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その者、気持ちに正直 2

ティロリン、ティロリン、ティロリン……。


商店街の出口付近にある、とあるお店。


そこは明るい店内、店員の元気な声と、お客様の雑談が聞こえてきます。

そこに、聞き慣れた音が響き、嗅ぎ慣れた匂いも感じるとあるファストフード店に来ています。


「今日はおれの奢りだぜ!」

「え、あっ……その、ありがとうございます」


遠慮気味に言うと、小片さんは「ん? なんか遠慮気味じゃん、遠慮なんてしなくていいんだぜ?」と言って笑います。


あぁ……これ、早く長門さんに連絡した方が良いですよね? でも、今ここで「小片さん、少し良いですか?」って言って、お店に連れていくのもどうかと思います。


小片さんの気持ちを無下にする訳にはいきません。

ここは昼食を食べてから何とかしましょう。


「しかし、あれだな……昼前なのに客がそこそこいるな、こいつ等暇なのか?」

「そっそうですね、って……暇とか失礼な事口にしないでください」


午前10時、早めのお昼になるんですが、私と小片さんはここにやってきました。

小片さんの言う通りお昼には早いのに、人がそこそこ入ってます。


ポテトを摘まんで食べてたり、ハンバーガーをかじったり、ドリンクを飲んだり……。

はたまた、食べながらパソコンをやっていたりと、色々なお客様がいます。


「……このお店、久し振りに来ましたね」

「そーなのかぁ、おれはほぼ毎日来てるぜ!」


このお店の特徴は何と言っても、ハンバーガーを売りにしてる点ですね。

安い、旨い、早いをモットーにしてるだけあって、本当に安くて美味しくて早く手に届きます。


しかも、メニューの種類も豊富なので、小片さんの様に毎日来てるお客様も飽きずに楽しめるってとこですね。


そのお店はロゴがあります、それはMです。

そのお店の名前は……モケドニャルド、通称モニャ。


全国に広がる大手のハンバーガーチェーンの1つですね。


私、和歌山にいた時も来た事ありますよ。

と言うか、殆どの人は利用した事あるんじゃないですかね?


「てっ、毎日来てるんですか? 身体に悪くありません?」

「きししし……その点は抜かりはねぇぜ! きちんとセットのドリンクは野菜ジュースにしてるから安心なんだぜ、だから心配ごむよーだぜ?」


むんっ、と胸を張る小片さん。

「偉いだろ?」って言いたげですが……ちゃんと野菜も食べましょうね。


「そっそうですか……」

「ふふん、おれの偉さに度肝を抜いちゃったか?」


えぇ、ある意味抜いちゃいましたよ。

こんなアホっぽい事を、お店の真ん中で恥ずかしがりもせずに堂々と言っちゃう事にね。

うぅっ……一緒にいて恥ずかしいですよ。


「じゃ、早速並ぶぜ!」

「そうですね」


お話もそこそこに並ぶ事にしました。

列はそこそこ並んでますけど、この列の先にいる店員さん、お客様の捌きが良いですから、直ぐに順番が回ってきそうですね。



「大変お待たせしましたー、ここで御召し上がりでしょうか? それともお持ち帰りですか?」


はい、私達の番が回ってきました。

思った通り、早く注文をとれました。


「ここで食べるぜ!」


背伸びをしながら小片さんは店員に向けて元気良く言います。

あぁ、背が低くて背伸びしないと店員に見て貰えないんですね。


「………可愛い」


つい、呟いてしまいました。

だって、小片さんの今の姿は……まるで無邪気な女の子みたいですもの。


可愛いと思うのは仕方ありません。

……て、私、ずっと小片さんの事可愛いって思ってますよね?


まっまぁ……可愛いのは事実ですから嫌では無いんですけど、なっなんで要所要所で思うんでしょうね?


と、考えていると、困った顔で私を見てきました。


「胡桃こと、くるちゃん、おれを抱いてくれだぜ!」

「だっ!?」


それを小片が言った瞬間、店内がざわつきました。

男性客が、ぶふっと吹き出し、女性客が顔を真っ赤にしてひそひそ話始めます。


なっなななっ、抱いてくれだなんて、こんな所で言わないで下さいよ!


って、何を意識してるんですか私は! 小片さんのはおれですよ。

メニューが見えないから、持ち上げて欲しいんです、きっとそうに違いありません。


顔を真っ赤にした私は「分かりました」と言います。

そしたら、小片さんは、にっと笑って私に背を向けます。


「よっ……」

「おぉ……力持ちぃ、100万馬力ぃ」


そして、小片さんの脇に手を当てて持ち上げます。


100馬力って、そんなに力はありませんよ、失礼ですね。


「んじゃ、食べたいの言うぜ!」

「はい」


早く言ってくださいね。

持ち上げるのは疲れ……はしませんね。

小片さん軽いですし、苦ではありません。


と、と言うか……小片さんは小さいだけではなく、細いですね。

ちょっと痩せすぎじゃないですか?


そう思っていると、小片さんは喋りだします。


「肉三昧バーガーセットのLサイズ、ドリンクは野菜ジュース! あとポテトじゃなくて、バネポテトにしてくれ」


わ、本当にセットのドリンクは野菜ジュースにしましたね。

でも、それだけじゃ足りてませんからね? それで良しとはなりませんよ?


あ、因みにバネポテトって言うのは、バネの様にクルクルしたフライドポテトの事です。


「あ、最後にもひとつ」


びっ!

と、人差し指を立てて、小片さんは間を開けて言いました。


「笑顔下さい」


それをいった瞬間、店員さんの表情が凍り付きました。

真面目そうな店員さん、眉がピクピクと動いてます。


私も眉がピクピクと動いちゃってます。

小片さん、やっちゃいましたね……モニャ、唯一の0円のメニュー、笑顔を……。


これを頼まれたら、店員さんは笑顔を見せないといけないと言うあれです。


これは中学生や高校生の罰ゲームとかで注文させられる事が多いメニューですが、頼まれたら堪ったもんじゃありません。


頼んだ奴に「は? なんで頼んだし」と心の奥底から叫んでやりたい気分になる、店員さんにとっては迷惑なメニューです。


でも、純粋に笑顔を見たい人もいるみたいなので……悪くは言えませんけどね。


「まじか……くそっ」


あっあははは、本音出ちゃいましたね。

まぁ気持ちは分かります、困りますよね……メニューにはあるけど、頼まれると困る物って……。


モニャにはバイトしてた時がありますから、する恥ずかしさは痛い程分かりますよ。


「ごっ御注文繰り返します。 肉三昧バーガーのセット、バネポテト、ドリンクは野菜ジュースでよろしいですね?」

「あ、あと笑顔も忘れちゃヤだぜ」

「えっ笑顔……えっえへへへっ」


店員さん、偉くひきつった笑顔になってます。

それ、笑顔じゃありません……でも、そうなるんですよね。


皆のいる前で笑ったり出来ませんよね? すっすみません……小片さんが変な事言って。


「うっわー変な顔! 店員さんの笑顔って変なのぉ」

「ちょっ、小片さん! しっ失礼ですよ!」


あわわわ、小片さんって思った事を口に出しちゃうタイプなんですかね?

今、店員さんが怒ってないかでドキドキしてます。


そう思いつつ、恐る恐る見てみると、拳を握って、歯をギリギリいわせながら小片さんを笑顔で睨んでました、但し目は笑ってません。


あっあぁ……これは怒ってますね、激おこですね。

もう見れば分かります、今にも拳がとんできそうですもの。


「連れの方は何か食べるんすかね?」


うわ、言葉使いが酷くになりました。

まともに接客する気なくしたんですかね? ふっ不貞腐れないでくださいよぉ。


「えっえと、ベジタボゥバーガーのセットで、ドリンクは、はーいお茶でお願いします」

「ん、右によって待っててね」


ぶっきらぼうに言う店員さんの言う通りに右に移動します、そのあと、小片さんを降ろしました。

そしたら「ありがと」って言ってきました。


「どういたしまして」


と、私が応えると小片さんは、にこっと笑ってきました。

その時、視線を感じたのでその方に向いてみると……さっきの店員さんが私を睨んでました。

えっえぇ……なんで私を睨むんですか? 私、何もしてませんよね?

睨む相手、間違えてますよ!


なんて思いながら苦い顔をして待ちます。

小片さん、何も知らないで楽しそうに待ってますね。


その無邪気さはきっと素なんでしょう。

本当に罪な人ですよ、貴女は。

はぁ……今すぐにテイクアウトにしたい気分になりました。

Mのロゴで有名なハンバーガー屋さん、最近行ってないなぁ。

いま、何か新メニューあるんですかね?


今回も読んで頂きありがとうございました。

次の投稿日は24日0時になります。

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