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今日から魔法使い! 4

 隣に置かれた魔導書から、文字や記号が並ぶ魔法陣を自分の魔法陣に書き写す。

 それが、今日のわたしとマールの行う作業だ。とにかく見て写す。写したら見る、そしてまた写すという作業を繰り返していく。


 原本になるのはレンヴィーゴ様の魔導書。

 本当だったら、先人に魔法陣を見せてもらう際にはお礼としてお金を包むらしいんだけど、わたしとマールの二人は免除して貰える事になった。

 一つの魔法につき、どのくらいのお金が発生するのかは分からないけど、きっとお安くはないよね。返さなくてはならない恩が現在進行形で増えちゃってるよ。まだ、何一つ返せてないのに。


 でも、お屋敷の中でじっとしている間は恩返しなんて出来ないしだろうし、だからといってお屋敷の外に出るためには、自分の身は自分で守れるようにならなくてはならない。

 自分の身を守れるようになる為には、レンヴィーゴ様に魔法を教わるしかない。


 結局、返さなきゃならない恩が増えると分かっていても、レンヴィーゴ様やスタンリー様に甘えて縋るしか無いのだ。

 そんなわけで、わたしは一生懸命、魔導書に描かれた魔法陣を筆写していく。


 魔法陣の形はホントに様々だ。唯一共通しているのは、大小の違いはあれど、中心に円があるという部分だけ。

 大きな円の中に色んな記号が配されていたり、逆に小さな円を中心に、五芒星やら六芒星、菱形とか多角形とかに囲まれてたり。

 そしてそういう記号だけじゃなくて、先日レンヴィーゴ様に教わった魔法文字の数々。集中してないと、間違えちゃいそうだ。


「にゃぁ~~、マールにはこんなの無理にゃ~~」


 わたしの隣で同じように魔法陣を書き写していたマールがペンを投げ出しながら情けない声をあげた。

 マールの手元をのぞき込んでみると、わたしの半分にも満たないくらいしか写せてないみたいだ。


「マールは魔法使いは諦めるにゃ。明日から剣士を目指して修行するにゃ……」


 机に突っ伏してへこたれた様にぼやくマール。

 そんなマールを見たレンヴィーゴ様が苦笑している。


「魔法で戦うのか剣で戦うのかを選ぶのはマール君ですが、剣士でも魔法を使えた方が有利ですよ?」

「にゃ、にゃんでにゃ? 剣士になるにゃら剣の修行に集中した方が強くなれるんじゃないのにゃ!?」

「剣士として戦うよう訓練をするにしても限界がありますから……。自身の運動能力を向上させる魔法が使えれば、普通に体を鍛えただけよりも大きなチカラが出せるようになったり、速く動けるようになったり、遠くが見えるようになったり、表皮を鎧のように固くしたりなんて事も出来る様になります」

「そ、それじゃ、マールが剣士になるには結局魔法を覚えなきゃダメって事なのにゃ?」

「ダメという事はありませんが、魔法も使えるようにしておいた方が強くなることは出来ますね。実際、魔法も使える剣士と魔法を使えない剣士が正面から戦えば、よほど剣術に差があるというのでなければ、魔法を使える方の剣士が勝つのが当たり前ですから」


 二兎追う者は一兎をも得ずとか、器用貧乏とか、多芸は無芸なんて言葉があるけど、この世界における魔法や魔力っていうのは、そんな言葉が通用しない位、アドバンテージを持てるって事なのかな。

 幸い『魔法を使うなら、剣術も覚えた方が良い』という逆パターンは無いみたいだ。使えないよりは、使えた方が良いのかもしれないけど。


 マールはレンヴィーゴ様の言葉を聞いて、涙目で「うぅ~」なんて呻いちゃってる。

 魔法使いは無理そうだから剣士に逃げようとして、それでも結局魔法を覚えた方が良いって言われたのがショックだったのかも。

 

「マールはわたしの事を守ってくれるんでしょ?」

「にゃ……?」

「最初の日に約束してくれたよね? 強くなってわたしを守ってくれるって」

「言ったにゃ……。マールは、ルミしゃまに助けて貰った恩を返すにゃ」

「それじゃ、やっぱり魔法も使えるようになっておいた方が良いんじゃない?」


 正直に言えば、マールの気持ちは嬉しい。でも、わたしを守るためとはいえ、マールが危険な目に合うのは嫌だ。

 出来る事なら命の危険がある戦闘なんてしてほしくない。


 この世界は日本みたいに安全ってわけじゃないのも間違いないのだ。凶悪なモンスターも居るだろうし、山賊とかだって居るかもしれない。戦争に巻き込まれる事だって絶対にないとは言い切れない。

 そんな世界で生きていかなければならないのだから、自分自身を守れるだけの強さがマールにも必要だと思うんだよね。

 なので、少しでも強くなれるというのなら、マールにも魔法を覚えてほしいというのが本当の気持ちだ。


 自分だけ魔法の特訓するのが嫌だからとかじゃないよ?


「うにゃぁ~~。分かったにゃ……マールも魔法がんばるにゃ」


 マールはそう言って、再びペンを握る。少しは前向きになってくれたみたい。

 わたしもほっと胸を撫で下ろして、再びカリカリと魔法陣を書き写す作業に戻る。


 今、わたし達が書き写しているのは、もっとも基本的な攻撃魔法とされる『魔力矢』というものだ。

 レンヴィーゴ様によれば、戦場で活躍するような魔法使いなら使えるのが当たり前というレベルの魔法との事だ。名前の通り、魔力を矢のように飛ばして相手にダメージを与える魔法なんだけど、基本にして主力って感じの攻撃手段らしい。


 基本にして主力っていうのは、この『魔力矢』が使えないようでは、他の攻撃魔法も使えないし、対人戦闘に限ればこの『魔力矢』が当たれば相手を無力化することは可能で、当たり所によっては一撃必殺にもなるって所から来ているみたい。

 もちろん、魔法使い同士の戦いならお互いに対策を立てているので、『魔力の矢』を放てば勝てるってものじゃ無いらしいけどね。


 できれば、そんな魔法は使わないまま、元の世界に戻れると良いな。

作中で名前だけ登場した『魔力矢』っていうのは、他作品ではマジックアローとか呼ばれることが多い魔法です。

当初、魔法の名前は英語にしようかとも思ってたんですが、話が進んで登場する魔法が増えてくると名前つけるときに困っちゃうんじゃ・・・?って考えて、日本語名にしちゃいました。


そんで。

最近、どうにもお仕事が忙しいです。

なんでかしら?って思ってよくよく考えてみたら、年度末でした。

なんていうか、今年はあまり寒さを感じなかったので、まだまだこれから寒くなるんじゃないかって気分になってて

そのせいで、年度末って事が頭からスポーーンって抜け落ちてました。

年度が変わるギリギリになると、一息つけるのですが・・・それまでは執筆時間が短くなり、それに伴い執筆量も減っちゃうと思います。


更新だけは途切れさせたくないな……。

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