ひと時の安らぎ
「じゃあ戻りましょうか?」
ヒョイと小夜が俺を担いだ。
「え?お前怪我してるのに大丈夫なのか?まだ治ってないんだろ?」
「あらー?私を心配してくれてるの?」
小夜がニヤリと笑って俺に顔を近付ける。先程とは違い小夜の目は茶色に戻っている。
「てか近いんだけど?」
「照れちゃってまぁー!とっとと行くわよ、こんなムードも何もない場所にいたってつまんないし!」
そう言うと来た時と変わらない速度で小夜は駆け出す。速い速い。小回りが利く分車より速い気がする。
「よっと!はーい、到着!」
ドサっと俺を落とした。
痛ぇ、降ろすなら降ろすってって言えよ!と顔を上げると小夜が上着を上に上げていた。何やってんのこいつ。脱ごうとしてんの?と思ったが傷を確認しているようだった。
小夜の一見華奢に見える肋の辺りは青黒く変色していた。
「痛むのか?」
「え?うん、それなりにね」
「そ・れ・よ・り!私が服を脱ごうとして興奮してたでしょー?エッチだよねぇ宗って!年下のくせに。そんなに私のヌード見たかったの?」
一瞬でも心配した自分を殴りたくなった。小夜は回収した勾玉を銀の小さいケースに入れシャワーを浴びてくると言って風呂場に行った。
てか今何時なんだ?時計を確認する。19時半‥もうとっくに何時間も過ぎたような気がしてたけど思ったより早かったんだな。
さっきの事を思い出しボーッとしていると風呂場から音がした。どうやら上がったようだな。
バスタオルを巻き濡れた髪で小夜が出てきた。
「お前服着ろよ!何考えてんだ!?」
「宗みたいなお子ちゃまに私が恥ずかしがるとでも思ってるの?へぇ、やっぱり私の事そんな目でみてたのねぇ」
「あー、いくらお前が可愛くても自意識過剰な奴は論外だわー、お子ちゃまはどっちだよ!」
「そんなこと言ってー、昨日だって私と別れた後ビクビクして寝れなかったでしょー?お子ちゃまなんだからぁ。私あの後も宗の近くでしばらく監視してたんだから」
「いいからとっとと服着ろよ!」
「はいはい、ムキになっちゃって。ドーテー」
いちいちカチンとくる事言ってくるな小夜は。でも口でも喧嘩でも勝てそうにないのでグッと堪えた。
髪を乾かし服を着た小夜が銀の小箱のケースを持ってきた。そしてパカっと開けると1つを俺に手渡した。
「ん?これは?」
「宗にあげる」
「え?だってあんだけ苦労してとったんだろ?」
「だって宗自力で取れそうにないじゃない?だからあげる!私と宗はもう同族なんだよ?」
あんだけキツそうな戦いをしてきたのを見て簡単にヒョイと渡されると若干気が引ける。
「あー、もしかして私が苦労してとったのをただ貰うだけだと気が引けるとでも思ってるんでしょー?可愛いところあるじゃない」
「うるさい、からかっかてんじゃねぇよ!」
「でもまぁありがとな‥‥」
するといきなり小夜が俺の頬っぺたにキスしてきた。
「これでいーよ」
あまりに突然過ぎてビックリした。なにがこれでいいんだ?
「宗はまだ弱いんだし、能力もわかんないしわからないことだらけよね?私も宗のこと全然知らないし。だからこれは大人しく貰っておきなさい」
なんだか意味がわからないが貰うことにした。昨日は殺そうとしたくせによく言うよ。
「そういえば化物に噛まれそうになった時擦り抜けたのは何だったんだ?」
「んー、使うつもりなかったんだけどなぁ。思ったより厄介だから使っちゃった
、あれが私の力よ。ピンチの時擦り抜ける事ができると思っててもらって結構。私の意思で私が触るとその対象も擦り抜ける事が出来るの」
「へぇ、なかなか凄いなぁ」
「別に種が割れたら大した能力じゃないんだけどね。戦い向きの能力ならもっと凄いのとか見た事あるし」
小夜がそう言うとまた小夜の表情が曇る。
「ていうかここまでネタバレしたんだから宗は裏切っちゃやーよ!私宗の能力も知らないんだから!」
そしてしばらく小夜と話して家に帰る事にした。
「これから宗も私にお付き合いして少しはマシになるよーに!」
「マジかよ。出来ればごめんなんだけどわかったよ」
「バイバイ、宗。明日学校でね」
そして小夜は家の扉を閉じた。




