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魔導書の作り方 1

 翌日。この世界で三日目の早朝。

 わたしとマールはレンヴィーゴ様に連れられて、お屋敷の中庭に足を運んでいた。

 そこは周囲を建物に囲まれてて、屋敷の外からは見えないようになっている場所で、中央にはそれほど背は高くないけど、ビックリするほど幹周りの太い大木があった。

 これは何の木かな? 樫の木とか? 葉っぱの形を見る限り松や銀杏じゃないのは分かるんだけど。


「ここで魔導書のもとを貰います」


 レンヴィーゴ様は、そういって大木に近づいていく。だけど、わたしもマールもその場から動くことが出来なかった。


 わたし達の視線の先にある大木。その幹の部分は人間の顔のように見えたからだ。それも、人の手で彫ったり削ったりしたようなものじゃなく、自然のままに育つ内に人の顔のようになったように見える。

 ゲームとかでこういうモンスター居たよね。エントとかトレントって呼ばれる樹木系モンスター。


「ここで……ですか?」

「こんな所で、本を作るのにゃ?」


 わたしとマールは辺りを見回してみるけど、目につくのは正面にある人の顔を持つ大木だけだ。


「はい。ここです。ですが、ここで魔導書を作るわけではありません。魔導書の素材を分けてもらうんですよ]


 レンヴィーゴ様はそう言いながら、大木をノックする。


「フェデリーニ爺、目を覚まして下さい」


 レンヴィーゴ様の声に反応して、巨木の幹にある顔がかすかに動いたように見えた。


「ひぃ!?」

「ル、ルミしゃま! この木、生きてるにゃ!」


 植物だって、生きているといえば生きているんだけど、そう言う意味じゃない。食虫植物なんてレベルじゃなく、まるで人間や動物の様に、動いたのだ。

 閉じていた瞼をゆっくりと開き、大きく欠伸。口をモゴモゴさせるその顔は、まさしく、人間のおじいちゃんに見える。これこそ本物の人面樹。さすがファンタジーだ。


「なんじゃ? ……レン坊かい? 今日はどうしたんだい? 『導魔の儀』の季節じゃ無いはずじゃが?」


 オマケに喋ったよ!


「内密に、追加で二人お願いします。こちらのルミフィーナさんとマール君です」

「その娘と猫かい? 娘の方はもうそんな年齢じゃないじゃろう? おまけに猫なんぞに魔法が使えるのかい?」

「ええ。まだ学び始めたばかりですが、二人共、びっくりするくらいの魔力を持ってますよ」


 フェデリーニと呼ばれた大木のお爺ちゃんが、疑わしげにわたし達を見る。


「……まぁ、レン坊がそういうなら、そうなんじゃろうな。こんな時期に【導魔の儀】をしたいなんてのも、なにか事情があるんじゃろう? さっさと儀式をしてしまおうかの」

「儀式ってなんですか?」

「なぁに、難しいことは無い。お主たちがちょっと魔力を流してくれれば、それで終わりじゃ。簡単じゃろう?」


 人面樹のフェデリーニお爺ちゃんは、そう言いながら太い枝を腕のように動かして、わたしとマールに向ける。

 わたしたちが、どうしたら良いのか首を傾げていると、フェデリーニお爺ちゃんが勢いよく鼻から息を吐き出して気合を込める。

 それと同時に、枝の先に小さな白い(つぼみ)が芽生えた。


「この蕾に、お主らの魔力を流すのじゃ」


 魔力を扱えるようになった今のわたし達からすれば簡単だけど、それが何になるの?


 わたしが首を傾げている間に、マールが蕾に手を伸ばし、魔力を注ぎ始めた。

 さすがマールだ。躊躇することなんて知らないね。


 マールが魔力を流すと、すぐに蕾に変化があった。

 真っ白な蕾が徐々に光を帯びはじめ、まるでビデオの早送りの様に花びらが開いていく。そして開ききったと思ったら、すぐに花びらを散らし、実が大きくなり始める。


 枝の先にできたのは、林檎のような実だ。だけど、林檎みたいに赤くはないし、かといって梨みたいな黄砂色でも黄緑でもない。

 一言で言えば、七色? 虹の様に様々な色がグラデーションしている感じだ。


「ほう、これは珍しい。これほどの色を持つとはのぅ」

「なんにゃ?」

「それはマール君の魔力が多く属性を持っている証拠ですよ。同じように属性を多く持つルミさんも、同じような色になるはずですね」


 ほほう。良く分からないけど、問題があるわけではないっぽい。正直、食べたいとは思えない色味だけど。


 フェデリーニお爺ちゃんは、七色に染まった林檎を自分で収穫すると、そのままマールへと手渡した。


「ありがとうですにゃ? ……これ、どうすればいいにゃ? 食べるにゃ? 誰かに売るのにゃ?」

「売ろうとしても、誰も買いませんよ。魔力を流した本人以外には役に立たない物ですからね」


 レンヴィーゴ様がそう言いながら、ポケットの中から布袋を取り出した。


「この袋に入れて、持ち帰って下さい。この袋は、魔力を通さない素材で出来ているので、他の人の魔力の影響を受けずに済みますから」


 その後、わたしも同じように蕾に魔力を注がせてもらい、同じように七色の林檎を無事にゲットした。

 でも、これが何になるのか全く分からない。


 魔導書を作るために中庭に来たんだよね? 林檎から紙や本を作るって意味が分からないよ!

今日、9月29日は来る福と読んで招き猫の日なんだそうです。

我が家にも、招き猫型貯金箱が一つあるのですが……なかなかお金溜まらないです。

1円玉とか5円玉しか入れてないから、貯金箱が一杯になっても千円にもならないと思いますが。

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