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神殿での生活 4

 マールを包み込んだ光が徐々に薄れていくと、そこに居たのは日本に居た頃に見慣れていた小猫。

 まぁ、小猫って言っても、マールって10歳くらいだったから年齢だけなら十分に大人の筈だったんだけどね。

 なぜか成長が遅くて、いつまでも小さいままだったんだよ。ご飯はモリモリ食べてたくせに。


「この小さな猫がマール君……なのよね?」


 信じられないようなものを見る様に、大きく目を見開いているのはアリシアさん。


「マールで間違いないにゃー」


 そう返事をするのは、猫の姿になったマール。

 猫の姿でも、ヒトの言葉を理解できるし、喋る事も出来るのだ。


「喋る事も出来るのね……。魔導装具を身に付けてるのだから魔法も使えるのよね?」

「にゃ。魔法なら使えるにゃ」


 マールはそう言って手をかざすと、光の魔法を発動させた。わたし達が一番最初にレンヴィーゴ様に教わった光の玉を呼び出すやつだ。


「あら。マール君、上手ね」

「それ程でも無いにゃ~」


 アリシアさんに褒められて照れてるマールが可愛い。


 でも、実際に最初の頃より光の魔法を発動させるのは上手になっている。

 理由は退屈だから。お屋敷から出る事を許されなかった期間が長かったせいで、時間を持てあましたマールとわたしは、魔法の自主練と称して光の玉を呼び出して遊んでいたのだ。

 わたしはすぐに飽きちゃったんだけど、マールはずっと光の玉をつついて遊んでたんだよね。


「他にはどんな魔法が使えるの!?」

「他にマールが使えるのは、魔力矢と魔力盾の魔法にゃ。他の魔法はまだ教わってないにゃ~」


 これは、わたしも同じだ。

 魔法に関しては全てレンヴィーゴ様に教えてもらってたんだけど、レンヴィーゴ様は領主様のお仕事のお手伝いもしているから、なかなか時間が取れないんだよ。


 魔法辞典とか魔法の教科書的な物があるなら、暇つぶしついでに読み込んで自習するんだけど、残念ながらそう言うのは無いみたいなんだよね。


「魔力量的には問題ないのよね? レン様? なぜもっと早く二人を連れてこなかったのです?」

「父と話し合って、ルミさん達が自分達の身を守れる様になるまでは、屋敷から出さない方が良いだろうと決めたからですね」


 アリシアさんは少し怒ったような表情。それに対して、レンヴィーゴ様は澄まし顔だ。


「魔力矢と魔力盾が使えるなら、十分な気がしますけど?」

「普通の領民の女の子なら十分以上でしょう。ですが、ルミさんとマール君は迷い人ですから。十分以上に警戒しなければならないでしょう?」

「それはそうでしょうけど……。でも、せっかく魔法を使えるだけの魔力があるのにもったいないわよ」


 それはわたしも思う。

 せっかく魔法のある世界に来たんだから、少しは魔法を使いこなせるようになりたいよね。魔力は余るほどあるんだし。


「ルミさんとマール君は、もっと魔法を覚えたいのよね?」

「そうですね。せっかくなので使えるようにはなりたいと思ってますけど……」

「マールも使えるようになりたいにゃ。でも魔法陣を書くのはメンドーにゃ」


 魔導書に魔法陣を書くのは確かに面倒だ。だけど、魔導書を使わずに魔法を使うとなるともっと面倒だ。

 それに魔法を使えるとなると、それに伴う義務も背負う事になるんだよね? 具体的には、領地や領民が盗賊とか魔物とかに攻め込まれた時には応戦しなくちゃならないとか。


 実際、魔力矢の威力はかなりの威力がある。相手にもよるんだろうけど、当たりどころによっては成人男性でも一撃で無力化できそうなくらいには強力だ。

 なんらかの脅威が迫っているときに、その魔力矢の魔法を使える存在を遊ばせておく手は無いというのは分かる。


 それでも、ケンカさえもした事が無いわたしなんかは、魔力矢と魔力盾の魔法が使えるというだけでは戦場では役に立たないんじゃないかと思ってしまう。


 他者を傷つけたり、命を奪ったりするような覚悟なんて出来てないよ。


「レン様はスタンリー様のお仕事のお手伝いでなかなか時間を作れないでしょう? なので代わりに私が魔法の教育も受け持ちます」

「二人に魔法を教えると言いながら、近くに住まわせる事で特異魔法の研究をなさりたいだけですよね?」

「そっ、そんな事! ……とってもあるわよ! だって特異魔法よ!? その使い手が目の前に居るのよ!? 詳しく調べて研究を重ねれば、もしかしたら特異魔法の謎が解明できるかもしれないのよ!?」


 鼻息も荒く捲し立てるアリシアさんを見て、呆れたように盛大な溜息をつくレンヴィーゴ様。


「はぁ……だから連れて来たくなかったのです」


 レンヴィーゴ様はわたし達のほうに振り返る。

 いつもは穏やかに優しそうな笑みを浮かべている印象があるけど、今この瞬間はこの上なく真剣そのものだ。


「およそ察しが付いているとは思いますが、アリシア師匠は魔法に関しては一流です。国内屈指と言っても良いでしょう。僕や父上もアリシア師匠から魔法を教わりました」

「凄い人なんですね」

「はい。それは間違いありません。ですが、特異魔法が絡むと面倒な人でもあります」


 チラリとアリシアさんの方を見ると、自分に向けられた評価に憤慨しているのか、頬を膨らませている。


「面倒なんて失礼ね。もし特異魔法の謎が解明できれば、全ての人が同じ様にその魔法を使えるようになるかもしれないのよ? それって素晴らしい事だと思わないの?」

「それはそうでしょうけど、だからと言って特異魔法の使い手を半ば拘束するような形で研究に付き合わせるのはいかがなものかと思いますよ?」

「……拘束なんてしてないわよ」


 なんか、微妙な間があったような?


 アリシアさんは視線を泳がせている。

 拘束はしてないけど、それに近い事はしてたのかもしれない。……こわい。

 レンヴィーゴ様やスタンリー様のお師匠様という事なので、悪い人ではないのだろうけど、好きなモノを目の前にすると自重できないタイプなのかも。


 わたしの特異魔法については、しばらくは秘密にしておいた方が良いよね、きっと。

今週、寒暖差が大きくて、体調がヤバいです。

私、季節の変わり目に弱いので ( ノД`)シクシク…


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