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牛頭の巨人 8

 牛頭の巨人が討伐された翌日の朝。

 領主邸での食事を終えたわたしとマールは、レンヴィーゴ様に連れられて再び神殿へと向かっていた。


 昨日の夕食後にこれからの事について細々とした話し合いが行われ、牛頭の巨人に関する調査団が来ている間は神殿に身を隠す事になったのだ。

 調査団の規模も滞在期間も分からないから、念のため、わたしが借りている部屋も一度お返しする事になっている。


 辺境の片田舎であるスペンサー領ギーンゲンでは、ろくな宿泊施設も無いため、調査団のメンバーを領主邸に宿泊させなければならない。

 調査団の目的は、あくまでも牛頭の巨人に関する調査だけど、さすがに何日も同じ屋敷で生活すればわたしに対して違和感を持つかもしれない。そして、その違和感が大きくなればなるほど、わたしが異世界からの迷い人である事に気が付くかもしれない。


 誰か一人でも気が付いてしまえば、そこからドンドンと話が広がり、やがては国中の偉い人がわたし達を確保するために動き出すだろう。


 かつて、同じく迷い人であるドロシー・オズボーンが、一人の若者が玉座へ至る手助けをしたように、わたし達を手に入れた者は玉座とはいかないまでも、それなり以上の富や名声、権力を手に入れることが出来るのではないかと考える者は多いだろう、というのがスタンリー様とレンヴィーゴ様の共通の考えだ。


 そうならない為にも、わたしはスペンサー邸から離れていた方が良い。

 わたし、この世界に来てから、まだ何も成し遂げてないんだけどね……。ドロシー・オズボーンなんて歴史に名前が残る様な偉人と一緒にされても困るよ!


「……なんだか、面倒な事になりましたね」

「ご迷惑をおかけして申し訳ありません」

「ご迷惑をおかけしてるのはわたし達の方だと思うんですけど……」

「いえ、本来なら神殿ではなく、どこかの民家にでも移って貰えれば良かったんですが、あいにくと空いているような家が無いんです」


 スペンサー領は、まだまだ開拓がはじまったばかりの小さな領地だ。

 領主であるスタンリー様が貴族になってから、まだ10年も経っていないらしい。その為、必要最低限の建物しか作られていないし、空き家になってしまったような家も無いらしい。

 更に、いわゆる普通の家以外には、領主邸と神殿、あとは酒場を兼ねた食堂、各職人たちの工房くらいしかない。

 つまり、わたしが住めるような場所っていうのが無いのだ。


「神殿の部屋は、領主邸の部屋に比べると部屋が狭いので、お二人で使うとなるとちょっと狭いかもしれません」

「どこでも大丈夫にゃ~」


 マールって、基本わたしと一緒に寝てるからね。おまけにわたし自身も同世代の女性に比べてチョットだけ小さいし。

 普通の人が普通に寝られるベッドなら、わたしとマールなら二人で余裕で寝れると思う。


「あんまり狭いようだったら、寝る時だけはマールに猫の姿になってもらって、わたしの頭の下で寝て貰えば大丈夫かな?」

「それじゃただの枕にゃ! ルミしゃまのイビキでマールが眠れなくなっちゃうニャ!」

「わたしイビキなんてかかないよ!」


 イビキ、かかないよね? かいてないよね?

 ……なんか不安になってくる。わたし自身が知らないだけだったりする?


 わたし達がそんなアホな話をしている間に、神殿が見えてきた。

 正面扉の前には人影がある。どうやら神殿の管理者であるアリシアさんが待ってくれているみたいだった。


「おはようございます。師匠」

「おはようございます」

「おはようにゃー」

「おはようございます。レン様、ルミさん、マール君……あら? しばらく神殿に身を隠すのよね? 荷物は無いのかしら?」


 笑顔で挨拶を返してくれたアリシアさんは、わたし達を見て不思議そうに首を傾げた。

 わたし達はほとんど手ぶらで移動してきたのだ。


「一度、部屋を確認してもらってから運び込む予定です。それに、神殿ですから」


 神殿に住んでいるのは、基本的には神官だ。

 神官の中でも王都の神殿に居る様な偉い立場の人になれば、それなりの暮らしができるらしい。だけど、地方の神殿を管理するようなあんまり偉くない人は質素な暮らしをしている事の方が多いらしい。


 アリシアさんの場合は、魔法とかポーションとかの知識は国内でも屈指の実力者って事なので、それなりのモノに囲まれていてもおかしく無いけど、わたし達はそうはいかない。


 神殿に住むわたしぐらいの世代の女の子は、たいていの場合、見習いという立場になるため、質素な生活をしている事が多いらしいのだ。

 見習いにしか見えない女の子が、豪華な家具やら生活必需品を使っていれば、それはそれでオカシイという事になって、見た人に違和感を持たれる可能性がある。

 もちろん、調査団の人たちが神殿の見習いの部屋なんか覗くはずが無いんだけど、万が一の時の為にも、見習いと同じような生活をした方が良いという事になっていた。


 なので、この後に運び込む事になっている荷物も、ほとんど衣類だけの予定だ。ちなみに衣類に関しては、そこそこの服を着ていても良いらしい。なぜなら新品の衣類は高いからだ。

 現代日本だったら、服なんてたいていの人が新品を買って着る事ができるけど、この世界では違う。

 平民のほとんどは、新品の服を買うなんて出来ないのだ。なので平民の場合、服は古着屋で購入するか、上の世代のお下がり、または自分達の手で縫う事になる。


 スペンサー領のように小さな領地だと、新品を売る店どころか古着屋さえも無いので、自分達で手作りするか、上の世代のお古を貰うのがほとんどらしいんだけど、上の世代からお古を貰うっていうのは、家庭内だけでは無く隣近所という枠組みで行われるらしい。

 そして、その隣近所という枠組みの中に、普通にスペンサー家の領主一族も入っているという事だった。

 もちろん、領主一族の場合は立場的に貰う立場になる事は無いんだけど、領主一族が着ていた服は領民達の下の世代に流れていくらしい。


 なので神殿の見習いにしか見えない女の子がそこそこの服を着ていても「領主令嬢から貰ったお古の服なんだな」と解釈されるという事だった。


 多分、わたしが居なかったら、エルミーユ様のお古はポリーちゃんに回ったんだろうね。

ムッチャ短いです。

なんで朝7時半から仕事始めているのに、終わるのが夜の10時過ぎなの・・・(´;ω;`)ウゥゥ

土日もこまごまとした用事が重なって、PCの前になかなか座れなかったし・・・( ノД`)シクシク…

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