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牛頭の巨人 3

 ミノタウロスの死体を確認した後、わたし達は元の調合部屋に戻って、地球のミノタウロスの情報を覚えている限りレンヴィーゴ様に話す事になった。


 調合部屋に戻ると、どこかへ出かけたのかアリシアさんの姿は無くて、置手紙の様なものも残っていなかった。

 もしかしたらポリーちゃんの所へ様子を見に行ったのかも。


 わたし達はさっきまで調合作業をしていた調合机を挟んで向かい合わせに座る。もちろんわたしの膝の上には、マールがお昼寝中だ。


 正面に座るレンヴィーゴ様は、いつもの様に興味津々って感じではあるんだけど、今回はそれだけじゃ無い。

 未知の魔物について、少しでも情報が欲しいって事なんだろうね。


 わたしが知っているミノタウロスとこの世界に現れた牛頭の巨人が同一の存在とは限らない。

 それを前提としての話を聞いてもらう。


「記憶があやふやなんですけど、わたしの世界のとある国の神話に出てきた架空の怪物のはずです」


 ギリシャの神話だったような気がする。もしかしたらローマ神話だったかもしれないけど、この二つの神話はどっちかがどっちかに影響を与えてて、密接な関係にあるって話を聞いた事がある。

 そのせいで、あやふやなんだよ。……そういう事にしておこう。


「その架空の怪物の名前がミノタウロスというのですね?」


 テーブルの反対側に座ったレンヴィーゴ様が片手でペンを弄びながら訊ねてくる。改めての確認だろうその質問に、わたしはコクリと頷く。


「その神話の中で、ミノタウロスと呼ばれる怪物はどういう扱いでしたか?」

「どういう扱いとは?」

「例えば、神々の使途であるとか、神そのものであるとか、または神や人と敵対するものであるとか」

「あぁ、それだったら、確か……雄牛と人間の女性の間に生まれた子供だったかな? それで迷宮に閉じ込められるんですが、最後には英雄に討伐されたって話だったはずです」


 自分でも、だいぶ端折った気がするけど、あんまり覚えてない事を誤魔化すためだったりする。


 半人前とはいえ、ぬいぐるみ作家としては、ぬいぐるみを作る際に色々資料をあさる事はある。

 ミノタウロスのぬいぐるみを作る機会があったなら、最低限な部分は調べたはずだし、それで少しは覚えてたかもしれない。

 でも、半人前とはいえぬいぐるみ作家である以上は、需要というのも考えたりもする。


 つまり、何が言いたいかというと、ミノタウロスのぬいぐるみなんて作った事は無いんだよ! 作るつもりも無かったミノタウロスをそんなに詳しく調べるはずが無いじゃん!


 そういうわけで、わたしはごく表層部分をつまみ食いしたような知識と、神話のミノタウロスを元ネタにしたゲームキャラとしての部分の知識しか持っていなかった。


「雄牛と人間の女性の間に生まれた子供、ですか。……ちょっとお伺いしたいんですが、ルミさんの居た世界では、そういう他種族との間に子供が生まれるのが一般的な事だったんですか?」


 レンヴィーゴ様がわたしの胸でウトウトと眠るマールにチラチラと視線を送っているのが分かる。

 ……なんでだろ? マールが猫と人間の間に生まれた子じゃないかと疑ってる?


「わたしの居た世界では、人間と他種族の間に子供が生まれたって話は聞いた事がありませんね。ミノタウロスの場合は、あくまでも神話上の、架空のお話です」

「ルミさんの世界でも、他種族同士では子供は生まれないという事ですか?」

「あー、そうとも言い切れないです。例えば、|獅子≪ライオン≫と虎の間には子供が出来ます。その場合、生まれた子供はライガーとかタイゴンって呼ばれてて、両方の特徴を備えてたりしますね」


 父がライオンで母が虎だとライガー、逆に父が虎で母がライオンだとタイゴンって呼ばれてた。

 自然界では出会う事のない二種族だけど、人工的に繁殖させることが出来る。でも、先天的な疾患を持つ個体が多いらしい。


「あぁそれは、ロバと馬の配合でラバが生まれるようなものですね」


 おぉ。この世界でもロバと馬とで交配してラバを産みだしてるのね。

 馬とロバはどちらも家畜として人の社会に溶け込んでいるから、偶発的にロバと馬が配合されちゃう事もあったのかもしれない。もしそうなら、この世界にもラバが居る事は全く不思議じゃ無い。


「虎とライオン、ロバと馬の様に、生物種として近い仲間同士なら交配して子供が出来るのは分かります。ですが牛と人間というのは……」

「近くないですね。そういうのはわたしが居た世界でも現実には居ませんでした」


 牛の仲間だと、確かビーファローっていうのが居たはず。牛と水牛の間に生まれた種だったかな?

 もちろん、人間と牛が交配したなんていうのは、神話や伝承でしか聞いたことが無い。


「そうなると、牛と人間を合わせたようなあの魔物は?」

「もともとそういう種族っていう事ですかね?」


 ゴブリンとかコボルトの様に、そういう種族って事なんじゃないかな?


「そうかもしれませんが、その場合には、これまで知られていなかったのはオカシイという事になりますね」

「あのー。わたしの居た世界でも、知られていない新しい生物が発見されるなんて事は稀に良くありますよ?」


 自分で言っておいてなんだけど、稀なのか、良くあるのかどっちなのか。


 有名どころだとジャイアントパンダなんかは、確か1800年代になってから発見されてたはず。もちろん現地に住んでいる人たちは存在を知っていたんだけど、世界的に認知されたのは割と最近の事なのだ。


「それは、おかしくないですか?」

「え? おかしいですか?」

「ええ。おかしいです。全ての生き物は神々が産みだしているんですよね?」

「えぇ……」


 そういえば、この世界にはまだ進化論とか無かったんだった。


「全ての生き物は神々に生み出されたっていうのは、神話とかのお話ですよね?」

「それは確かに神話の時代からの話ではありますが……現実に、その時に生み出された存在が今なお存命ですから、間違いない話ですよ?」


 進化論が提唱されていないのは、そういう事を研究する人が居ないんだろうって事で、まだ納得できる。


 だけど、神話の時代に生きていた存在が、今でも生きているって、それってどういう事なの?


中の人はラノベとかゲームとかでミノタウロス君の事は割と知ってるつもりなんですが・・・

今の時代の普通の女子高生とかにはどの程度認識されてるんでしょうね?


正直、身近に現役女子高生とか居ないので確認も出来ません・・・(´・ω・`)

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