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恵さんは声高らかに言っちゃった 4

空気が固まった。

あたしの友達は口をポカーンと開けて固まっちゃってるし、あたしのがっこにいる生徒達は何かざわついちゃってる、他のお客さんもそんな感じね。


あたし何か変な事言っちゃったの? 普通に胡桃は女だよって言っただけなのに変なの。


「ちょっ、まっ……えっ? 女の子なの? やけに女っぽい声の男だなぁと思ってたら男だったの!?」


うわ、ひど……それ聞いた胡桃さんショック受けてるよ、一気に暗くなったじゃん。


「なっなに失礼な事言ってんのよ! どうみても女でしょう!」

「だったら最初から言ってよ、期待しちゃったじゃんっ、けぇちゃんのバカ!」

「言おうとしたわよ! だけどあんた等が話を遮ったんでしょうが!」


あ、でも、言わなかったあたしにも非はあるのかな? まっまぁそこは……うん、ごめん。


「うわぁ、男だと思ったのになぁ……テンション下がったわぁ」


いや、反省しなくていいかな? だって勝手な事言いまくってるし、そもそも勝手に勘違いしたそっちが悪いんだから!


「と言う訳で帰るぅ」


はぁ……ため息をついたあと思い空気を出すあたしの友達、変に期待して落ち込んで帰っちゃった、これに懲りたら早とちりしない事ね。


トボトボと歩いてく友達2人、お店を出る時にあたしを振り替えってため息をはく、え? なにそのため息……超気になるんだけど。


「ねっ、ねぇ……恵さん」

「ん、えと……なに?」


そんな疑問が出て来て考えてたら胡桃さんがあたしを突っついてきた。

なんか浮かない顔してる、きっとあたしの友達が言った事を気にしてるんだ。


「私って、そんなに男に見えますかね?」

「そんな事ないっ! バリバリ女の子に見えるよ」


だからそんなに暗い顔しないで? あいつ等は見る目が無かっただけだから。


「そうですか? でも、あぁやって間違われて同姓に告白されたの、初めてじゃないんですよ」


わぁぁっ、更に暗くなったぁぁっ! 何かどよーんってなっちゃってる。

人の視線も気にしないで下向いて落ち込んじゃってる……。


って、えぇ!? 同姓からの告白が初めてじゃないって衝撃ね。

たっ確かに胡桃さんの目は格好良いから男に見えなくもない、それに体格も、その、すっスマートだし? おっ男に間違われる事はなくもない、かもしれない。


でっでも、あたしは間違わなかった、だっだから自分に自信を持って貰わないと!


「あっあたしは胡桃さんを初めて見た時、綺麗な女性だと思ったわ!」


バンッ!

レジカウンターを少しだけ強く叩いて言い放つ。

そしたら胡桃さんはあたしを見て目を見開いた。


あぁ、恥ずかしい事言っちゃったなぁ。

ほらぁ、なんかお客さんざわついてんじゃん、ぅぅぅっ恥ずかしい。


てんちょと七瀬も赤面してるし……きっと後で弄られるんだろうなぁ。

でも、これも胡桃さんに元気になって貰うためだ、耐えろあたし!


「だって間違える筈ないじゃんっ、胡桃さんは、その、目が綺麗だしっ、身体から女性特有のホルモン出ちゃってるもん!」


あたしは何を言ってるんだ! 絶対今顔真っ赤だ! こんなん普段なら言わないわよ! こんな恥ずかしい思いをしてるのは全部あたしの友達のせいだ! 明日叱ってやる!


……ん? いっ今気付いたけど「身体から女性特有のホルモン出ちゃってる」って何よ! 急にスプラッタになっちゃった!


「あっあの、恵さん? それを言うなら、その、フェロモン、ですよ?」


くっ胡桃さん、顔赤くしながら言わなくても分かってる。

色々考えながら言っちゃったから素で間違ったの、だから素で指摘しないで! ハズイからっ!


「わっわわっ、分かってるわ、あはっあはははは」

「そっそうですか」


そう言った後、暫く沈黙してしまう。

会話が途切れた、きっ気まずい。


「あっあのね? あたしはさ、自信持てば良いと思うよ?」

「へ?」

「男に見えるって、聞き当たり良く言えば、ぼっボーイシュって事になるじゃない? 胡桃さんはボーイッシュな女性よ! こんなの中々いないよ? かなりのレアっ、それが胡桃さんなんだよ!」


また訳の分からない事を言っちゃった。

なによ、自分で言ってて意味わかんないし、でっでも言っちゃったからなぁ、これで押し通さないとダメだ。


「あっ憧れるなぁ、ボーイシュって、あたしもそんな女性になりたかったわぁ」

「う、あぁ、うぅぅ」


ぃよしっ! 胡桃さん照れて顔赤くなってるっ、これはイケるっ、あと少しで胡桃さんの機嫌が治る。


そうなればお客さんと同じがっこの生徒の前での謎のフォローが終わるっ。

気を抜かずに頑張ろう!

心に何度も言い聞かせ、次に言う台詞を考える……よっよしっ、これで行こう。


「そっそんなボーイシュな胡桃さん、あたしは、スキだよ?」


スキの部分が片言になっちゃったけど気にしない。

ふっふふふ、どうよ、この言葉で間違いなく胡桃さんの機嫌は元通り、現に表情に光が出てきたしね。


でもなんだろ? 周りが騒がしくなった気がする、気のせいかな?


「そうですか、ボーイシュですか、そんな事言われたの初めてです」


ふふ、と優しく笑う胡桃さんはあたしの肩に手を置いて来た。


「胡桃さん?」


あたしは小さく呟くと肩に置いた手をほっぺたに持って来た。

わわっ、ちょっぴり冷たいらビビった、と言うか胡桃さんの手、やらかい。


「恵さん、ありがとうございます、お陰で元気になりました」

「そ、そう? 良かった」


笑顔のままの胡桃さんはほっぺたから手を離して店内をみだす。

あたしも同じように見ると、うわぁ、皆こっち見てる。

そりゃ、皆いる中であんな事やったら注目されるわよね。


って……あっ! 七瀬が鼻血出してるっ。

いや、それはいつも通りだから気にしなくていっか、自分で治療出来るでしょ。


「えっえと、お仕事しましょっか」

「え? あっあぁそっそうね」


反応が遅れちゃったけどあたしはそう答えた。

その後はあたしと胡桃さん揃って「いらっしゃいませ」と言って場を誤魔化した。



まぁ誤魔化し切れなかったけどね、終始お客さんの視線が痛かった。

あと、てんちょが「人前で言うとは……」とかブツブツ言ってる、そんな暇があるなら手を動かしてよね。

七瀬は鼻血の治療をしにスタッフルームで安静にしてる、早く止まると良いわね。


それからは胡桃さんとあたしはレジ打ち、てんちょは商品の整理や補充、戻って来た七瀬はウォークインの清掃に行った。


そんな感じで時間は進む、はぁ、今日はいつものバイトと違って倍疲れた。


今度から絶対に友達はバイト先に連れてこない様にしよ、今度来たら胡桃さんに何言うか分かったもんじゃないもん。


そんな決意をして午後のバイトを頑張るあたし。

今日の様なドタバタしたのは勘弁、だから願おう。

明日は平凡な一日であります様に。

言ってる本人は気付かないけど、周りの人からしたら偉い勘違いを受けてる、そんな感じですかね? 誤解って怖いよねぇ。


今回も読んで頂き有難うございます、次の投稿日は7月30日になります。

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