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ポーション作りのお手伝い 12

「回復魔法とやらの事はひとまず置いておくとしましょう。それよりも、今は目の前にあるポーションです」


 レンヴィーゴ様がそう言いながら、視線をポーションの入った小瓶へと向ける。


「そう、ね。どうしましょう?」


 レンヴィーゴ様に続いて、アリシアさんも難しそうな顔でポーションの瓶を見やる。


「まぁ、ルミさんの無尽蔵ともいえる魔力をもってすれば、予想できた事ではありますが……。これだけの量のポーションをたった一日で作り出せるという事はしばらくは伏せておきたいですね」

「そうね。もし、これだけのポーションがこんなに簡単に作り出せるってバレたら、きっとマクマホン家の連中が自分の所に引き込もうと画策してくるわよ」


 マクマホン家ってなんだろう?

 なんか聞いた事がある様な無い様な……。


 そう思って頭をひねっていると、不意に思い出した。

 以前、レンヴィーゴ様やスタンリー様から聞いた、ちょっかいを出してくる大貴族の名前がマクマホン家だったような気がする。


「でも、ルミさんにはこれからもポーション作りに協力してもらいたいわね」

「そうですね。これだけポーションが作り出せるなら、今まで以上に気軽に使えるようになるはずです」


 ポーションって、気軽に使って良い物なのかなぁ~?

 ポーションを飲んだポリーちゃんが、傷跡も残さない程に完全に治ったとはいえ、副反応でまともに動けないほどグッタリしていた様子を見ていただけに不安になる。


 でも、今まで大して役に立っていないわたしが活躍できるチャンスだと考えれば、断る事も出来ない。


「わたしがポーションを作る事で、どのくらいお役に立てますか?」

「スペンサー領は、ご存じの通り辺境の開拓地ですからね。ここに住む人々は常に命の危険が付きまといます。それを大量のポーションで軽減できるのだとしたら、金銭には代えられない価値があると言って良いと思いますよ」


 そう、さらりと言ってのけるレンヴィーゴ様。


 わたしにはこの世界の常識が足りてないんだから、いくらでも誤魔化して、安くポーションを作らせる事だって出来るだろうし、実際、そういう風に話を持って行こうとするお貴族様だって居るだろうに。

 そういう悪徳貴族みたいな事をしようとしないから、こんな辺境の領地に押し込められちゃってるんじゃない? って思っちゃう。


「もしポーションを大量に作り出せたら、それは他の領地に売ったりしないんですか?」

「他領に売りに出す事ももちろん可能ではありますけど、あまり大量のポーションを売りに出すとルミさんやマール君の存在が知られる事になりかねません。これまで自領内で使う分のポーションを作るのが精いっぱいだったですからね。どうやって生産量を増やしたんだという話になりますから」

「それじゃ、あんまりお金は稼げないですね……」


 お金。

 お金は大事だ。何をするにもお金はかかる。美味しい物を食べるのだって、綺麗な服を着るのだってそうだし、寝泊まりする場所を確保するのにもお金はかかる。

 綺麗ごとだけでは生きていけないのだ。


「お金、ですか。お金というのなら、そうですね……。アリシア師匠と同じ品質のポーションであるなら、一般的な領民よりも多く稼げると思います。アリシア師匠が弟子を取って、その弟子が作ったポーションを領内に、アリシア師匠が作ったポーションを他領に売りに出すことにしたとすれば誤魔化せるでしょうから。もちろん、常識的な数量しか販売できませんが」


 レンヴィーゴ様の言葉に、うーんと考える。


 ポーション販売は出来る。でも大量に売りさばくことは難しい。

 でも、わたしは出来るだけ時間をかけずにお金を稼いで、空いた時間で元の世界に変える方法を探したい。


 アリシアさんのお手伝いをした事で、一日あればポーションを作る事が出来るのは分かった。

 問題は、その一日で作ったポーションがどの位の金額で売れるか、だ。


「ポーションってどの位のお値段で売れるんでしょう?」

「値段ですか……アリシア師匠が作った物は評判が良いですからね。正直、一本売れれば、普通の領民と同じくらいの生活は出来るくらいにはなると思いますよ?」


 え!? 思ったよりお高く売れる!?


 日本の大卒初任給はだいたい22~23万円くらいだ。

 これは、わたしがネットでぬいぐるみを販売するようになった時にわざわざ調べた事があるので間違いない。

 物価とか違うだろうから一概には比較できないけど、この世界では、ポーション一本でそのくらいのお金を稼げるって事になる。


「それってボッタクリじゃ……」


 思わず口をついて出てしまった言葉に、レンヴィーゴ様とアリシアさんは揃って苦笑を浮かべた。


「ルミさん、高く売れるのはアリシア師匠のポーションだからですよ。アリシア師匠が作るポーションは他の薬師が作るものよりも効果が高いんです」

「こう見えて、それなりに優秀なのよ、私」

「え? あ、そうですよね。なんか失礼な事を言っちゃいました。すいません」


 お二人によると、駆け出しの新米薬師の場合、アリシア師匠の半分の値段で売れれば大喜びしちゃうレベルで、普通は5分の1くらいの値段になるらしい。


「アリシアさんの作るポーションと他の人が作るポーションは、何が違うんでしょう? いや、もちろん効果が高いのはそうなんでしょうけど、どこが違って効果が変わるんでしょう? 配合の比率とかは等量でしたよね?」


 わたしの魔力で育てた薬草類とアリシアさんの魔力で育てた薬草類で違いが無いのだとしたら、他の部分に違いがあるはずだ。

 

 そこまで極端に違いが出るような工程が有ったって事?


「他の薬師が、アリシア師匠と同じ種類の薬草を使っても同じ効果を得られるとは限りませんね。むしろアリシア師匠と同じだけの効果を発揮するポーションを作れる人は居ないんじゃないでしょうか」

「それは言い過ぎよ。私よりも凄い薬師は大勢いるわ」


 そういって照れた様子を浮かべるアリシアさん。なんだかカワイイな。


「言い過ぎなどと言う事は無いと思いますが……。まぁ国一番かどうかは分かりませんが、国中の薬師たちの中で名前が通っているのは間違いないですね」

「それって同業者の中で、知らない人は居ないって事ですか?」

「そうです。アリシア師匠の弟子というだけで、薬師の間では一目置かれるほどですよ」


 弟子というだけでそれだけの評価を受けるのなら、やっぱりアリシアさんってスゴイ人なんだろうね。

 ぱっと見の印象は食堂のオバサンなんだけど。

 フィクションで、女性の凄腕薬師なんていうと、眼鏡黒髪で白衣のマッドサイエンティストみたいなイメージがあるんだけど、残念ながら正反対に近い印象だ。


「王都で研究を続けているような人たちには敵わないわよ、私なんて」


 そう謙遜している様子のアリシアさんだけど、師匠と弟子の関係であるレンヴィーゴ様に称賛されて嬉しそうな顔をしている。


「それで、ポーションの違いだったわね。ポーションって、作り方は人それぞれなの、特に原料になる薬草類は基本になる一つ以外はみんなが違ったりするのよ」


 頭にハテナマークが浮かぶ。

 基本となる薬草以外は、それぞれ独自の薬草を入れてるって事だろうか?


 そういえば、日本で売ってた薬とかも主成分以外はメーカー毎に違う成分が入っているって聞いた事がある。

 それと同じって考えれば良いのかなぁ~?


 そこまで考えて、ふと気が付いた。


 わたしって、アリシアさんのポーション作りのお手伝いしちゃったけど、それって企業秘密を知っちゃったって事じゃ無い!?

 

 これって、狙われる要因がまた一つ増えちゃったって事になっちゃう様な……。

 こわいよぅ~~。

先週休んでしまったのは、実は・・・ただのサボりです!

ゴールデンウィーク前でちょっと気が緩んじゃっただけなんです!ごめんなさい! (*>ω<)=3

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