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異世界人との遭遇 1

 濃い茶色の外套を着たその人は、右手に鉈のような刃物を握り、下草を薙ぎながらゆっくりと近づいてくる。遠目に見る限りだと、男の人かな?


 わたしが気がついたのとほぼ同時に、相手もわたし達の存在に気がついたみたいで、明らかに歩みが遅くなる。


 わたしは腰を下ろしていた倒木から立ち上がり、何時でも逃げられるように心の準備。マールは警戒するようにわたしの盾になるような位置に立ってくれた。

 残念ながら、わたしの身体は全く隠れてないけど。


「ルミしゃま。いつでも逃げられるようにしてて下さいにゃ」

「うん……」


 男の人は、ゆっくりとわたし達の方へ近づいてくる。

 パッと見た感じは、わたしが知ってる通りの人間に見える。少なくとも、さっきの『コボルト』よりは。


 茶褐色のサラサラヘアーに、優しそうな整った顔立ち。年齢はたぶんわたしと同じくらいで、まだ少年と言って良い年代かな?

 身長は170くらいかな。無駄なお肉とか無さそうな位に靱やかに引き締まった感じの身体は、姿勢良く背筋がピンと伸びている。

 顔立ちは、白人っぽいような、日本人っぽいような? テレビのバラエティ番組とかでよく見かけるハーフタレントみたいな感じだ。

 わたしたちとの距離が数メートルになった所で、少年の足が止まる。

 少年は、何やら不思議なものを見るように目をぱちくりしながら、わたしとマールに視線を行ったり来たりさせている。


 まぁ、マールの姿を見れば驚くよね。頭は猫なのに、体全体で見れば猫には見えないもん。

 わたしのスウェットと作業用エプロンなんていう油断しきった格好に呆れてるわけじゃないと信じたい。


「☆◇■〇▽◆△…」


 少年は、ちょっと興奮したような様子で、そう声を掛けてきた。

 学校の英語の授業とか可もなく不可もなくって感じのわたしだけど、少年の言葉が英語じゃなかったって事くらいは分かる。ドイツ語とかフランス語とかイタリア語とかだとしたら、ちょっと自信がない。

 英語だったら理解出来たってわけじゃないけどさ。


「えっと、あの……、ごめんなさい。言葉が分かりません。……マールは分かる?」

「ルミしゃまが分からない物を、マールが分かるわけ無いにゃ」

「だよねー」


 少年は、わたし達が喋っているのを聞いて、少し困ったような表情をみせている。

 わたし達の事を、言葉の通じない外国人とかと勘違いしてくれたかな?


 あ、わたしはもう覚悟決めつつあるよ。

 多分ここは、ラノベとか漫画とかで見かける『異世界』で、この世界の人からみれば、わたしは『異世界人』って事になるんだと思う。

 我ながら信じたくないけど、さっきの『コボルト』みたいなのとかに会っちゃうとね。少なくとも、そう言う前提で動いたほうが良さそうって考えてる。

 具体的にどうするべきなのかは、まだ分かんないけどね。


「△◆□〇●◇〇▼」


 少年は、身振り手振りを交えながら、意味不明な言葉を続けている。当然、わたしもマールもチンプンカンプンだ。

 転移した時にちゃんと神様とか女神様が現れて、チート能力と自動翻訳を付けてくれていればっ! なんて思うけど、その力を使って、この世界の魔王とかを倒せとか言われても困るしなぁ……。


 わたしがそんな事を考えていると、少年はわたしをじっと見つめた後、僅かに目を見開き、表情を強張らせた。

 彼の視線が捉えているのは、どうやら、わたしの左腕。コボルトに切りつけられた傷だ。今はマールが付けていたマントを包帯代わりに巻いているけど、スウェットの袖の部分には切り裂かれた跡があるし、血で赤く染まったままだ。


「:◆□〇●△◆□」


 少年はまたも何か言いながら、腰につけているウエストバッグの中をあさって、小瓶を一つ摘み出す。

 日本でよく見かける栄養ドリンクよりも一回り小さな小瓶だ。ガラス瓶じゃなくて、陶器製かな?

 少年はその小瓶のコルク栓みたいな蓋を外すと、確かめるように匂いを嗅いでから、わたしの方に差し出してきた。


 これはラノベやゲームなんかでよく見かけるポーションってやつ? ファンタジー世界ならあっても不思議じゃないけど……。でも、ホントに飲み薬? 差し出されただけで、眉をしかめるほどの異臭が漂ってくるんですけど!?


「スゴイ臭いにゃ! きっと腐ってるにゃ! それか毒薬にゃ! ルミしゃま、受け取っちゃダメにゃ!」


 マールがすごい剣幕でまくし立てる。わたしも完全に同意だ。だけど、小瓶を差し出してる少年の笑顔を見ると、受け取らない訳にはいかない雰囲気。

 仕方なく、受け取るだけ受け取ってみるけど、これをどうしろと?

 チラリと少年を見れば、小瓶を口元に運び呷るジェスチャーをしている。その意味するところは、飲んでみろってことだよねぇ……。


 もし、これが本当にポーションの類だとしたら、せっかくのご厚意を無下にする訳にはいかない。でも、とてもじゃないけど身体に良い物とは思えない……。

 マールの言うとおり、毒薬と言われたほうが納得できる臭いなんだよね。


「ルミしゃま! ダメにゃ! 飲んだら死ぬにゃ!」

「うん……、たしかにヤバそうだけど」


 もし、これがポーションだったとして。この世界の人は、怪我をするたびに、こんなヤバイ臭いのポーションを平気で飲んでるんだろうか?

 それとも、この世界の人達は、わたし達と味覚が違っていて、この臭いが美味しい匂いに感じるとか?

 もし、これを美味しそうって認識してるとしたら、わたし、この世界で生きていけるだろうか……。


 そんなことを考えつつ、もう一度、少年の方を見てみれば、少し苦笑しているのが分かった。

 その表情は、「やっぱり、その臭いはヤバイよね」って事じゃないかな!?


第一村人発見!


異世界語の表現に悩んで、結局記号の羅列にしちゃったけど

もっと異世界っぽく出来ないかしら……(*‘ω‘ *)

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