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ノエルとポリー 9

「主であるルミちゃんが来たから、もう安心ね」


 シャルロット様は子供たちの間を縫うようにしてわたしに近づいて来ると、マールを差し出してくる。

 マールを受け取って抱きかかえると、マールの頭をやさしく撫でながら怪我とかが無いかチェック。

 あちこちの毛並みが乱れているけど、怪我とかしている様子が無い事にホッとしているとシャルロット様が綺麗な手を伸ばしてきた。


「初めてマール君を抱っこしたけど、モフモフしててカワイイわね。また抱っこさせてもらえるかしら?」


 そう言って、少しだけ名残惜しそうに、まるで握手をするようにマールの小さな手を握る。


「ニャ、ニャー……」


 マールはシャルロット様の優し気な笑みをしばらく見つめた後、戸惑いながらも小さく頷く。

 やっぱり、少しはわたし以外の人にも抱っこさせても良いって思うようになってくれたって事みたい。ましてや手足を触らせるくらいだから、シャルロット様に対してマールなりに感謝しているんだろうね。

 

「ありがとう、マール君」


 シャルロット様はそう言ってニッコリとほほ笑む。


 うわっ笑顔が神々しい。

 やっぱりシャルロット様って綺麗な人だなぁ~。正直、元の世界だったら女優とかになって映画とか出演してるレベルなんじゃなかろうか。


 母娘だからエルミーユ様も顔立ちは似てるんだけど、シャルロット様の方がお淑やかで気品があって、落ち着いてて儚げな感じで……。

 なんというか、同じ女性であるわたしから見ても見惚れてしまう位なんだよね。


 シャルロット様に比べると、エルミーユ様はなんというかお転婆というかじゃじゃ馬過ぎるというか。

 もちろんエルミーユ様も美少女であることは間違いないんだけどね。


「ルミちゃんは、騒ぎが起きた時にスタンと一緒だったのよね?」

「あ、はい。わたしだけじゃなく、エルミーユ様やポリーちゃん、あと、他の子供達も一緒でした」


 シャルロット様が優しい笑顔から引き締まった表情に変貌する。


「それじゃ、何が起こっているのかは分かる?」

「えっと、最初はノエル君が森に逃げ出しちゃって、ですね」


 ノエルが? と聞き返されて、大きく頷く。


「そうです。マールは訓練に参加させてもらってたんですけど、ノエル君は参加を認めてもらえなくて、それで泣きながら逃げ出しちゃった感じ、です」

「ノエルはマール君と一緒に訓練したかったのかしら? マール君が遊んでるみたいに見えたとか?」

「んー。どうなんでしょう? それでですね、ノエル君が森の方に逃げちゃったので、捜索する事になったんです」

「まぁ、それは当然よね。ノエルはエルミーユが社交に連れていく事もあるから」


 これについては聞いた事がある。

 貴族令嬢たちの間では、珍しかったり可愛かったりする動物や魔物をペットとして飼う事が一種のステータスみたいな事になっているらしいのだ。


 ちなみに、男の人だと馬になるらしい。どれだけ優れた馬を所有しているかっていうのが大事っぽい。


 男女どちらの場合でも、実際にお世話をしているのはお貴族様本人じゃなくて、使用人の人だったりする事が多いらしいけど。


 なので、ノエル君はペットとして扱われているけど、スペンサー家にとって単なるペット以上の存在なのだ。


「でも、それだけだったら、避難の鐘なんか鳴らすはずが無いわよね?」

「はい。ノエル君を捜索するために森に入った人の悲鳴のような叫び声の様なものが聞こえてきて……」

「魔物に襲われたって事?」

「いえ、それは分からないです。わたしが聞いたのは男の人の悲鳴だけでしたから。悲鳴が聞こえた時点で、神殿まで走って逃げましたし」

「なるほどね。だからスタンはすぐに武装して飛び出していったのね」


 そう言って苦笑するシャルロット様。


 スタンリー様は、いったんお屋敷に戻って、武器とか防具を身に付けるとすぐに森に向かったという事だった。

 シャルロット様やレジーナさんには、神殿に逃げ込むように告げただけで、詳しい話はほとんど無かったらしい。


 報連相ができてないよ!


「レンも森に行ってるのよね?」

「はい。ノエル君の捜索はレンヴィーゴ様がやるって話になってましたから。……あ、でも、男の人の悲鳴が聞こえた時には、まだ訓練場でわたし達と一緒でした。悲鳴が聞こえてすぐに森に向かっていっちゃいましたけど」

「なるほど……。ありがとうねルミちゃん。なんとなくだけど分かったわ」

「え、あ、はい。どういたしまして? ……あの、シャルロット様」

「なに? ルミちゃん」

「えっと、訓練場で悲鳴が聞こえて、そのあとレンヴィーゴ様たちが森に入っていったんですけど……。戦闘とかになってるんでしょうか?」

「それは分からないわね。実際にその場に居たわけでは無いし。でも、可能性は高いと思うわよ?」

「相手は、もしかしてなんですけど……先日、運び込まれた狩人さんを襲ったっていう未知の魔物なんじゃ……?」


 大怪我を追って、裂けた腹部から大量の出血をしていた狩人さんの姿が脳裏をよぎる。


 エルミーユ様の話では、領内でも優秀な狩人さんという事だった。

 その狩人さんは未知の魔物に襲われたと言っていたらしいけれど、今回も同じ魔物の可能性があるんじゃないだろうか。


「それも分からないわ。もしかしたら、その正体不明の魔物に縄張りを追い出された別の魔物なのかもしれないしね」


 言われてみれば、そういう可能性もあるね。

 でも、それなら正体不明の魔物よりも弱い魔物って事になるのかな?

 それなら、レンヴィーゴ様やスタンリー様なら何とかしてくれそうな気がする。


 レンヴィーゴ様たちが実際にどのくらい強いのかは分からないけど、もともと傭兵団上がりの領民たちの中に入っても指折りの実力だって話を聞いているから。


 それでも怪我くらいはしちゃうかもしれないけど、それだって、あの滅茶苦茶不味いけど無茶苦茶薬効が高いポーションがあれば傷跡も残らずに完治しちゃうはずだ。


 そこまで考えて、ふと思い出す。


 訓練場でポリーちゃんが怪我をして緊急でポーションを飲んだ事、そして、その時にエルミーユ様の言った言葉。


『それが最後のポーションらしいから、不味いからって吐き出しちゃダメだからね?』


 これってヤバクない?

気が付いたら100話目でした (*‘ω‘ *)

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