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神殿での生活 3

「それじゃ、ノエルやポリーに話をしてみる事にしましょうか。確かにマール君も同じくらいの学習進度のノエルが居た方が勉強をしやすいかもしれませんし」

「わかったにゃー。ノエルと一緒だったら楽しそうにゃん」


 レンヴィーゴ様の配慮の言葉に、マールは安心したようなホッとしたような笑顔を浮かべる。


 まぁ、他の人たちはみんな知り合いで、すでにコミュニティが出来上がっている所に一人で入っていくのは精神的につらいのも分かる。

 わたしも高校に入って最初に部活の見学に行ったとき、一人だったから、スゴイ緊張したのを覚えてるよ。


 あとは、ノエル君が勉強に付き合ってくれる事を期待だね。


 そんな事を考えていると、レンヴィーゴ様がわたしの方に視線を向けたのが分かった。


「次はルミさんについてです。ルミさんには出来るだけ早く、神官見習いとしての生活を覚えて戴きたいと思いますが、これはルミさんが迷い人だという事がバレない程度の振る舞いが出来れば十分だと思います」


 わたしはコクリと頷く。


 もともと、わたし達が神殿に住む事になった理由は、王都から来る調査団の目から逃れるためだ。

 今の時点で迷い人だという事が発覚してしまうと、他の貴族やら王族やらに興味を持たれて、最悪の場合、囲い込もうとしてくるかもしれない。

 囲い込まれるだけならまだしも、そのまま監禁とかされて、知識を搾り取ろうとしてくるかもしれない。


 元の世界に帰りたいわたしとしては、それだと困る。


 なので、多少なりともそういった貴族やら王族やらに抗えるだけのチカラ──財力でも権力でも武力でも──を手に入れるまでは、迷い人であることがバレないように気を付けなくてはならないのだ。


 貴族は兎も角、王族に抗えるだけのチカラって、それって他の国の王族レベルのチカラが必要って事なんじゃ? なんて事が頭の片隅をよぎっていくけど、それは今は考えない事にする。


「神官見習いとしての振る舞いを覚えると同時に、他の事も色々学んで欲しいとは思っていますが……」


 レンヴィーゴ様は歯切れが悪い感じに言うと、チラリとアリシアさんの方を見た。


「大丈夫ですよ。レン様の時ほどには厳しくいたしませんよ。ご自身の経験から心配なさっているようですが、スタンリー様もレン様も、貴族家の男子でしょう? 厳しく教育を施すのは当たり前の事ではありませんか」

「それなら良いのですが……」

「でも、ルミさんは迷い人ですものね。こちらの世界の事はほとんど分からないのでしょうから、色々教えなければならない事は多いでしょうね」


 そんな事を言いつつ、楽しそうな笑顔を浮かべるアリシアさん。そして、そんなアリシアさんを見て、何やら心配そうな表情のレンヴィーゴ様。

 やはり僕が教えた方が良かったかも、なんていう不穏な事をつぶやいてる。こわいよ!


「とりあえずは、神官見習いとしての振る舞いから教えてあげてください。王都から調査団が来るまでには、それなりに見える様にしてもらわなければならないので」

「はい、わかりました。それと並行してポーション作りや魔法について、余裕があるようなら、この世界の事や歴史、王族や代表的な貴族、それと注意した方が良い貴族なんかも教えて差し上げた方が良いかしら?」


 頭の中で、教育計画を立てているらしいアリシアさん。楽しそうだ。

 そんなアリシアさんを見て、申し訳なさそうな顔のレンヴィーゴ様。


「すいません、ルミさん。僕より下の世代にはあまり高度な教育をするわけでは無かったので、アリシア師匠は人に教える事に飢えている状態かもしれません。色々覚悟を決めておいてください」


 こわっ! もしかして詰め込み教育とかされちゃうの? 


「あぁ、そうそう。ルミさんに色々教えるのは良いのだけれど、マール君にはどうするの? 読み書き計算だけで大丈夫なのかしら?」

「ああ、マール君には他の子供達と同じ程度の教育でお願いします。マール君には調査団が滞在している期間中には猫の姿になっていてもらいたいのです」

「猫の姿とは?」

「あぁ、説明していませんでしたね。実はマール君は特異魔法が使えて、その特異魔法は自分の姿を我々が知る普通の猫に姿を変えられるというモノなんです」


 レンヴィーゴ様の説明を聞いたアリシアさんが、驚きの表情でマールを見つめた。

 でも、マールの方は、自分の事について話し合いがされている事に気が付いていないのか、それとも、気が付いてはいるけど興味はないのか。

 のんきな顔であくびとかしてる。


「えっと、特異魔法って、あの、特異魔法よね?」

「驚かれるのは分かりますが、あの特異魔法です」

「ちょっ、ちょっと、見せて貰える事はできるかしらっ!?」


 おぉ。すごい食いつきだ。

 アリシアさんの突然の大声に、マールもビクッて身体を強張らせちゃったよ。


「マール、変身して欲しいんだって」

「にゃ。にゃんか取って食われそうにゃ……。ここで変身すれば良いにゃ?」


 わたしとレンヴィーゴ様が小さく頷き、アリシアさんが大きく何度も頷くと、マールはちょっと引いた感じになりながらも、わたしの膝から飛び降りて、着ていた服を脱ぎ始める。


「猫の姿になると、身体がちょっと小さくなるみたいで、服を着たまま変身すると服の中に埋もれてしまうんです」


 わたしがそう説明すると、アリシアさんはちょっと興奮気味にウンウンと返事をする。


 服を全部脱ぎ終えたマールが、唯一身体に装着したままなのは手甲型魔導装具だ。

 それを見たアリシアさんが、目をキラキラさせながら食い入るように見つめる。


 魔導装具っていうのは、魔導書を持つ魔法使いが、魔導書から魔法を行使する為に使うアイテムだ。

 これが無いと魔導書の魔法が使えないんだよね。

 魔導書を使わないで行使する魔法なら、魔導装具は関係ないんだけどね。


「まぁ。その腕に付けているのが魔導装具なのね? 手甲かしら? 珍しいわね。手甲型なんて初めて見たわ」

「マール君の場合、変身して猫の姿になると手で持つ必要のある杖などが使えなくなってしまいますし、指輪は猫の手には向かないので、人型でも猫型でもどちらでも身に付けておけるようにとルミさんが考えたんですよ」

「さすが異世界からの迷い人って所かしら。発想が柔軟ね」


 いやぁそれほどでも。てへへ。


「それじゃ変身するにゃー」


 そう宣言したマールが魔導装具に魔力を流すと、いつもの様に光が溢れ、その光を見たアリシアさんが目をウルウルさせている。


 アリシアさんから見ても、やっぱり特異魔法って珍しいんだね。

火曜日よりもマシだろうと、更新日を木曜日に変更したつもりだったんですが

さすがに決算月は火曜だろうが木曜だろうが厳しかったです。

来週からは少しはマシになるはず・・・。

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