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14.5話 私はアイツに応えたい

今回は少し短め! 大槻さん視点です……!




 テストの日っていうのは、いつもひどいくらい緊張する日。


 大丈夫、あれだけやったんだから、今度こそ。そうやって力んで挑んでは、チャイムの音が鳴るころには緊張で染まってしまって。


 できると思っていたことができなくなって、気づけば全然解き終わらないまま終わりのチャイムが鳴る。そして、またできなかった自分に絶望する。


 ずっとずっと、その繰り返し。


 だから、自分はできないってあきらめていた。




「はい、開始5分前だから教科書とか全部しまって~」




 試験監督の男性の先生の指示が飛ぶ。教室から小さな悲鳴が上がりながら、みんなしぶしぶと言った様子で教材をカバンにしまいだす。私も、見ていたノートをそっと閉じた。


 しまったのは、アイツと一緒に直前に向けて作ったノート。テスト前日から当日にかけて、簡単に確認しておきたいところをまとめたもの。


 テスト前にバタバタするのは良くないから、やることをあらかじめ決めておいた方がいいというアドバイスのもとで、2人で相談して作ったノートだ。




「……こんなもんまで作っちゃって」




 アイツは、結局テストの日までのほとんどの放課後の時間を私の勉強の面倒を見るのに使ってくれた。


 苦手な数学と英語どころじゃない。本当に、文字通り私の勉強を1から10まで手伝ってくれた。


 私が本番で緊張しないようにと、本番想定の時間がかつかつな中で解かせるような練習を繰り返し、内容理解だけに収まらない、当日の向き合い方のアドバイスもたくさんしてくれた。


 私がアイツに本の話をするとき以上に良くしゃべってたな、アイツ。本当、あそこまで人の面倒を見れるなんて、お人よしが過ぎると思う。


 その理由だって、あ、あんなこっ恥ずかしい……。


 やめよう。思い出してもいいことはない。テスト前にわざわざ心の平穏を乱すことはないだろう。


 ともかく、アイツには、申し訳ないくらい面倒を見てもらってしまったわけだ。


 ……自分で勝手に、出来ないって腐るのは私の自由だけど。


 でも、アイツにここまでしてもらって駄目でした、っていうのは、絶対にダメ。


 だから、やろう。自分が納得できるだけの結果を出そう。


 まだ私は、今の自分にできることがあるなんて信じられないけれど――




「……はい、それじゃはじめ」




 先生のやる気のない言葉を合図に、テストが始まる。


 配られた用紙を表にして、問題をざっと眺めながら自分の心を確認する。大丈夫、緊張はない。自分じゃないんじゃないかってくらい、心は落ち着いている。


 だから、いける。


 勢いよく私はシャーペンを握り、問題に向き合う。




 ――たとえ、今の私を私が信じられなくても。アイツのことは信じられるから。




 アイツの想いに応えるために、やってやる。アイツがやってくれたことに応えるために、やってやる!




 落ち着いた心を、燃え上がる気持ちの両方をもって、私は、テストを解き進めていった――





次回! 最終回!!!

明日の夜に投稿いたします!!!

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