プロローグ
超ありがちな設定で王道っぽいの書きたかったのです。
あと、飛行機がすきなのです。なので、飛行機が最も活躍できる地球を設定しました。
ほぼ初投稿です。
見切り発車なので、後から大改変する可能性が微レ存……。
俺の父さんは空に堕ちていった。
原因は、今でこそ、糞珍しくもない、ただのバードストライクだった……らしい。
飛行機が錐揉みしながら雲の中に堕ちていったのが、当時の、外縁部周辺に住んでた奴らの目撃談だ。
俺の知ってる限りじゃ、有史以来初の外世界調査官、職業飛行外交官、そして……飛行機事故者だった。
そう、父さんは、母さんと、まだおっぱいをすすっていたガキを残して派手に逝っちまいやがったのだ。
俺は別に、父さんを恨んでなんかないし、仕方ないと思っている。
しかも、政府からは死亡保険金やら、英雄への寄付やらなんやらかんやらが支給されたおかげで、生活に困っているということもない(ただ、家はそろそろ改築したほうがいいと思う)。
感謝をしているフシすらもあった。
だが、恨んでないし、感謝をしている事と憎んでないことは、必ずしもイコールではない。
俺は父さんが憎い。
俺がそれに気がついたのは、初等教育の最初の授業の時だった。
同期生の期待の目。それだけじゃない。先生、父兄もだった。あなたのとこのお父様は、それはそれは立派な英雄でした。さあ、あなたはどうかしら。
クソだ。いつも父さん、父さんだ。勉強に逃避しても、教科書に載ってやがる。
期待しないでくれ。俺と父さんを比べないでくれ。
俺と父さんは違う。だから、俺はいつも俺の中に父さんの影がちらつくのを極端に嫌い、まったく、別の人間として生きたいと願った。父さんのことなんか覚えちゃいないため、教科書の中の歴史人物像から人格を推察して虚構の父像に怯え、徹底的に排除する日々を送っているのだから、本当に馬鹿馬鹿しい事この上ない。
そのおかげで、熱血漢だったらしい父さんとは対照的に、俺はこんな卑屈で、冷めてて、世の中を斜に構えたように眺めることがかっこいいと勘違いしちゃってる、精神病こじらせたアホみたいになったのかもしれない。
だが、ーー皮肉なことに、考えないようにしようとすればするほど、俺の中で父さんの存在感はむしろ増していった。
そう、憧れか、憎しみかーーそれともなにか別の感情かーー。俺は、父さんの見た、外の世界を見たいと思ってしまったのだった。
この、空に閉ざされた世界の外。鳥のように、空に輝く星のように、島の外縁部を越え、標準標高零界面と無限の青い空だけの世界をどこまでも。
そう思った。どうしても、この思いは止められなかった。
願書に封をし、ポストに投函した時、ふとそんなことを思い出した。
国立航空高等学校。このクニ唯一の航空飛行官養成所にして登竜門。
俺、15才。スタンフィード。
試験まで、残り2ヶ月を切った、雪の日だった。