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失意

俺を庇い化物の猛攻を受けた小夜は化物に踏み潰されている。腹には爪が突き刺さっている。


小夜は痛みに顔を歪ませている。


「小夜!」


「来ちゃダメ!ゆっくり下がって!」

小夜は吐血しながら俺に後退を促す。


「予想外の痛手だけどこっちも捕まえた!」


化物の口が小夜に噛み付こうとした瞬間だった。

踏み潰されていない方の左手で鎖鎌を飛ばし化物の目の付近に突き刺さり鎖をそのまま口に巻き付けた。よし、あれなら口は開かない。

けど小夜も絶体絶命には変わりない。化物が強引に頭を上げたら今の状態の小夜では腕ごと千切られそうだ。


そう思った瞬間化物は首を上げようとした。

「ようやく2分たったわよ」


すると小夜を突き刺していた爪が抜け、小夜は突き刺した鎖鎌を抜くと化物の額に鎌を突き刺した。


化物が悲鳴を上げて小夜を突き飛ばす。


「ガハッ!」

小夜が壁に叩きつけられる。


「し、宗。お願いがあるの。こっちに来て!私もう動けないみたい。だからあいつが私にとどめを刺す瞬間に宗が決めて‥ほら、あいつの下顎のあたりに赤いのが浮き出てるでしょ?そこを突き刺せば勝てるよ‥早く、あいつが態勢を整える前に私がサポートするから私の手を握って。お願い」


「お、俺が‥」

怖い、絶対出来ない、失敗する、死ぬ。


「宗、お願い。時間がないの‥」


くそ、もうどうにでもなれと思い小夜の手を取る。とても苦しそうだ、小夜の腹部は血がドクドクと流れ出していた。


「もう少しで2分たつけどそれまでにあいつが復活したら私たち死んじゃうわ。でも間に合ったら私が宗を擦り抜けさせるからその瞬間にあいつを倒して。もうこれしかない」


小夜の作戦を聞き化物に向き直るともう化物は俺たちに狙いを定めていた。


そして跳躍した。余りに一瞬だった。化物は俺を擦り抜けた。


「間に合った。今よ!やって!」


俺は力の限り光の中心を突き刺した。化物が再び悲鳴を上げた。だが消えない。

もしかして浅かったのか?

俺が絶望していると雄叫びを上げて化物は消えた。


終わったのか?足がガクガク震えその場にへたり込んだ。

本当に俺が倒したのか?!いまだに信じられない‥


ハッと我に帰った。小夜は!?


「小夜ッ!」


「し、宗‥‥やったね」


「お前瀕死じゃねぇかよ!」


「あはは‥ちょっと危なかったね‥」


「悪い、俺のせいだよな。俺が止めたせいで‥」


「その事はもう気にしなくていいよ。でも宗、最後少しかっこよかったよ‥」


「私こそ少しイライラして冷静じゃなかった。ごめんね」


「もう喋らなくていい、俺が封鎖しなおすから小夜は少し休め。死なないよな?」


「うん、大丈夫。とは言えないけど今は宗の言葉に甘えるね‥‥勾玉忘れないで回収してね」

すると小夜は意識を失った。


俺は失意のどん底に叩き落とされた。

小夜は俺が制止しようとしてその言葉に苛立っていた。

だがそれでも俺を気遣い庇って助けてくれた。なのに俺は‥


多分小夜が冷静に戦えていればここまで負傷することはなかっただろう。だが俺という存在がいたせいでここまで重傷を負わせてしまった。


俺は勾玉を拾った。これを貰う資格は俺にはない。勾玉はそっと小夜のポケットに忍ばせておいた。


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