屋上にて
「なぁなぁ、水無月さんってめちゃくちゃ可愛くねぇ?マジ好みなんだけど」
啓太がヒソヒソ話してくる。お前は知らないからそんな事が言えるんだよ。殺されかけた俺にはいくら小夜が可愛いからってそんな感情を抱く事が出来ない。むしろ怖い。
チラッと小夜を見るとこちらをジッと見ている。
「つか水無月さん俺らの事見てねぇ?もしかして俺か宗にもしかして‥」
おめでたい奴だなと俺は思う。まぁ何も知らない啓太からしてみれば当然か。
こちらを見ているのも監視しているんだろう。
午前の授業が終わり昼休みになる。
「ちょっといいかしら?日向君」
小夜が他人行儀で話しかけてくる。学校内ではこういうキャラか。
「2人きりで話せる場所ない?」
そう言うなら屋上かな。でもこいつと2人きりになるのが怖い。何されるかわかんないし。
「聞いてるの?2度言わせないでくれる」
「お、屋上なら‥」
「ならそこに行きましょう?案内して」
逆らったらどうなるかわからないので俺は仕方なく小夜の言葉に従うことにした。
「で?その後何か体調の変化は?」
「今のところ特に何も‥あ!」
「何よ?」
言っていいものかわからない。だぅてそれを理由に殺されそうだし。あ、警察とかこういうの取り合ってくれるのかな?信じないだろうな、むしろ俺が精神異常者扱いされそうだ。
「とっとと言いなさい!」
小夜が痺れを切らし鎖鎌を両手に構えた。どこから出したの?あなたは具現化系なんですか?
「え、と朝鏡を見たら目が青くなってたような気がしたんだけどすぐ元に戻った」
「へぇ、君って素質ありだったんだ?」
「なんの?」
「今わかるわ!」
次の瞬間俺は豪快に吹っ飛んだ。そして屋上のフェンスに突っ込む。脇腹に蹴りを入れられたようだ。昨日からこいつに暴力ばっか振るわれてるわ。
「あれ?なんで避けないの?見えないの?」
「バカなのか!?あんな蹴り避けられるわけないだろ!!」
「なんで?素質があるのにあんなのも避けられないの?身体能力全く変わりなし?君ってなんなの?」
俺が聞きたい。
「もっと詳しく教えてくれよ、素質ってなんだよ?」
「ああ、素質って言うのはね。私みたいなのを言うの。昨日持ってた勾玉に触れてもごく稀に化物にならずに人間の姿のまま強くなれる‥」
「ちょっと待てよ!だったらなんで昨日は俺を襲ったんだよ?」
「それは‥この勾玉。真っ赤でしょ?これを砕くと赤い粒子が出るの」
そう言うと小夜は勾玉の細い所を割った。そこから少量の赤い粒子らしき物を小夜が吸い込む。
「同じこの勾玉から派生した私と化物の私は長期間この粒子を吸わずにいると極度の興奮状態になるの。私ちょっと自暴自棄になってて取らないでいたの」
「で、ようやく見つけた勾玉を君が掻っ払うんだもん。サクッと殺されても文句言えないよね?」
「んな無茶苦茶な‥‥だったら目が青くなったのはなんだ?」
「なりたての時とか化物を見つけた時は目が青くなるのよ。反応してるってこと!それと宗は何か特別な力を使えるようになった?何かしら兆候があるはずだけど」
「なら小夜は何か使えるのか?」
「そんなの教えるわけないじゃない!敵か味方かもわかんない宗に能力見せるなんて命取りになりかねないわ」
「じゃあ俺のも聞き出そうとするなよ!」
「宗バカそうだから。あはは」
「でもそうね、目立った能力もなし、身体能力の向上もなし。いよいよ宗って役に立たなそう」
「ほっとけ‥俺が1番悲しいわ。ん?じゃあ俺も周りを停止させることできるのか!?」
「やってみれば?強く念じれば停止できるわよ?ただターゲットを決めて。この場合は私ね、訓練しないと結構疲れるわよ」
そして俺は念じてみた。よくわからないけど昨日の感じと同じだと思う。
「これは出来るよね、まぁこれすら出来なかったら目も当てられないわ」
「なんだかもうこれ使ってられないわ。めちゃくちゃ疲れる」
「最初はそうよね、じゃあこれからしばらくは私と一緒に行動しなさい。宗なら敵になってもチョロそうだし。よろしくさん!」
おいおい、勘弁してくれよ。




