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ポーション作りのお手伝い 6

 わたしとマールは、魔の森から戻ってきたレンヴィーゴ様たち討伐隊一行を出迎えようと調合室を出る。

 本当に全員が怪我無く戻ってきたのか、発端となったノエル君が無事に見つかったのかが気になるからね。


 ポーション作りの方は、残りは小瓶に詰め替える作業だけだからアリシアさん一人で問題ないらしい。

 もともと、ポーション作り自体が時間さえかければアリシアさん一人で出来る作業らしいからね。


「ノエルはダイジョブかにゃ……?」


 心配顔のマール。マールにしてみれば、ノエル君は初めての対等な友達なんだよね。

 日本に居た頃には、動物病院とかで他の動物に遭遇する事はあっても、基本的には完全室内飼いだったマールは他の動物とじゃれたり遊んだりなんて事は無かったからね。

 もちろん、わたしもマールの事は友達の様に思っている。小さなころからずっと一緒だったし。

 でも、わたしとマールの間には、本人同士が意識していなくても、どうしても飼い主と飼い猫という関係が成り立ってしまう。

 つまりは対等じゃないのだ。


 その点、ノエル君の場合は違う。

 飼い主側に立場の違いはあるけど、ノエル君もマールもお互いがペット同士で立場が近い。おまけに体格的にも同じくらい。

 マールの方がお兄ちゃん的な振る舞いになる事は多いけど、それでも、近所に住む幼ともだちっていう風になるんじゃないかな。

 そういう意味でマールにとって、ノエル君は特別な存在なんだと思う。


「無事に見つかってると良いね」

「にゃぁ~」


 そんな話をしながら神殿の前庭に戻ると、人が一杯集まっていた。その中心に居るのはスタンリー様とレンヴィーゴ様だ。


 二人を取り囲むように集まっている人たちからは、調合室に居る時に聞こえた歓声の様なものは無くなってて、何やら真剣な顔つきをしている。

 でも、怒りとか悲しみとかは感じられないかな。ただ、何か困っているような表情には見えるかも。


 前庭に集まっているのは、30人くらいかな? 子供とか女の人は少なくて、男の人が多い気がする。

 わたしとマールが集まった人たちの間を縫うように進んで二人のもとに辿り着く。

 スタンリー様は周囲に集まる人たちに何かを説明してて、その隣に立つレンヴィーゴ様の腕には目を閉じてじっと動かないノエル君が抱えられていた。

 パッと見た感じでは怪我とかをしているようには見えない。だけど、意識があるようにも見えない。


 ノエル君の事も気になるのは確かだけど、それと同じくらいに気になるのが、魔の森で何が起こっていたのかだ。


 マールはすぐにでもノエル君が無事な事を確認したかったみたいだけど、今はスタンリー様の話を聞く事を優先してもらうため、腕の中から飛び出そうとするマールをしっかり抱き絞めた。

 それでわたしの意図が伝わったのかマールは身じろぎするのを止めて大人しくなってくれた。


「……俺が森に入った時には既に討伐は大詰めだったので、どの程度の力量があるのかは最初から相手にしていたレンから聞いてくれ」


 話の途中から聞く事になったのでスタンリー様が何について語っているのかハッキリとは分からないけど、どうやら魔の森で遭遇した魔物がどういった姿形でどのくらい強かったのかっていう話っぽいね。

 話を振られたレンヴィーゴ様は、話を引き継ぐ事を了承するかのようにスタンリー様に対して一度頷いてから周囲に集まる人たちを見回して話し始めた。


「それでは、続きは僕の方から。まずは先ほど父から話があったように森の中で遭遇したのは、これまで確認された事の無い未知の魔物です。特徴としては巨大な体躯、牛の様な頭と下半身をしていますが、胸部から腹部、前腕はヒトの様な姿です。簡単に言えば二足歩行で牛頭の巨人といったところでしょうか」


 取り囲んでいる人たちの間に小さなざわめきが起こる。


「そんな魔物が居るのか? 聞いたことが無いぞ?」

「俺も聞いたことが無いな、誰か話だけでも知ってる奴は居るか?」

「レン坊が知らんもんをワシ等が知るわけなかろうが」


 んー?

 なんか皆、知らないっぽいけど……、それって『ミノタウロス』じゃないの?

 たしかローマ神話だったかギリシャ神話だったかに出てくるモンスターが牛頭の巨人だったよね?

 わたしからするとラノベとかゲームでお馴染みのモンスターだけど、この世界では一般的じゃないのかな?


「それじゃ、魔人の可能性もあるのか?」

「魔人かどうかは分かりませんが、とりあえず魔法を使う様子は有りませんでしたね。それと、力任せに振り回すだけという感じですが武器を扱う事は出来るようです。強さ的にはオーガと同等かやや上といった所ですね」


 取り囲んだ人の問いかけに淀みなく答えるレンヴィーゴ様。


 オーガっていうのは、日本語で言えば鬼って感じかな? 角が生えてたり牙が生えてたりする巨人の事だ。

 だけど、魔人っていうのは、この世界では初めて聞いた単語かもしれない。どういう存在を魔人っていうんだろうね?


「オーガより上という根拠は?」

「体格だけならオーガとほぼ同等ですが、大きな角と体のあちこちに生えたゴワゴワとした被毛の分オーガより上と判断しました。単独で距離を詰めて戦うのはかなり厳しいでしょうね。此方の攻撃はなかなか致命傷にはなりませんが、あちらの攻撃は全てが一撃必殺という感じです」


 レンヴィーゴ様がそう答えて、やれやれと両手を広げるジェスチャー。


 その後も、領民たちからの問いにレンヴィーゴ様が答えるという形で話し合いは進行していく。


 しばらくは単独での魔の森への侵入は控えた方が良いとか、討伐した魔物の死体を回収しなくちゃならないとか、未知の魔物の為、王宮へ使いを出さなくちゃならないなんていう話が延々と続く。


 正直、わたしは早くノエル君の無事をポリーちゃんに教えてあげたいんだけど、なんか話し合いがピリピリとした状態で抜け出せない雰囲気になっちゃってるんだよね。


 どうしようかと悩んでいると、レンヴィーゴ様の腕の中でノエル君の鼻がぴくぴくと動いている事に気が付いた。

 ノエル君の意識が戻りかけている?


 わたしは、話が途切れた一瞬の隙をついて一歩踏み出した。


「レンヴィーゴ様、ノエル君が……」

「おや、目を覚ましそうですね」

「ノエル君は怪我とかはしてないんですよね?」

「はい、単なる酒の呑み過ぎです。もしかしたら、これから二日酔いに苦しむかもしれませんね」


 そう言って苦笑するレンヴィーゴ様。


 ノエル君はジャッカロープという角の生えたウサギだ。

 そのジャッカロープは種族的にお酒が大好きすぎて、お酒の匂いに抗うことが出来ずに釣られてしまうという事だった。

 つまりレンヴィーゴ様は魔の森で未知の魔物を討伐後に、ノエル君をおびき出すためにお酒の罠を仕掛けてたんだね。


 そのお酒の罠に、ノエル君はものの見事に引っかかったらしい。

 

 レンヴィーゴ様の腕に抱かれたノエル君は、そう言われてみれば、なんだか幸せそうな表情をしているようにも見えてくる。


 ノエル君は皆に心配と迷惑をかけたんだから、目が覚めたら罰だと思って甘んじて二日酔いに苦しむのが良いと思うよ。


実は私、お酒飲めません。

忘年会とか新年会とかで乾杯するときもコップにビールとか注いでもらって乾杯はするんですが

乾杯のあとは口もつけずにコップごと隣に座った人に渡して、新しいコップでウーロン茶とか飲み始める人です。

なので、人生の1割くらいは損しているような気がしてます・・・。

ファンタジー系ラノベに出てくる大人キャラってお酒飲むキャラが多い気がするんですが、

正直、お酒の良さが分からないので、今後、お酒飲むシーンを描かなくちゃならなくなった時が不安です・・・orz


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