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お酒のお付き合いの話し 6

「…………」


取り合えず、長門さんの近くに行く私。

数秒間、じぃっと長門さんを見た後、その場に正座します。


「やっやっぱり、このままと言うのはダメです……よね?」

「むにゃむにゃ、うへへぇ、やらぁ、そこはぁ、らめぇ……ふへへぇ」


だっだめです! このままじゃ絶対にダメっ。

こんな状態の長門さんを部屋に放置なんてしたくない、だって、変な事口走ってますから!


「だっ……だったら、着替えさせるしか、ないです……よね」


まさに、方法はそれしかありません。

うぅぅ、寝てる人を着替えさせるだなんて……超恥ずかしいですよ!


うぁぁぁぁっ、誰かっ、誰か助けて下さぁぁいっ。


頭を押さえながら、身体を振る。

とっ兎に角、考えましょう、考えねばどうにもなりません!

その為には一旦、冷静に……。


ティレレェンッジャッジャッジャァァンッ~♪


「わっ! なっななっ、なんですか!」


いきなり激しい音楽が鳴りましたよ? あまりに驚いて、後ろに倒れそうになっちゃいましたよ。


とっ取り合えず、深呼吸しましょう。

すぅ……はぁ……。

よしっ、落ち着いた、で? この音は……うん、これってあれですね。

今流行りの男声歌手の歌が鳴ってますから、間違いないでしょう。


「これは、スマホの、着信音ですね」


一息ついた後、正体が分かる。

分かったら安心ですね、もう怖くはありません。

でも、この着信音はどこから? 私は、スマホの着信音は、これじゃ無いです。


だとしたら……。

これは、長門さんのスマホから鳴っている?


……ごくっ、なぜか唾を飲んだ私は、長門さんの服のポケット辺りをゴソゴソ。

あれ? ないですね……じゃ、左側? でもない。

だっだとしたら……って、私は何してるんですか!


「いっいけない、スマホが鳴ってるからって……こっこんなに触っちゃ……」


でっでも、長門さんは社長、万が一、取引先からの電話だったら?

まっまぁ、今は夜遅くですから、それは無いかもしれないです。


でっでも、急ぎの電話かもしれません!

こっここは、恥ずかしさを圧し殺して探すべきです!


と言う訳で、長門さんの服を触っていく。

…………ない、ポケットと言うポケットを探してますけど、見当たらない。


おっ音は確かに、長門さんから聞こえているのに。


……ん? 長門さんの服って、胸の所にもポケットがあるんですねぇ。


…………いや、まさかね? そんな事、ある筈ないですよね?

顔を引きつらせながら、私は長門さんの胸元に耳を近付けます。


…………。

うっうん、音が近くで聞こえますね。

これはあれですね、胸ポケットにスマホがありますね。


「……はははっ、明日長門さんには、胸ポケットにスマホを入れるなと注意しましょう」


笑顔のまま私はそう決意します。

そして、自分の顔を、ペチペチと叩きます。

赤面する私の顔が少しだけ、引き締まりました。


よっよし! 今から長門さんのスマホを取り出しますっ、行きますよっ!


「はぁぁっ!」


正座した後、気合いを入れて、手を伸ばす!

こう言うのは、ぱっとやれば良いんですっ、えぇいっ!


むにゅんっ……。

私が長門さんの胸ポケットに手を触れた瞬間、柔らかな感触が手に触れた。


その刹那、私の表情は固まった。

そのまま、てきぱきとポケットからスマホを取り出す私。


「ちっ……」


舌打ちをした後、スマホの画面を見ます。

そこには、こう書かれてました。


小片 止


……あれ? この名前、何処かで聞いたような気がします。

長門さんの胸への嫉妬の事など忘れてしまった私。


とっ、取り合えず出てしまいましょう。

と言うわけで、通話のボタンを押して、左側にフリック。


そして、スマホを耳に当てます。


『あっ、やっと出た、おっせぇよ、電話にはさっさと出ろよなぁ』


そこからは、少年の様な声が聞こえてきました。

こっこの方が、小片 止さん……の声ですか。


『ん、あれ? なんで無口? おーい、聞こえてんの? なんか喋れぇ』


はっ! いけない。

何か喋らないと!


「あっ、えと……私っ胡桃って言います!」

『え、あれ? 長門じゃない……え? なんで長門の電話に出てんの?』


あぁ、やはり困惑しますよね? こっここは説明しないといけません。


「あっあのですね、実は……」


と言う訳で、今までの経緯を話していきます。



『ふぅん、なるほど……おれ等の長門が迷惑掛けてごめんな』

「いっいえいえ、小片さんが気にする事じゃないですよ」


私の話を聞き終わった後、小片さんは申し訳なさそうに言ってますが。

本当に反省すべきは、長門さん本人なんですからね?


『あははっ、胡桃だっけ? 真面目なんだな、おれ、そう言う娘好きかもな』

「へぁっ!?」


なっなななっ、いきなり何ををっ!?


『……あぁそうだ、突然でわりぃんだけどさ、長門に伝言してくんない?』

「え? あっはい! いいですよ」


うっうぅっ、好きとか、そう言う言葉は気軽に言っちゃダメですよぉ。

ほっぺたが紅潮した私は髪の毛を弄ります。


そんな事を知らない小片さんは、続けて話してきました。


『じゃ話すよ? 明日、朝早くからゲーム買いに行くから、約束守れないって言っといて、んじゃ』

「え?」


プツッ、ツー……ツー……。

きっ切れちゃいました。

取り合えずスマホを近くにあったテーブルに置きます。


そして、長門さんを見ます。


「さて、どうしましょうか……」


小片さんの電話の事で一瞬忘れてましたけど……肝心の事は解決されてませんね。


落胆する私ですが、着替えさせる決意をしたのは、そう時間が掛かりませんでした。

別にこのままでも、良いと思うんですけどね……でも、寝辛いと思うんです。


よっ、よし! やるぞっやってやりますよ!

私はっ、今からっ、長門さんの服を……脱がします!


お着替えタイム開始です!

今回の話し、長く続いてるなぁ、と思う今日この頃。

と、そんな事は置いといて、小片 止さん、初登場です、まぁ声だけですけどね。


今回も読んで頂き有難うございます、次回の投稿日は9月1日0時になります。

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