恵さんは胡桃さんを見て思う
あたしは日向 恵、よく恵って言われるけど恵だから、間違えないで。
で、そんな私は女子校生……今年で17歳、だから高校2年生になるわけ。
と、そんな話しはおいといて、あたしは"こんびに"っていうコンビニに住み込みでバイトしてるの……理由は、まぁ今はいいか。
えと、そこでの生活は楽しくて騒がしくて毎日が飽きない日々、ここにバイトして良かったって思ってる。
そんなある日、新しい娘が入るって聞いて、またてんちょが何かしたんだな……って思ったけど、新しい娘が入るのはなんか嬉しかった。
でも、その時あたしは店にはいなかった。
その日の日にちは大晦日、そこから1月3日まで実家にいる事になってた。
で、1月4日……帰ってきたら新しい娘がレジにいたの、それがあたしと胡桃さんの初めての出会い。
「恐いけどいい人だったなぁ」
そう呟く私は丸いテーブルの側に座っている、今いる場所は胡桃さんの自室。
時刻は9時くらいかな? 明日はがっこだから寝なくちゃだけど……少しだけ夜更かししてる。
その訳は、仕事の途中で言った事を決める為にここに来たの。
てんちょも来るって言ったけど「すまん、急な用事が入った」って言って来なかった。
ちょっぴり残念だけど、仕方ないよねてんちょは社長でもあるんだから。
そっそれにしても、あんまり他人の部屋に来た事ないから、少し緊張しちゃってる……だからかな? あたし色んな所を見てる、あっ……あの小物可愛い。
本棚に並んだら本……全部甘い物に関する物だ、余程甘い物が好きなんだね。
で、その甘い物が好きそうな胡桃さんは今はお風呂に入ってる……。
だからあたしは出てくるのを待ってる、「直ぐに洗って出てきますよー」と言ってたけど……もう30分は経ってる、胡桃さんって長湯する人なのね。
「……で、なんであんたがいるわけ?」
「酷いわね、私も行くんだから来るのは当たり前」
と、じっくり見つつ、あたしの隣にぴったりくっついてる七瀬を肘で小突く、離れなさいよっ。
「なんで来るのよっ」
「胡桃に一目惚れしたからよ」
「そっそんな事面と向かって言うなぁぁっ!」
七瀬はくすくす笑ってあたしを見てくる、この人は苦手だ。
理由は簡単、必要以上にスキンシップしてくるからよっ! 初めてバイトして来た時はちょっと気になる程度だったけど七瀬はどんどんスキンシップが過激になってきて、ある時あたしは察した、この人は女の子が大好きな人だって。
「あら? 顔が真っ赤ね、嫉妬してるの?」
「してないしっ!」
「心配しなくても私は恵の事も好きよ」
「話聞きなさいよっ!」
毎回毎回人の話を聞かないでふざけた事ばっかり言って……いい加減にしないと本気で怒るからね。
って、なんか見てきたんだけど……なっ何よ、あたしの顔に何かついてるの?
「いつデレてくれるの?」
「はぁ? デレって何よ」
「なるほど、その辛辣な表情も素敵ね、流石ツン率99%の女子校生」
「なっ何言ってんのよ、意味わかんないんだけど」
恍惚な表情であたしを見ないでくれる? なんかゾワゾワするのよ。
「相変わらず靡かないのね、私寂しいわ」
「悪いけど、私ノーマルだから」
「知ってるわ、恵は言ったものね、あたしはノーマルだからもう近付かないで! って」
言った、確かに言ったわ、よく覚えてるわねそんな事、あたしは今言われて思い出したわよ。
「その頃は七瀬さんって呼んでくれてたのに、今は呼び捨て、冷たいわね」
「冷たくしないと、あんたは直ぐに抱き付いてくるでしょうが」
「冷たくされても抱き付くわよ?」
……この人といると疲れる、これならてんちょが無駄にお客に絡むのを阻止する方が1000倍増しよ。
「疲れた顔してる、どうかしたの?」
「主にあんたの性で疲れてるの、分かったらとっとと出てけ」
「それは嫌よ、火照った胡桃を見たいもの」
「この変態っ!」
「それ、私にとって誉め言葉よ」
うっうぅっ頭が痛い、なんでキツい言葉を掛けて喜ばれるのよ、普通は落ち込むでしょうが!
「遅いわね、胡桃」
「そっそうね、遅いね」
そしてさらっと話を変えるのね、話され続けたら困る無いようだったし別に良いけどね。
「今頃、湯船に浸かってるのかしら」
「知らないわよ」
遠い目で虚空を見る七瀬、なに考えてるのかあたしには分かる、絶対えっちぃ事だ。
「きっと湯船で、はふぅぅ……って一息ついてる筈よ」
「ねぇそれ聞かなきゃダメなの?」
ほんとろくでも無い会話ね、こう言う所がなければ美人で良い人なんだけど自重しないからなぁ、この人は。
「胡桃は身体をどこから洗うと思う?」
「知らないし、少し黙ってなさい」
これ以上そんな話を聞いてたら頭が可笑しくなりそうよ、だから黙ってなさい!
「恵は右腕から洗うわよね」
って言っても喋り続けるのよね七瀬って、待って今凄いこと言わなかった? 確か右腕から洗うって……っ!
「なっなんで知ってるのよ!」
顔を真っ赤にして、七瀬の肩を持ってガクガク揺らす、そしたら嬉しそうにこう言ってきた。
「あら忘れたの? あのラッキースケベの時に見たのだけど」
らっラッキースケベ? 瞬時にあたしは記憶を思い返す、そんな事あった? ある筈なにんだけど……って、もしかしてあの事? あの事を言ってるの?
「もしかして、あたしが自室のお風呂で身体洗ってる時に急に入って来た事を言ってるの?」
「えぇ、それよ」
なっなるほど、それをラッキースケベって言ったのね、ふぅん……ふざけんなしっ。
「それの何処がラッキーなのよ、バリバリセクハラだから!」
「あの時の恵は可愛かったわ、きゃぁぁぁって言ってくれたわね」
「ニヤニヤ笑うなっ、ちゃんと話聞きなさいよ!」
そりゃ、突然自室のお風呂に他人が来たら悲鳴が出る、それをラッキーと抜かす七瀬の頭が意味わかんない。
怒りと恥ずかしさで、七瀬を揺らす力を強める、ぜんぜん抵抗しないし堪えない……なんなのよこの人、まさか責められてるって言うのに喜んでなんかいないよね?
「ふふふ、もっとやって」
「ひぃっ、バカっ、アホっ、変態っ、スケベっ!」
身体中にゾワゾワと恐怖感が襲う、それを押し退ける様に、あたしは七瀬を床に思い切り押し倒した。
「っ! 痛いわ、でもこれから楽しい事するのね?」
「しないしっ、ふざけた事いうな!」
全く懲りない……もう嫌この人、と思ってた時だ。
「すいません、すっかり長湯しちゃいましたぁ…………え」
胡桃さんがお風呂から出てきた、パジャマを着た火照った身体から湯気が出てる。
その胡桃さんはお風呂が気持ち良かったのか、ほっこりした顔をしてたけど、あたしが七瀬を押し倒してるのを見て表情が凍り付き、瞬時に顔を真っ赤にして。
「ごっごゆっくりぃぃぃっ!」
って言って部屋から出てった。
「誤解されちゃったわね、と言う訳でこれから楽しい事しない?」
「しないしっ、誰の性で勘違いされたと思ってるの! くっ胡桃さん、まっ待って! 誤解っ、誤解だからぁぁぁっ」
クスクスと悪戯っ娘の様に笑う七瀬の頭を叩いた後、あたしは立ち上がり胡桃を追い掛ける。
その後、誤解は解けたけど遊びの予定は立てられなかったし寝るのが遅くなった。
物凄く酷い目にあった、それもこれも七瀬の性だ、もうほんっとあの人苦手だ。
今回も七瀬さんは通常運転ですね、そして恵さん……変に誤解されちゃったね、ふふふ……今後の展開を書くのが楽しみだぜ。
今回も読んで頂きありがとうございます、次の話の投稿日は6月27日0時になります。




