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ポーション作りのお手伝い 18

 マールの言葉で、いつの間にか話がそれていた事に気が付いた。


 もちろんポーションだって不味いよりは美味しい方が良いけれど、薬としてのポーションが美味しいからといって、それを清涼飲料水の様に気軽に飲むわけにはいかない。

 ポーションは美味しかろうが不味かろうがポーションでしかなくて、怪我を治すための物だ。美味しいからと言って健康な状態で飲むものじゃないはずだ。


 それに、普通に考えれば、美味しいジュースと美味しい薬だったら、美味しさの程度が同じくらいであるなら美味しいジュースの方が安く済むはずだ。

 だって、美味しいジュースはただ美味しいだけだけど、美味しい薬は怪我を治す効果まであるんだからね。


 ポーションは貴重品だ。

 アリシアさんがひと月で四本とか五本しか作れないものという事は、それなりのお値段になっても不思議じゃない。


 そんな貴重な物を、ひと月近くの間ほぼほぼ何もしていないわたしが、美味しいからって理由だけでポーションをがぶ飲みする訳にはいかないよね。


 なので、わたしが欲しいのはあくまでも美味しいと思えるジュースであって、美味しい薬じゃないんだよ。

 もちろん美味しいジュースを作る過程で、ポーションも美味しくできる方法が見つかるならそれは大歓迎だけどね。

 もし怪我をしちゃった時に毒々しい味のポーションだったら、やっぱり飲むのを躊躇しちゃう気がするし。


「僕としては、そのミックスジュースとやらを作るよりも、ポーションの味を改善して貰いたいですけどね。……具体的な方法は何か思いついていますか?」


 そりゃ、レンヴィーゴ様は普通にお酒が飲めるからね。次期領主候補としては領民の安全に関わるポーションの方が優先されても不思議じゃない。

 それに、もしポーションの味が改善される事に伴って身体の不調をきたすことが無くなるのなら、戦闘中にポーションを摂取してすぐに戦線に復帰なんて事も出来るようになるはずだ。


 実際にどの位の人がポーションを飲む事で体調を崩すのかは分からないけど、体調を崩すのが仮に一割だったとしても、十人に一人は怪我をしたら戦線を離脱しなくちゃならないって事だ。

 それは残った九人の負担が増えるって事でもある。


 そう考えれば、次期領主様としてはポーションの方に興味が向くのは当たり前だよね。まぁ、ポーションの味と、飲んで体調を崩すことが繋がっていない可能性もあるけど。


 そんで、個々人の魔力の個性になっている余計な部分。それを取り除く具体的な方法として、実はちょっと試してみたい事はあるんだよね。

 上手く行くかどうかは全く分からないけど、


「ちょっと試してみたい事はあります。上手く行くかどうかは全く分からないですけど。でも、ポーションについてはやっぱり色々試行錯誤しながらになると思うんです。それで、薬草の種とか? そういうのが無駄になっちゃう事もあるかと思うんですけど、大丈夫なんですか?」

「ある程度なら大丈夫よ。定期的に行商人が持ち込んでくれることになっているから」

「え? えっとギルドから買わなくちゃいけないんですよね?」

「そうよ? 行商人は運んできてくれるだけね。たまには私がギルドの方に足を運ぶこともあるけど、毎回だと大変じゃない? だからお金を払って運んできてもらうの」


 アリシアさんの言葉によると、行商人が自分の商品を売りに来るついでに、運送業のような事もしてるって事になるのかな?

 まぁ、もともと行商人の人が売りに来る商品だって、行商人の人が作った作物とか導具とかじゃなくて、どこかで仕入れてきた物だろうから、大して違いは無いのかもしれないけど。


「それじゃ……、まずは味の事だけを考えれば良いミックスジュースからやってみます。それで上手く行けば、その応用でポーションの味の改善にもつながるかもしれませんし」


 本当だったらポーションの様な、人の命に係わる様な事には関わりたくないんだけど……。


 今のままでも、ポーションはポーションとして人の命を救えているのだ。

 そのポーションの何かを変える事で、もしかしたら今までなら救えていた命がわたしのせいで救えなくなる事だってあるかもしれない。


 もしそんな事があったら、……そんなの耐えられるとは思えない。


 もちろん、何かを変える事で味や副作用的な物が改善されて、それによって間接的に助けられる人も居るかもしれないんだけどね、可能性としては。


「もちろん、僕もお手伝いはしますよ」

「はぁ。よろしくおねがいします」


 レンヴィーゴ様はすっかり乗り気だ。

 むしろレンヴィーゴ様の主導でわたしがお手伝いって形にした方が良いんじゃないの?


「それでは、さっそく始めてみましょうか。まずは導魔の果実から、ですね屋敷の僕の部屋に保管してあるので、すぐに取ってきますね」


 そういうとレンヴィーゴ様は軽い足取りで部屋を出て行ってしまう。わたしはその背中を見送りながら、心の中で大きくため息をついた。


 とりあえず、やってはみるけど……。わたしが思いつくような事は、この世界の人だって思い付くと思うんだよね。

 つまりは、すでに何人もの人が挑戦してきたはずなのだ。


 それなのに出来なかった事を、わたしが出来るようになるとは思えないんだよね。

 もちろん、現代日本人として多少の知識はあるから、その分はアドバンテージになるかもしれないけどさ。


「あんまり気乗りしてないみたいね?」


 そんな事を考えていると、アリシアさんが少し困った様な顔で問いかけてきた。


「そう見えますか?」

「ん~、気乗りしないっていうより、自信がない、かしら?」

「正直、どっちもですね」

「もし出来なかったら、とか考えてるのかしら?」

「はい……。期待だけさせて、だけどやっぱり出来なくて、時間と労力の無駄にしかならないんじゃないかって思っちゃいます」

「出来なかったら出来なかったで良いのよ。そのやり方じゃ出来ないって事が分かるだけでも一歩前進なんだから。」


 それは確かに。

 でも、ミックスジュースに関してはそれでも良いけど、ポーションについては別の問題もある。


「……もし、わたしが美味しいポーションを作ったとしてですね、それが、味は美味しくなったけど怪我を治す効果が下がっていたなんて事になったら、今までなら救えていた命が助けられないなんて事にならないですか?」

「それは……まぁ、無いとは言い切れないわね」

「もしそうなったら、って考えると……」


 アリシアさんはわたしの話を聞いて苦笑した。


「そんなの、使い分ければ良いだけじゃない?」

「え……?」

「もし、本当に美味しいと感じるポーションが出来て、だけど効果が落ちちゃっていたなら、それは命に係わらないような怪我にだけ使えば良いんでしょう? それで命に係わるような重傷を負った人には、従来通りの不味ーいポーションを飲ませておけば良いのよ。簡単でしょ?」


 言われてみれば、その通りだった!


 元の世界だって、怪我の程度によって治療法は違うのは当たり前だ。

 転んで膝小僧を擦りむいたくらいだったら消毒液をつけて絆創膏をペタって貼るだけで済むだろうけど、交通事故で骨折とかしちゃってたら病院で手術しなくちゃならなくなるはず。

 ポーションだって同じだ。

 放って置いても治る様な傷なら味重視のポーションを飲めばいいし、瀕死の重傷とかだったら毒の様に不味くても効果の高いポーションを飲めば良い。

 両方を準備しておけば良いだけだ。


 幸いな事に、わたしの魔力は無駄に思えるくらい多いからね。両方のポーションを作っても、魔力は十分に足りるはずだ。


 アリシアさんのおかげで、なんだか気持ちが楽になった気がするよ。

書いてる途中に「あれ?これってどういう設定にしてたっけ?」って思い出せない事がよくあります。

今回でいうと、レンがお酒を飲めるかどうかっていう部分。

多分、お酒を飲めるかどうかは設定して無かった筈で

もし設定してあったとしても、中世ヨーロッパ風の世界の男性なので飲めないっていう風には設定しない筈・・・

とは思っているのですが。

以前どこかで下戸と書いてあったらごめんなさい <(_ _)>


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