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牛頭の巨人 6

 この世界にはマーメイドが居ないのでは無いか。そう考えて、肩を落とすわたし。

 わたしだって小さな子供だった頃はあって、その頃には人魚姫の絵本を読んだ事もあった。

 元々がアンデルセンの童話だから、いろんな出版社からいろんな訳者さんと絵師さんの絵本が出版されてて、たいてい最後には王子様を傷つける事よりも、自分が泡になって消える事を選んで海に身を投じたところで終わるんだよね。


 子供心にだけど、人魚姫の気持ちに気づかない王子様の事が許せなくて、あれ以来、王子様って憧れの対象じゃなくなったんだよなぁ~。


 わたしがそんな事を考えていると、メモを見直していたレンヴィーゴ様が真剣な表情で質問してきた。


「ミノタウロスの弱点などは分かりますか?」

「弱点ですか? よく覚えてませんけど……知能が低いって所ですかね?」


 神話でのミノタウロスって、なにか弱点があったのかな?

 ゲームとかなら、シナリオやシステム上の都合でなにか弱点が設定されていたかもしれない。具体的には、遠距離攻撃ができないとか、魔法が使えないとか。でも、それってクリエイターさんたちの設定次第なところがあるからなぁ。

 わたしが言った知能っていう弱点だって、作品によっては、ヒトに見劣りしないレベルの知能があったりするし。


「僕たちが戦った時には、基本的に太い腕を振り回すような攻撃しかしていませんでしたからね。確かに、知能が高い戦い方とは思えませんでした」


 そのパワーには目を見張るものがあったけれど、結局はそれだけだったらしい。

 多人数で取り囲んで、慎重に間合いを取りながら遠距離攻撃を仕掛ける事で最小限の被害で倒す事ができたそうな。


「頭の角は大丈夫だったんですか?」

「あの角は当たれば大きな被害を受けたとは思いますが、それも当たればの話ですね」


 巨体と怪力に並ぶミノタウロスの武器が頭から伸びた一対の角だ。わたしの脚よりも太そうなその角があたれば、ヒトの身体なんて軽く吹き飛んじゃうはずだ。

 でも、流石は戦争で功績を上げて貴族になった元傭兵団団員と、そこの次期領主候補。さらりと言ってのける。


「それで、あの魔物は結局どうするんですか?」


 未知の魔物や生き物を発見した場合には、速やかに王宮にまで届け出る義務があるって話だったはずだ。


「父と改めて相談してからになると思いますが、血抜きをして内臓も抜き取った状態にして王都へ移送する事になると思います」

「そうすると、王都から誰かが派遣されてくる可能性が高いんですよね?」

「来るでしょうね」


 王都から人が派遣されて、未知の魔物の生態などについて調べる事になるだろうというのがレンヴィーゴ様たちの予想だ。


「そうなると、わたしとマールは隠れてた方が良いんですよね?」

「この狭いギーンゲンで身を隠し続ける事が出来るかどうかっていう問題がありますが、僕としては、今の段階でお二人の存在が外部に漏れるのは好ましくないですね」


 なぜなら、わたしが迷い人であり、マールは未知の生物だから。

 この世界の一部の人たちには、わたし達はわたし達だというだけの事で価値があると思われている。

 実際には、わたしはこの世界で何も成し遂げられていないし、マールだって元々はただの猫でしかないのに、だ。

 それだけ、わたしの前にこの世界へ迷い込んだドロシー・オズボーンという存在が偉大な功績を残したって事だ。


「わたし達、どうすれば良いですか?」

「……。領主邸にいれば、些細な事から怪しまれる事になるかもしれません。なので、神殿に入りませんか?」

「神殿、ですか?」

「はい。王都から派遣されてくる調査団が帰るまでの間、アリシア師匠の弟子として過ごしてもらうのが一番だと思うんです」


 レンヴィーゴ様によると、アリシアさんは王国でも指折りの魔法使いで、一部にそれなりの影響力を持つようなスゴイ人らしかった。


 もともと、領主であるスタンリー様が子供だった頃に、家庭教師として雇われたのが切っ掛けで繋がりができたらしいんだけど、その頃にはすでに優秀な魔法使いとして名を轟かせていたんだそうな。


 そんなアリシアさんだからこそ、少しくらい変な弟子を取っていたとしても探りを入れられる事を回避できるんじゃないか、という事だった。


 ホントにそんな上手いこと行くかな……。聞いてるこっちが不安になるよ。


「父と相談してからの事になるので、今日からすぐにというわけではありませんが、おそらくは父も賛同すると思います。これから魔物の解体をして、明日には出発をさせ、王都に到着するまでに五日、そこから向こうで派遣する調査団の人員を決めて準備を整えるのに長くても三日、調査団がこちらに到着するまでに三日から四日、あわせて十日から十二日ほどで外の人間が領内に入ってくる事になります」

「それならわたしは、本決まりになったら移動するくらいで良いですか? 少しは神殿での生活に慣れておかないと怪しまれそうですし」

「そうですね。昨日から神殿に居ます、なんて態度では怪しんでくださいと言っているようなものですからね。もっとも、調査団に選ばれるような者が領民の一人一人に興味を持って関わろうとするかは不明ですけどね」


 ポリーちゃんと離れなくちゃならないのは寂しいけど仕方ない。


「それでも、ほんのわずかでも可能性があって、その可能性を回避できる手段があるなら出来るだけの事はしておくべきだと思います」


 甘めに見積もって「あの時ちゃんと対策しておけば」と後悔するよりは、出来るだけの事をして「何事もなく終わって良かったね」となる方が絶対に良い。

 

「僕もそう思います。それに、アリシア師匠に弟子入りしてポーション作りを学んで貰えれば、それはそれで領の利益になりそうですしね」


 レンヴィーゴ様はそう言いながらニッコリ笑う。


 わたしとしても、無駄に膨大な魔力を活かすだけで領の利益になるというのなら大歓迎だ。なにしろ、手順や方法は確立されてるって事だからね。


 元の世界の知識で何か新しいものを生み出すなんて、何をどうすれば良いのかサッパリ思いつかないよ!

 ドロシー・オズボーンって凄すぎだよっ!


ルミは気が付いていませんが、この世界には猫耳美少女も狐耳美少女もウサ耳美少女も居ません。

その事に気が付いたとき、某糸色先生並みに叫ぶと思われます (*‘ω‘ *) <絶望した!

登場するかどうかは未定ですが、ルミパパも号泣すると思います。

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