お客様は色んな人がいる 2
お腹が空いたから多分お昼頃、お店はお客様でいっぱいです、レジフル活動で営業中です。
この時間帯コンビニは混みますから時間を見る暇もありません。
「ありがとうございました」
「ありがとうございましたぁ」
私も七瀬さんも慌ただしく接客します、もう動きに動いて汗かきまくっちゃいました。
「お弁当暖めますか?」
「は? 暖めるに決まってんだろ? バカか」
そんな時です、こう言う客が来ると非常にイラつきます、凄くチャラチャラした金髪のすかした男性客ですね。
物凄くムカつきますがレジには大勢人が並んでいます、隣にいる七瀬さんのレジもそんな感じです。
ですので面倒事はダメです、まぁ混んでなくても面倒事はダメですけどね。
「もうしわけありません、直ぐに暖めますね、少々お待ち下さい」
「おぅ、速くしろやノロマ」
我慢我慢、耐えるんですよ私、笑顔を保ったままお弁当を暖めます、チラッと後ろを見るとチャラい男性客がコツコツと指でカウンターを叩いてます、後ろでその様子を見てるお客様は非常に不快そうにしてます。
でも、この男性客が怖いのか何も言えないそんな感じですね。
「……よしっ」
そんな事を思いつつお弁当をレンジの中に入れます、後は待つだけです。
「おいっ、まだかよ! 俺は急いでんだボケっ」
怒号がどびました、急いでるんだったら暖めなんか頼むな、と言ってやりたい気分ですが耐えます。
と言うかこんなの慣れっこですよ、以前コンビニバイトしてる時も経験済みです、一々キレてたらキリがありません。
「もうしわけありません、もう暫くお待ち下さい」
ですので、ここはその男性客の方を向いて頭を下げます、例え向こうが悪くとも頭を下げる、接客の辛いところですが乗り越えたらなんて事はありません。
「あぁ? こっちは待ってるって……」
再びどなりだすチャラい男性客の言葉を遮る様にレンジが、ピィーーっとなりました、暖め終わった様ですね。
「お待たせしました」
それを取り出して男性客に渡します、するとそれを触った男性客がそのお弁当を触った後、こう言ったんです。
「もう少し暖めろボケ、のの寒空で、こんな温い弁当食わす気か?」
「すみません、暖め直します」
はい、こんなやり取りも経験済みです。
ですので他のお客様、そんなにざわつかないで下さい、私は平気です。
という事で、再び暖めてお弁当を渡します、すると納得したのか財布を取り出した後、お金を掴みカウンターに放り投げました……そのお金が床に落ちたので私は拾います、その様子を見てチャラい男性客は「くくっ」と笑いました。
こんな事やって何が面白いですかね? こんなのスルーですよスルー、さっさとこのお客様の対応を済まさないと、このレジ……長蛇の列が出来ちゃってます、さっさっと済ませましょう。
「丁度頂きました」
お金をレジに入れてレシートを渡そうとしたのですがチャラい男性客は「要らねぇ」と言う意味なのか手をパタパタさせます。
男性客はそのまま店を出ていこうと出口に向かいます、あぁ、やっと終わった、と思ったその時でした。
「ちょっと待って」
「あぁ?」
出入口に仁王立ちする七瀬さん、チャラい男性客を睨んで通せん棒してます。
えっちょっ、何をしてるんですか! そう言おうとしたその時、七瀬さんが言い放ちます。
「ちょっと裏まで来てくれる?」
「は? お前何を言って……っっ! てめっ、引っ張るなっ! おっおいっ、どこへ連れてく気」
「黙れゴミ虫、消されたいの?」
なっなんか知らないですけど、あのチャラい男性客は七瀬さんにどこかへ連れてかれちゃいました。
「胡桃、大丈夫か?」
「えっ、はい大丈夫です、って長門さんっ、いっいつのまに!」
隣のレジから声が聞こえました……そこには七瀬さんではなくて長門さんがいました。
「いっいつのまに変わったんですか?」
「あのチャラい男が弁当を暖め直させた時だ、血相を変えた七瀬が私にレジへ行く様にお願いして私がここにいる」
はっはぁなるほど、だからですか。
「ってぇ! 七瀬さんはあのお客様に何するつもりですか! どこかへ連れて行きましたよ」
「ん? あぁ気にするな、こう言うことは稀にある」
「まっ稀? えっえと、放っておいて良いんですか?」
欠伸をしながら接客を進める長門さんは「別に良いぞ」と良いながら頷きます。
「胡桃は新入りだからな教えといてやろう」
「はっはい」
こっこの状況で何を教わるんでしょう、って……そろそろ私も会計をしないといけません、という事で仕事をしながら聞きます。
「迷惑な事をされたら誰かが粛清する、覚えておけよ」
なっなんてこった、客相手に粛清……とんでもないお店もあったものです。
いや、お客様にちょっかいをかける店長がいるんです、通常経営の一般常識が通用しませんよね。
苦笑しながらその話を聞き手を動かしていると、このお店にお客様が入ってきました。
あっ……さっきのチャラい男性客ですね、どうしたんでしょう……やけに慌ててる様に見えます、って私のレジの方に来ましたね。
「すっすんませんしたぁぁぁっ!」
「ほっほえ?」
えっ、えっ、えぇっ! きゅっ急に謝って来ました、ちょっちょっと、動揺して手が止まったじゃないですか。
「二度とあんな事はしません! お務め御苦労様ですっ!」
「あっあの……あっ、行っちゃいました」
言うだけ言って帰っちゃいました。
なんだったんでしょうあれ……あっ、七瀬さんが帰ってきました。
あっ、こっちに来ましたね。
「胡桃」
「はっはい」
「あのチャラ男にお灸を据えたわ……」
いや、お灸を据えたわじゃないですよ、微笑ましい顔してなんて事言ってるんですか。
「えと……なんと言うか、お客様にお灸とか据えちゃダメです」
「ふふ」
「いや、ふふじゃないですよ!」
「おーい、2人共客共はこっちの忙しさなんて考えもせずにどんどん来るんだ、さっさと手を動かせぇ」
「ちょっ、長門さん! なんて事言ってるんですかぁぁぁ!」
今の言葉でお客様、顔がひきつってますよ? でもそうでもないお客様もいます、まるで「いつもの事だなぁ」って感じでのんびり買い物してる様にも見えます。
うっうぅ、怒鳴るお客様もいて、それにお灸を据える店員もいる、そして、それらを見て平然と買い物をするお客様もいる。
このお店、良く経営出来てますね……普通なら早々に潰れちゃってますよ。
そんな事を思い、私は深くため息をつきました、一旦考えるのを止めましょう、お客様が会計を待ってるんです……さぁ素早くやりましょう!
実際にいそうなチャラい客をかいたつもりです。
いなかったら……まぁ、そんときは微笑んでスルーして下さい。
今回も読んで頂きありがとうございました、次回の投稿日は7月3日になります。




