月夜の小夜
月夜が綺麗な夜。俺は全力で走っていた。生きるか死ぬかの状況なんて俺の人生ではまだまだ先の事だろうと思っていた。
だけど今日なんて聞いてない。いや、そんな場面なら聞くのもごめんだけど。
閑静な住宅街をグルグルと走り回っている、もうここがどこかもわからない。
「おーい!誰か助けてくれー!!」
この台詞走り回って何度も言ってるのにどこからも返事がない。
そりゃあ走ってるから気付いた人が出て来る頃にはもういないが少しは騒ぎになるはず。
「うふふふ、叫び回っても無駄よ?」
すぐ後ろで声がする。
後ろを振り向くと離したかと思ったのにもう近くまで来ている。
「いい加減疲れない?ここら一帯は私が封鎖したの。どんなに騒いでも無駄よ?」
「うるせぇ!俺がなんかしたのか!?殺される言われはねぇぞ!」
「よく言うわ」
すると女が一瞬止まり物凄い勢いで跳躍した。
「嘘だろ!?7メートルはあるのに!?」
一瞬で女は俺の正面に立った。そしてその瞬間手にしていた鎖鎌で俺の首筋にそれをあてた。
「観念してね?」
俺はゆっくりと後ずさるが首筋にあてられた鎌も俺の動きにあわせて動く。
「助けて」
「助かりません」
「どうしたら助けてくれる?」
「どうしても助かりません。諦めてね」
その瞬間俺の命乞いも虚しく無情に鎌が首筋に突き刺さった。
と思った。だが鎌は俺の首筋を離れ女は腕を下ろした。
「あれー?どうして変化したないのかなぁ?」
その瞬間俺の腹に鈍い痛みが走る。女が蹴りを入れたからだ。その拍子に俺のポケットから勾玉が落ちる。
「ん〜、確かに本物なのに。君って人間よね?」
「当たり前だろ!」
女は俺に近付き俺の顔を覗き見る。
「うーん、わっかんないなぁ。しばらく君を観察させてもらうわ」
「それで!私は小夜。あなたは何者?」




