは見かけない生地で作られた服に、肌が白くて、手先も荒れてない。そんな庶民がいるのかなと思いましてね。ですが、貴族ではないとすれば、どこかの大店のご令嬢でしょうか」


 うへぇ。レンヴィーゴ様の言葉を信じるなら、この辺に住んでる庶民は、もっと粗末な服を着てて、肌は日に焼けてて、手先も荒れてるって事か。


 わたしは、一度大きく息を吸い込んで自分に気合を入れるために、自分のほっぺを両手でパチンと叩く。


 わたし! そろそろ覚悟を決めろ! 


「実はわたしは、この国どころか……、この世界の人間でもないみたいです」


 気合を入れるためとは言え、ちょっとほっぺを強く叩きすぎた。ヒリヒリするし、ちょっと涙目になってるかも。

澤乃樹という名字は、とあるスポーツ選手のお名前から。

私、名前とか考えるの苦手なので、そういうの多いです。

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