表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
2/3

その2。


彼女の名はマナという。


僕の名はコウという。


ふたりとも二文字だ。ただ、それだけのことだけど、嬉しかった。


あの日の悪天候のなか街を掛けたのはもう2週間ほど前のことだった。


それ以来、一度もマナとは話していない。

あの日も話したかどうか分からない。

布団に潜り、彼女の息遣いを思いだすが、声は思い出せない。

だが、彼女の声は聴いたことがある。

僕以外の男子の名前をよく呼んでいるのを、教室できいている。

僕は呼ばれない。彼女からだけではない。誰からも呼ばれない。

別にそれについては何とも思っていない。



この日も雨が降っていた。

僕の席は教室の一番窓際の列の、後ろから二席目である。

一番後ろの席には、クラスで一番成績の良い女の子が座っている。

僕の成績は、良くも悪くもない。何でも無い。誰にも噂をされないような成績。


窓に伝わり落ちていく、いくつもの枝分かれした雨粒の流れを見つめる。

それはまるで、人間の体内を流れ行く血管の中の血を見ているかのように、美しかった。



もうすぐ夏がくる。


夏の前に、この雨の続く日々が、今年の蚊を洗い流してくれるのだろう。



いつも通り、午前中の授業が全て終わり、昼休みに入ると、図書館へと向かう。


学校の図書館には、昼休み誰もいない。


僕の通う、学校の生徒は誰も本なんて読まなかった。

図書館の存在も、僕と同様に、見えないものとなっていた。


蛍光灯の数が異様に少なく、薄暗い入り口で上履きを脱ぎ、くつ棚より、スリッパを一つ取り出す。


タイル地の床にスリッパを落とした音が、パンッと強く響き渡った。


その音は、雨の中へと吸い込まれていった。


ほんのりとかび臭く、また、古くなった紙の束の匂いが鼻につく。


この匂いが好きだ。


カウンターの図書員は、入っていた僕にチラリとも眼を向けることも無く、二人でヒソヒソと談笑している。


手元には、何やら漫画らしき物が書かれた紙とペンと転がっている。

文化部的趣向を持った人たちであり、その手の趣味があるようだ。


ぼくは、この図書館を毎日のように訪れるが、決して本を借りたりはしない。

どうせ毎日来るのだから、借りなくてもここで読めばいいと思っている。


文芸書棚の前まで行くと、海外の古い推理小説物を取り出すと、そのまま棚に背を向けより掛かり、その場に座り込んだ。


通行の邪魔になるとか、そんな心配は要らない。


どうせ誰もこないのだから。



だが、その日は、初めて邪魔が入ることとなった。



読み始め、10分ぐらい経過した頃だろうか。


目の前にバサリと1冊の本が。

落下してきた。


逆さまであり、本のタイトルは読めず、また、表紙の焼けもひどかったので霞んでよく見えない。



落ちてきた本へと視線を動かしていくと、その先に2本の白い太股が目に入った。



評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ