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異世界人との遭遇 2

 でも、落ち着いて考えてみれば、小瓶の中の液体を飲むしか無い気がするんだよね。

 腕の傷はいずれは治療しなくちゃならないレベルなのは一目瞭然だし、どうせ治療しなくちゃならないなら早い方が良いに決まってる。放置しておいて化膿とかしたら困る。

 そして、おそらくここはファンタジー世界。

 現代医療なんて期待できない。もし、現代医療と同レベルのものがあったとしても、その治療を受けるためには、まずは言葉の壁が立ちふさがる。

 更に……。わたし、この世界のお金とか持ってないよ!

 言葉が通じない状態で、更にお金も無いとなれば、病院があっても治療は受けられない可能性が高い。治療を受けられなければ、結局、誰かの厚意にすがるしか無いわけだけど、その、誰かの厚意ってのは、わたしの手の中にあるポーションになるんじゃない?


 そう考えれば、ここは、目の前の少年を信じて飲むべきなんだろうけど……。瓶からはわたしの決心を揺るがす臭いが漂ってくる。


 決心が付かずにウジウジと悩んでいると少年は小さく溜め息を付いて、背中のバッグを降ろして、その場に胡座をかいて座り込んだ。


 わたしとマールが首を傾げながら見守る中、少年はどこからともなく、まるで手品のように一冊の本を取り出した。

 電話帳くらいのサイズと厚さのその本は、少年の髪と同じ様な茶色の革表紙で、表紙の角とか背表紙とかに金属の装飾がされている。おまけに日記帳とかシステム手帳みたいに鍵付き留め金が付いてて、チラリと見えた表紙には、貴族の紋章みたいなのが書かれている。


 少年は膝の上に本をおいて、左手で本の表紙を叩く。

 少年の左の中指に嵌められた指輪が革表紙にコツンと当たった瞬間に、豆電球のような小さな光が見えた気がした。わたしが左手の指輪に気を取られていると、革表紙の本が、真っ白な淡い光を放ち始める。

 何が始まるのかな? と、興味津々に見ていると、本のベルト部分が勝手に外れて、ページが捲られていく。そして、開いたページから、透明な蛇がニョキッと生えてきた。


 いや、何を言ってるかわかんないと思うけど、鎌首をもたげた蛇が飛びだしたの。蛇の大きさはそれ程でもないんだけど、半透明な身体に記号のような文字のような模様があって、赤い目でわたしの事を見つめている。

 そして一瞬後には、その蛇のような文字列は、わたしを目標にして飛びかかってきた!


「キャッ!」


 小さく叫び声を上げながら、身を翻して避けようとしたけど……。残念っ! わたしはそんなに反射神経も運動神経も良くなかった!

 頭では避けたつもりでも、身体は殆ど動かないまま、文字蛇の襲撃を許してしまう。

 わたしは、思わず目をつぶって、痛みに耐えられるように体を強張らせた。


 でも、予想していたような痛みは無い。

 不思議に思って、片目だけをうっすら開けてみると、文字蛇はわたしの右耳から頭の中に侵入しようとしているみたいだった。

 ウニウニと文字蛇が入っていくのが分かって、わたしはパニック。


「キャー!? なにこれ!? ちょっと待って! 怖いやめて!」

「ルミしゃま!? 大丈夫にゃ!? しっかりするにゃ!」


 頭に正体不明の何かが入ってくるなんて怖すぎる。だからといって、文字蛇をムンズと掴んで引っ張り出すのも怖い。っていうか、触るのも怖い。

 マールも正体不明の怪現象を目のあたりにして動揺し、どうしたら良いのか分からない様子。

 正真正銘の猫だった頃のマールなら、こんな小さな蛇なんて前足でチョッカイ出さずには居られなかったはずなのに、今はただパニクっているだけだ。

 結局、わたしもマールもアワアワいうだけで、文字蛇が耳から頭に入っていくのを涙目で見送ることしか出来ない。


 文字蛇は、わたしの右耳から頭の中に入って、頭の中をグルグル回ってから左耳へ抜けていく感じ。

 左耳から抜けた文字蛇は、わたしの頭の上でクルンと輪を描いてから、また本の中へと帰っていく。


 呆然としているのは、わたしとマール。


「こんにちは。僕の言葉が分かりますか?」


 さっきまでの訳の分からない言葉じゃなく、意味の分かる言葉が聞こえた。

 その声は、わたしの正面に立って、ニコニコとした笑みを浮かべる茶褐色の髪をした少年のものだ。


「は……、はい。こんにちは」


 わたしは、訳も分からずとりあえず挨拶を返す。

 でも、急に言葉が分かるようになったよ! なんで!?


「言葉が分からないままだと色々大変なので、ちょっと魔法を使わせてもらいました。驚かせてしまったようで申し訳ないです.」

「魔法……ですか?」

「えぇ。貴女、この国の人じゃないでしょう?」


「この国どころか、この世界の人でもないかも!」とは、流石に言えず、わたしは、自分でも分かる位にぎこちない笑いを浮かべる事しかできなかった。

 正面には満足そうに微笑む少年、隣ではマールが驚いた表情をみせている。


「ルミしゃま!? 何を言ってるにゃ!?」


 ん? わたしは今まで通りのつもりなんだけど……。マールこそ、何を訳のわからないことを言ってるの?


私は、ネット環境が整えられない所と、日本語が通じない所には二度と行きたくないです。

それで、仕事を辞めました(*‘ω‘ *) 今の会社は、海外勤務の可能性がゼロなので安心です。

あとはトラックさえ気を付けてれば、異世界転生で日本語が通じない世界に行くことも無いはずっ!(*>ω<)=3

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