疾走
俺は今途轍もないスピードで夜道を駆け抜けている。家の屋根や、塀を音もなく。
小夜に担がれて‥‥
「な、なぁ。この状態めちゃくちゃ怖いんだけど?」
「だって仕方ないでしょ?宗ってば常人並の運動神経なんだもの。普通に行ったら私の足引っ張るだけでしょう?」
大の男が美少女に担がれているこの光景、なんとも情けない‥‥しかも早いから怖い。
「てか俺を担いでよくそんなスピード出せるな?」
「楽勝よ。70キロくらいなら持っていてもなんともないし」
そんなに力持ちだったのか‥
「ピョンピョン飛んでるけどこれも楽勝なの?」
「ん〜、大体5メートルは跳躍できるわよ。本気になれば倍の10メートルくらいならいける感じかな?」
うん、やっぱ人間じゃないな。俺と小夜は同族って言うけど俺には全く真似できないのは何故でしょうか?
やがて住宅街を離れ田んぼ道に入った。
「なぁなぁ、こんなとこにいるのか?何にもないぞ?」
「うーん、この辺から感じるのよねぇ。自分の目を見るのがめんどくさいから宗の目を見ながら判断してるけど」
俺は探知機か!?
「あー、それとね。普段はコンタクトしておいてよ?もしいきなり目が青くなったらびっくりされるわよ」
「マジかよ‥確かにそうかもな。でも持ってないし」
「だと思った。私のあげるわよ。それと今更だけどお家に連絡したの?遅くなるって」
「ああ、それなら心配ないよ。父さんには友達の家に寄ってくるから遅くなるって言っておいたから」
「ふーん、なら良し!」
「小夜ってさ、いつからこんなことしてるんだ?」
「もう大分前からね。定期的に勾玉を手に入れないと昨日みたく暴れちゃうからいくらでも手に入れておいた方がいいし。それに宗もよ?」
なるほどなぁーと俺も頷く。
「だけど宗の場合はいくら暴れても弱っちいからただの変態扱いされて捕まって精神科行きね!あはははッ」
おい、それは困るぞ?そんな事になったらおれの人生お先真っ暗じゃねぇか。
そんな事になったら父さんごめんな。いつ変態になるかわからねぇや。
「ん?近いわよ!」
「わかるのか?」
「宗の目、今真っ青よ」
俺の目を見つめる小夜の目も真っ青で俺に綺麗な顔を近付ける小夜に思わずドキッとしてしまい、逸らしてしまった。
顔は本当に可愛いんだよな。
髪も綺麗で長い黒髪でぱっちり二重の小顔で。
「なーに?私みたいな美女に見つめられて緊張したの?フフッ」
「うるさい奴だな、まったく緊張感ってのがないのか小夜は?もう近いんだろ?」
「ええ、いたわ。見える?」
んん?見えねぇぞ?どんな視力してんだこいつ。
「普通にしていたら見えない。見ようと強く念じなさい。そうすれば見えてくるはず」
言われた通り念じてみるとぼんやり見えてきた。
それはとてもおぞましくトカゲのような体に尻尾には蛇のような頭がついていた。しかも目のようなものが8つ。
おい、完全にクリーチャーじゃねぇか。
俺は今一緒に来たことを心の底から後悔した。
「そんなに心配しなくて大丈夫よ?宗はただ見てればいいんだから」




