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◇怠惰な勇者と守銭奴少女の異世界お買上げ物語◇  作者: 赤金えんた
それが二人の始まりなんだわよ
3/7

怠惰の勇者と守銭奴の少女

「はぁ?つまり300年前、ここに訪れた勇者がお前だと、そう言うだわね?」


「そうなるな。」


「そうなるな、じゃないんだわ。アホらしいんだわよ。」


 アウルは深い溜息をついた。

 オルファの話はあまりにも信じ難い物だったからだ。

 オルファが言う事にゃ、自分は300年前の勇者で、300年間この場所で眠り続けたそうだ。

 300年前の人間の時点で怪しいと言うのに、300年間寝て過ごしたと言うアホな事が上乗せした事により、完全にアウルはオルファを頭のねじが跳んじゃった人として見ていた。


「・・・・まぁ、俺も寝たくて寝てたんじゃないんだ。呪いみたいなもんでな。」


「?呪い?」


「ああ、・・・・・ああ、すまん、怠くなってきた。もう、話すの無理だ。」


「ちょっと!いくらなんでもだらけ過ぎなんだわよ!しっかりするんだわね。あー、えっと。・・・ほら、これ貸して上げるから、最後まで話すんだわ。途中で終わると気になってしょうがないんだわよ。」


 そう言って、アウル赤い腕輪をオルファに渡した。

 キョトンとするオルファにアウルが説明する。


「活性の腕輪だわよ。装着すれば元気がでるはずなんだわ。眠気くらいならパッと消える優れて物だわよ。あ、言っとくけどあげるんじゃないから、貸すだけなんだから、話し終わったらちゃんと返すんだわよ。」


「活性の腕輪・・・ねぇ。」


 オルファはしげしげとそれを見つめた後、言われるがまま腕輪を着けた。

 ・・・・・オルファの目が半開きまで回復した。


「・・・・すげぇ、効くな。・・・もう少し話せそうだ。」


「そうは見えないんだわね・・・・。」


 ◇━━━━━━◇


「アウル、って言ったか?勇者がどんな存在なのは知っているか?」


「まぁ、そりゃぁね。端的に言えば、神の意思で異界より召喚された特別な力を持つ者でしょう?」


「その認識で大体合ってる。で、そこからの話しになるんだがな。300年前の召喚は神の意思が介入して行われた事じゃ無かったんだ。」


「それって神魔戦争じゃないの?・・・神の意思が無いって?。」


「・・・・神魔戦争?・・・この時代の人間にどう伝わっているか知らないが、300年前起きたそれは神の預かり知らぬ、人と人の戦争だ。俺はアドルフ王国に召喚された。人を殺す兵器としてな。」


 オルファは淡々と語り続ける。


「戦争に先んじて各国、八大国が勇者召喚を行った。成功したのは六ヶ国。アドルフ王国、ヴァーニア法国、ザド帝国、シカノ連合国、ヒノトリ国、ラスティミリア聖国。シカノ連合は二人の召喚に成功し、他の五ヶ国は一人ずつだ。その喚び出され勇者達は特別な力以外に、軒並みある欠陥を持ってこの世界に来た。それが呪い、いや神の祝福[大罪]を持ってな。」


「ちょっと待つんだわ。神魔戦争ってのは、魔の王の出現により始まったとされてるんだわ。お前の言い分だと、人が人を滅ぼしたとしか聞こえないんだわよ。」


「まぁ、事実はそうだからな。だから神とやらは俺達をにこんなもん持たせたんだろうさ。[怠惰の大罪]そう呼ばれる祝福が俺に掛けられているんだよ。こいつの力で、俺はマトモに体を動かせない。戦争の時は、数十人から強化魔法掛けられて無理矢理参加したくらいだしな。」


「他の奴等もお前と同じに?」


「いや、少し違うみたいだったな。だが、どいつもこいつも、イカれてたとは思う。実際に俺が対峙したのは二人だけだけどな。確か、[憤怒の大罪]と[強欲の大罪]だったと思うが・・・あとは知らん。」


「・・・・・ふぅん。」


「・・・・で、最期まで体裁を保った二国、アドルフ王国がヴァーニア法国と停戦表明し、世界大戦は終結した。不要になった俺はこの地に捨てられて、今に至る訳だ。」


 オルファは語り終えると気だるそうに溜息をついた。

 そんな様子を見つめながら、アウルは口を開く。


「話は解った。正直信じてないけど、それがお前の事情だと言うんだわね。なら、本題に移るんだわ。あたしに何のようだわね?」


 アウルの鋭い視線がオルファに突き刺さる。


「一つは、アウル、お前と話して見たかった。まぁ、これは叶ってるな。もう一つは、取引しないか?」


 その一言にアウルは眉を潜める。

 一見すると何も持っていないこの男。何を取引すると言うのだ、と。


「俺が提供するのは力だ。さっきみたいな輩から必ず守りきって見せる。仮にも勇者だったんでね、そう言う事は馴れてる。」


「ははん?用心棒って事?頼む気は起きないけど、そうだわね・・・・。幾らで雇われるつもりなんだわね?」


「毎日、三食の飯。それと主従の契約。」


「はん!本性見せたんだわね!主従の契約だなんて誰がするもんか。手下が欲しかっ━━━━━」


 アウルは短管筒を振り上げた。

 そして、止まった。


「・・・・・へ?主従の契約?」


「俺はな、アウル、お前の部下になる。」


 アウルは混乱した。

 何せ目の前の男がいきなり「下僕になりますよ?」と提案してきたのだ。


「あ、あのさ、主従契約。意味解って言ってる?魔法で一度縛ったら、あらゆる権利があたしにあるんだわよ?あたし次第で主張出来る権利を全て失うんだわよ?」


「知ってるよ。でもな、俺が自由に動くには主従契約で縛ってくんねぇと、歩く事もままならねんだよ。この腕輪の効果じゃ話すのが限界だしな。」


 オルファは立ち上がり、アウルの前に立つ。


「さぁて、アウル。時間が無い、決めてくれ。」


「はぁ?時間が無い?」



「ゴギョォオオオォォォアァァァァ!!!」


 突然の地響きと共に、木々より遥かに大きい巨体が森を引き裂き現れた。


「なぁっ!?ドラゴン!?」


「あれはエンシャンドラゴンってな。この森の主なんだよ。普段は大人しいだが、魔法に敏感でな。自分の縄張りで魔法が放たれると、めっちゃ怒るんだよ。」


 エンシャンドラゴン。

 その名を聞き、アウルの顔色は明らかに悪くなった。

 ドラゴンは魔物の中でも一二を争うくらい、魔法耐性が高い。いくら上位魔法を多数所持しているとは言え、単独で勝つ事は不可能であった。その上、エンシャンドラゴンはさらに魔法耐性が高い。上位のさらに上、最上位でようやく傷がつく程だと言われているのだ。


「あ、ああ、あんた!こうなる事分かってて!?」


 長々と語っていたのは時間稼ぎ、気付いた時には全ての選択権を叩き潰されていた事にアウルは怒りを覚えた。


「ゆ、許さないだわよ!」


「結構だ。さてどうする?一緒に喰われるか、一緒に助かるかだ?」


「くっ、何が出来るんだわね!あんたみたいな変態に!」


「さぁな?契約したら分かるんじゃないか?」


 迫りくるエンシャンドラゴンを横目に、アウルは考える。

 大きな足音で思慮が乱れながら。


「じゃじゃぁ、契約するんだわよ!主従契約を結ぶんだわ!仮契約だわよ!」


「駄目だ。本契約な。」


「なっ!?駄目なんだわ!契約文書もなしなんて!」


「俺の仕事は、アウルお前を守る事、お前の為に戦う事、の二つだ。」


「え、いや、」


 エンシャンドラゴンはさらに加速し、地面をめくり上げながら走る。


「や、約束、もう一つなんだわよ!」


「おう?」


 アウルは人指し指をオルファに突きつけ、力いっぱい叫んだ。


「あたしのお金は絶対盗らない!約束するんだわよ!!!!」


 オルファは吹き出した。


「はははっ!あーーーおかしいぜお前。ああ、約束する。アウル、お前は俺に飯を用意する。俺はお前を守り、お前の力になり、お前の金は盗らない。さぁ契約だ。」


 オルファが言い終わると同時に、二人の手の甲に主従の印が刻まれる。


「あんた契約魔法を?!」


「これだけしか出来ないけどな。さて、少し借りるぞアウル。」


 さっきまでと雰囲気が一辺するオルファ。

 目は眠たそうに半開きのままだと言うのに、彼を纏う空気は熱くたぎっていた。


 そして、謎の脱力感がアウルを襲う。


「遊んでる時間は無いんでな、一発だけな。」


 迫るエンシャンドラゴンに、オルファは真っ向から突っ込んでいく。

 踏み込んだ足が地面をえぐり、捻った体が風を巻き込み、溜めた拳が熱を生む。




「ドオッォォ!!!!!!!!!!」


 放たれた拳がエンシャンドラゴンの顎を跳ね上げる。

 空気が震えたその一撃は、エンシャンドラゴンの巨体が高々と打ち上げた。


 意識が完全消失しているエンシャンドラゴンは、受身もなにもなく頭から地面に叩きつけられる。



 大口を開けその光景を見つめるアウルに、オルファが笑みを浮かべる。


「・・・・さて、腹が減った。お互い動ける内に飯にしよう。」


エンシャンドラゴン

竜種 オス

体高10メートル


好きな物、静寂、葉っぱ、木の実。

嫌いな物、魚、喧騒、魔法。

(*作中個体限定プロフィール)

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