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ポーション作りのお手伝い 4

 わたしの前にあるのは鉢に植えられた植物。大根とか人参とかの根菜の葉っぱみたいな気がする。

 四つある鉢の中の一つなんだけど、他の鉢に比べてちょっと深さのある鉢だから、根っこ部分が伸びる草なのかも。


 わたしが魔力を注ぐ前までは、背丈が5センチくらいでしかなかったのに、今は3倍くらいの大きさに育ち、たくさんの葉っぱを一杯に広げている。


 そして、もう一つ。

 頭を抱えるアリシアさんの顔もそこにはあった。


「あの、アリシアさん?」

「え、ええ。分かってる、分かってるわ。今は目の前の現実をありのままに受け入れて、ポーションを作らないと、よね」


 そう言って無理矢理に困った様な笑顔を作るアリシアさん。


「あの、魔力はまだ余裕があるつもりなんですけど、他の鉢にも魔力を注いだ方が良いですか?」


 わたしの言葉にアリシアさんは少し悩むようなそぶりを見せる。


「そうねぇ……。でも子供のルミさんに大きな負担を背負わせるわけにはいかないわ」

「あー。えっとわたし、もう十五歳は過ぎてるんですけど……」

「えっ!?」


 悩んでいたはずのアリシアさんの顔が驚きの表情に変わった。


 ええ、分かってますよ。

 日本人の中でも幼く見られるくらいだからね。

 基本、ヨーロッパ系の顔立ちのこの世界だもの、余計に幼く見えるんだと思う。レンヴィーゴ様だって、わたしの事を10歳程度だって思ってたっぽいし。


「ずいぶんしっかりした子だなぁとは思ってたけど……それじゃ、こっちの鉢もお願いできる? あ、無理はしなくて良いから、一種類だけを大きくするよりも、全部の鉢の薬草を少しずつでも大きくしてもらいたいわ」


 本当にしっかりしているのは、わたしより、むしろポリーちゃんの様な気がしないでもない。

 ポリーちゃんはホントに10歳くらいの年齢なのに、すでにお屋敷で働いてるし。

 わたしが10歳位の時には、たまに料理の手伝いとか掃除の手伝いとかするくらいだったよ。


 頭の中でそんな事を考えていると、スカートの裾を引っ張られる感覚。話を聞いてもらいたい時にマールが良くやる合図だ。


「マール、どうしたの?」

「にゃー。マールもやってみたいにゃ」

「あ、どうなんだろ? アリシアさん、この子も魔力を流すお手伝いをしても大丈夫ですか?」


 わたしがそう尋ねると、不思議そうな顔でマールを見るアリシアさん。


「マール君、だったかしら? マール君も魔力があるのよね? 問題が無い訳じゃないけど、今は少しでも魔力を流せる人が多い方が有難いから、やってもらえるかしら?」


 む?

 実はマールがやると問題があるの?


 ちょっと引っかかる部分はあったけど、マールはそれに気が付かないまま、嬉しそうに椅子をよじ登って座面の上に立った。


「にゃー。マールはどれに魔力を流せばいいにゃ?」

「それじゃ、こっちの鉢にお願いできるかしら?」


 そういってマールの前にまた違う植物が植えられている鉢を差し出すアリシアさん。


「ルミさんはこっちの鉢をお願いね。でも、無理はしないで頂戴。ルミさんに何かあったら私がレンに怒られちゃうから」


 そう言って、ちょっと心配するような表情を浮かべながらもう一つの鉢を差し出すアリシアさん。


 心配してくれるのは有難い話なんだけど、正直、わたしが魔力を枯渇してどうにかなるって考えずらいんだよね。

 これまで魔力を使う経験なんてほとんど無かったけど、その数少ない魔力行使の際にもほとんど減った様な気がしなかったから。しかも、それもすぐに補充されちゃう感じだったし。


 そんな事を考えながら、新しくアリシアさんに差し出された鉢に植えられている植物を見ると、やっぱりこれまでとは違う植物だ。


 ポーションって、一つの植物から作るんじゃなくて、複数の植物の成分を調合するのかもしれない。

 まぁ、日本で売られていた薬品だって一つの成分しか入ってないなんてのは無かったんだろう。……たぶん。


 マールが鉢植えに向けて魔力を流しているのを横目で見つつ、わたしも新しい鉢に向けて魔力を流していく。

 一気にではなく、ちょっとずつ。だけど途切れさせる事も無くに魔力を注いでいくと、鉢に植えられた植物は魔力を栄養にしながらスクスクと育ち、最初の三倍くらいの背丈にまで成長した。


「にゃー。すぐに大きくなって面白いにゃ」

「マール君も、たくさん魔力があるのねぇ」

「ルミしゃまはもっとあるにゃ」


 マールの前にある鉢にもそこそこ大きく育った草があるんだけど、わたしの前にあるのはそれ以上に育っている。


「あの、最初にアリシアさんが魔力を注いでいた草にも魔力を注いだ方が良いですか?」


 四つの鉢植えを均等にって事は、一つのポーションを作るのに四種類の植物が必要って事なんだろう。

 つまりは、成長の足並みがそろって無くて成長が遅い植物があると、ポーションは作れないって事になるんじゃないのかな?


「まだ余裕があるのならお願いできる? これも他のと同じくらいにまで成長させられれば、すぐにでも次の工程に進める事ができるのよ」


 チョット申し訳なさそうな表情で言ってくるアリシアさんに「わかりました」と答え、一応自分の身体の中の魔力を確かめる。


 いつもと変わりない。っていうか、減っている感じが無い。多分、魔力を使っている瞬間にはちょっとくらいは減ってるんだろうけど、ほぼタイムラグなしで補充されちゃってるんだろうね。


 わたし、やっぱりチートだ。

 そんなチート魔力を使って、最後の鉢にも魔力を注いでいく。


 ……これも促成栽培って言っちゃって良いのかな?


早く平和になりますように (*'ω'*)

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