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ノエルとポリー 8

 頑張り屋さんのポリーちゃんと自分を比べて軽くへこんでいると、いつの間にか部屋から退出していたアリシアさんが水差しとコップを持って帰ってきた。


「ポーションで具合が悪くなった時には、どんどん水を飲むと良いのよ」


 そう言ってコップに水を注ぐアリシアさん。


 ポリーちゃんはホントは動くのもダルイのかもしれないけど、ポーション作りのプロであるアリシアさんが水を飲んだ方が良いと言ってるんだから、無理にでも飲ませた方が良いはず。


「ポリーちゃん、身体起こせる?」


 そう問いかけると、気怠そうな顔で小さく頷いた。でも、一人で身体を起こすのが大変そうだ。

 わたしはポリーちゃんの小さな身体に手を回して、ヨッコイショと身体を引き起こす。


「もうしわけありません……」

「そんなの気にしないで。お水飲める?」

「……はい」


 アリシアさんからコップを受け取って、それをポリーちゃんの口元まで運ぶ。

 ポリーちゃんも一緒にコップを持ち、コクンコクンと喉を鳴らしながらコップ半分くらいの水を飲み下した。


「もっとたくさん飲んで。それで、お手洗いは廊下を出て左に行って、一番奥の扉よ」


 アリシアさんの言葉を聞いて、頭にハテナマークが浮かぶ。


 んん……?

 それって、お水を一杯飲んで余計なポーションの成分を排出しろって事?


 いや、確かに理屈としては間違って無いのかもしれないけど……。なんかファンタジーっぽくないよ。


 でも、アリシアさんが言っているのだから従った方が良いという事で、水差しからポリーちゃんの持つコップに水を注ぎ足した。

 まぁ、水を飲んだからといって、すぐにトイレに行きたくなるわけじゃ無いだろうけど、それでも飲んでないよりは飲んでいた方が”近くなる”よね。


「そういえば、今、水を取りに行ったときに見かけたのだけれど……あの猫みたいな子はお知り合い? なのよね? たしか、マール君だったかしら?」

「あ! マール!」


 アリシアさんの言葉を聞いてマールが居ない事に気が付き、一気に血の気が引いていく。

 ポリーちゃんの事で頭がいっぱいで、マールの事をすっかり忘れていた。


 それでも記憶を掘り返してみると、神殿に着くまでは一緒に走っていたはず。

 神殿に着いてからは、わたしたちはポリーちゃんを連れて神殿の中に通してもらったけど、その時、マールはどうしてたんだろう?

 正直、全く覚えがない。


「そういえば、いつの間にかいないわね……」

「まさか村の外に行っちゃったとか!? ど、どうすれば……」

「もしかして、ノエルを探しにいっちゃったとか」


 エルミーユ様も、マールの行方は把握してなかったみたい。

 そんなわたし達を見て、アリシアさんが苦笑した。


「大丈夫。村から出て行ったりはしてないし神殿の敷地内に居るわ」


 ほっと一安心。

 マールってわたしの言いつけを守ってくれる子だから、勝手に森に行くような事は無いとは思ってたけど、やっぱり子供っぽい所があるから目の届かない場所に居ると心配なんだよね。


「でも……」

「でも?」

「早く助けに行ってあげた方が良いわ。子供達に囲まれちゃってるから」


 困ったように笑うアリシアさんの言葉に顔が引きつるのを自覚してしまったわたし。


 この世界の子供で深く知ってるのはポリーちゃんくらいで、そのポリーちゃんは年齢にそぐわない落ち着きがあったりする。

 だけど、それがこの世界の子供全員かどうかは分からないんだよね。


 日本に比べて成人とされる年齢が低い事から、みんなが早熟傾向にあるのかもしれないし、ポリーちゃんだけが特別なのかもしれない。


 もし、ポリーちゃんだけが特別だったとしたら、チカラ加減の分からない子供達にモミクチャにされたマールが、また人間不信になってしまう可能性だってある。


「すぐ助けに行ってきます! ポリーちゃんの事、よろしくおねがいします!」


 そこまで思い至ったわたしは、すぐに部屋を飛び出した。廊下を走って神殿の聖堂を通り抜けた先にある扉をくぐる。

 

 神殿の前には、すでに何十人もの領民が避難してきていた。子供たちを中心に大人が周りを囲んでいる形で、人がごった返している。

 その場からキョロキョロと辺りを見渡してみるけど、普通の人に比べて極端に背が低いマールの姿が見つかるはずがない。


 玄関ポーチの上からでは見つけることが出来ないと判断して、人混みの中に突入しようとしたその時。

 わたしを呼び止める声が聞こえた。


「ルミちゃん!」


 聞き覚えのあるその声は、最近、わたしの事をちゃん付けで呼ぶようになった領主夫人。シャルロット様の声だった。


 声の聞こえた方に振り返ると、人混みの中にシャルロット様とレジーナさん。そしてシャルロット様に抱っこされてガクガクブルブルと震えているマールの姿があった。


「マール! ……っと、シャルロット様にレジーナさんも」

「マール君が子供達に囲まれてたから、保護しておいたわよ」


 そういってニッコリとほほ笑むシャルロット様。小さな子供達が興味津々という感じで

シャルロット様とマールの周りを取り囲んでいる。

 領主夫人であるシャルロット様の胸で抱っこされてる状態だから、子供達もマールにちょっかいがだせないんだろうね。


 とりあえず、マールの無事が確認できて、ほっと一安心だ。


 でも、元の世界に居る時からわたし以外の人に抱っこされる事なんて無かったマール。そのマールが、ガクブル状態とはいえ、大人しく抱っこされたままでいるなんて。

 これは、マールが少しでもわたし以外の人も信用するようになってきたって事なのか、それとも、子供達に囲まれたままでいるよりは、シャルロット様に抱っこされている方がマシという判断だったのか。


 マールがどんな考えでシャルロット様に抱っこされる事になったのかは分からない。

 でも、わたし以外の人に抱っこを許すようになったのは、小さくても確かな成長なのかも。


 その成長が嬉しくも有り、ちょっと寂しかったりもする。

今回はヤバかったです。

何がヤバかったって、お仕事が。

ここ数日、トラブル対応のため深夜残業が付くギリギリまで働いてました。

でも、時間ないなりにチョコチョコって書いて、とりあえず投稿 (*>ω<)=3


来週はもうちょっと余裕をもって投稿できますように・・・

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